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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

グリーンディ―ルによる主な化学物質関連規制の改正案検討の動き

2022年04月08日更新

EUの重点政策である「グリーンディール」やそれに基づく「循環型経済行動計画」や「持続可能な化学物質戦略」によって、いくつもの既存規制の改正が計画されており、今まさに検討が進められているところです。

本ホームページでもRoHS指令1)等についての動向をご紹介していますが、今回は主な化学物質関連規制の改正案検討状況を整理してみます。


1.改正案の検討状況の公開

まず、欧州委員会(EC)の「Have your say2)」に改正案の検討予定が「イニシアチブ」として公表され、このホームページでは主に次のようなステップで検討・情報提供が行われていきます。

【ロードマップ】

イニシアチブで検討する課題や目的、施策の必要性や根拠、現時点で想定されている規制オプション、初期影響評価などを記載した「ロードマップ」が公表され、その内容に関する意見募集が実施されます。 なお重要性が高く、改正による影響評価の検討対象となっているイニシアチブについては、一般のロードマップではなく「開始規制評価書」が公表されます。

これにより、検討の初期段階でステークホルダーとの共有や議論が行える仕組みとなっています。


【意見募集】

幅広くステークホルダーからの意見募集が実施されます。

例えば、現在実施されているRoHS指令の改正に関するイニシアチブの意見募集では、一般向け、専門家向けに次のような項目についての意見が求められています。

・一般向け:廃電気電子製品から回収された部品やリサイクル材料の使用について

・専門家向け:

・EU指令から加盟国国内法への反映について

・RoHS指令の適用範囲について

・REACH規則等の他法規制との一貫性について

・RoHS指令と循環型経済との関係について

・適用除外用途の評価基準について

・適用除外用途の評価期間について

・適用除外用途の申請の仕組みについて

・適用除外用途の有効期限および移行期間について

・制限対象物質の見直しについて

・オンライン販売について

・運用および市場監視について


【ECの採択】

ロードマップや意見募集といった手続きを踏まえて、ECによって改正案が策定され、改正案に対する意見募集やWTO通知などが実施された後、ECが正式に採択することになります。


このように改正案