当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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オンライン販売製品における規制化学物質含有リスク(北欧オンライン取引調査プロジェクトより)

近年、インターネットを経由した製品取引が拡大しています。 さらに最近では感染症予防の観点により、対面のない購買手法としてオンライン販売が奨励されています。 しかし、オンライン販売は、消費者にとって製品をより安い価格で即座に入手できるという利点がある一方で、著しく品質が低い、または安全性を満たしていない粗悪品を入手してしまうトラブルも少なくありません。

このような事態は製品中に含まれる化学物質ついても例外ではなく、規制値を上回る化学物質を含有するような不適合製品が流通してしまう可能性も考えられます。 現在、EU各国の管理当局により組織される情報交換フォーラムでは、オンラインで販売される物質、混合物および成形品に関するCLP規則、REACH規則、およびBPR規則の施行実態における調査プロジェクト(REF-8)1) が進められています。 REF(REACH-EN-FORCE)プロジェクト2)は現在までに8つのプロジェクトが行われており、そのひとつであるREF-8は2021年第4四半期完了を目標に進められています。

REF-8に先立って、スウェーデン化学物質庁(KEMI)は5月6日、北欧におけるオンライン販売製品の化学物質含有に関する調査結果3)を公表しました。 この調査プロジェクトはノルウェー、フィンランド、デンマークの北欧諸国と連携し、スウェーデン政府が主導して進められ、報告書4)も公開されています。 今回のコラムでは本プロジェクトの概要をご紹介します。

1.調査の目的

2018年、北欧では人口(18歳から79歳)の約60%がインターネット経由で製品を購入しています。 その総売上高は230億ユーロを上回り、2008年から3倍以上に増加しています。 そのなかでも約40%を占めるスウェーデンでは、2025年のオンライン取引はすべての商取引の22〜33%を占めると予測されています。

このような貿易構造の変化に対して、当局による市場監視の運用方法についても迅速に対応を行う必要性が生じています。 そのため、本プロジェクトでは、インターネット経由の取引における実態を把握し、販売されている製品の法令順守を確保する手法を確立することを目的としています。

2.調査対象とする法令

本プロジェクトでは以下のEU法規制における要求事項の適合性を対象としています。

・CLP規則(EC) No 1272/2008

第48条2項(危険物と分類される場合の事前通知)

・植物保護製品規則:(EC) No 1107/2009

第28条(上市および使用の認可)、第66条(通知義務)

・BPR規則(EU)No 528/2012

第17条(上市および使用の認可)、第72条 (通知義務)

・化粧品規則(EC)No 1223/2009

第13条(通知義務)、第14条(リスト物質の制限、過酸化水素)、第19条5項(ラベル表示における言語)

・REACH規則(EC) No 1907/2006

第67条(制限の規定および附属書XVII の制限物質)、第33条(成形品に含まれるCL物質の情報伝達)

・POPs規則(EU) 2019/1021

第3条(リスト物質における製造、上市および使用の規制)

・玩具指令2009/48/EC

第10条(特定物質の移行限度を含む安全要件)、第16条(CEマーキング)、第4条6項および第6条3項(製造者、輸入者の連絡先情報)

・RoHS指令2011/65/EU

第4条(特定物質の含有規制)、第7条および第9条(CEマーキングと製造者、輸入者の連絡先情報)

3.調査方法とその結果

それぞれの法規制の対象となる製品に含まれるキーワード(電気製品の例:ケーブル、充電器、PVCなど)を抽出し、それをもとに検索された製品を各国の市場監視当局が立場を明かさずに購入し、適合性の調査が進められました。

ただし、本プロジェクトは取引される製品に占める不適合品の実態を把握することを目的としており、正確な違反事例を抽出するものではありません。 例えば、RoHS指令では、2019年7月22日以降、4種のフタル酸エステル(DEHP,DBP,BBP,DIBP)を含有する電気電子機器(EEE)の上市を規制していますが、本プロジェクトにおける調査サンプルのなかにはその期限前に購入されたものも含まれています。

本プロジェクトでは企業や製品等、様々な観点で不適合製品が報告されています。 まず企業やエリアの違いによる調査結果をみていきます。

インターネット販売はおもにウェブショップとマーケットプレイスといったビジネスタイプに分類されます。

ウェブショップは自己で保有する商品(およびサービス)をオンラインで直接販売するウェブサイトであり、自社製品の販売ウェブサイトや多様なサプライヤーの製品を販売する小売ウェブショップなどが含まれます。

マーケットプレイスは消費者がオンラインで製品を購入するサービスの提供者であり、販売する製品を自己で保有するわけではありません。 サービスを展開するエリアにより、国内マーケットプレイスとグローバルマーケットプレイスが存在します。

ウェブショップとマーケットプレイスで販売された成形品と化学製品における不適合品の割合は大きく異なっています。 ウェブショップにおける不適合製品の割合は33%であるのに対して、国内マーケットプレイスでは57%、グローバルマーケットプレイスでは78%の割合の製品が不適合となっています。

ただし、ウェブショップは製品検索を行う場所に近いエリアや国が検出される傾向がみられました。 したがってウェブショップのほとんどがEU域内の企業であり、EU域外の企業の大半はマーケットプレイスの企業となっています。

企業の立地に注目した場合、EU域内の企業が販売した成形品および化学製品の不適合率が32%であったのに対して、EU域外の企業における不適合率は78%となっています。 このように、企業の立地による適合率においては大きな違いがみられました。

つぎに成形品に関する調査結果は以下の通りです。

本プロジェクトでは、239種の成形品が調査されました。 そのなかで電気製品の57%が不適合品であり、玩具とその他の成形品ではそれぞれ23%が不適合品となっています。その他の成形品には、ビーズクッション、犬用の玩具、財布、ヨガマット、靴、エアマットレス、スポーツ用品等が含まれています。

成形品で最も多く検出された規制物質はDEHPであり、様々な用途で23回検出されました。 次に電気製品におけるはんだに含有する鉛が19回、さらに軟質プラスチック中のSCCPs、スライム(玩具)に含まれる移行限度を超えるホウ素がそれぞれ15回検出されています。 その他の成形品の多くは軟質プラスチックを使用しており、SCCPsやフタル酸エステル類が検出されています。 また、玩具の41%と電気製品の72%は、玩具指令やRoHS指令で規定されているCEマーキングならびに製品の連絡先情報が欠落していました。

これらの製品は、EU各国の市場監視当局間が不適合品に関する情報を迅速かつ効率的に共有するためのITプラットフォームであるICSMS 5)で報告され、危険な製品に関する警告システムであるセーフティゲート通知6)により情報共有が行われています。

EU域内のほとんどの企業は非常に協力的であり、市場監視当局から提案された措置に関して約90%は適正な対応が行われました。 ただし、EU域外の一部の企業では対応がなされず、そのような企業は依然として不適合製品を販売していることがわかりました。

4.さいごに

本プロジェクトは、必ずしもランダムにサンプルを抽出していないため、EU市場が同様の状態であると判断することはできませんが、オンラインで取引される製品にはかなりの割合で不適合品が含まれることがわかりました。

この結果を受けて、今後、オンライン取引に対する市場監視は強化され、EU域内の消費者においても規制に適合したより安全な製品を求める傾向が強くなる可能性があります。 そのため、日本からオンライン販売により新製品をEU市場へ投入する場合、対象となる法規制に対して確実に準拠しており、安全性の高いブランドであることを消費者へ明確に伝えることが市場開拓の手掛かりとなると考えられます。

(柳田 覚)

引用

1)

https://echa.europa.eu/documents/10162/23005649/wg_ref-8_en.pdf/b13c9afe-b32d-d14b-dc2a-2a9113ee36d2

2)

https://echa.europa.eu/about-us/who-we-are/enforcement-forum/forum-enforcement-projects

3)

https://www.kemi.se/nyheter-fran-kemikalieinspektionen/2020/manga-produkter-fran-e-handel-utanfor-eu-klarar-inte-kemikaliereglerna/

4)

http://norden.diva-portal.org/smash/get/diva2:1424143/FULLTEXT04.pdf

5)

https://webgate.ec.europa.eu/icsms/

6)

https://ec.europa.eu/consumers/consumers_safety/safety_products/rapex/alerts/repository/content/pages/rapex/index_en.htm

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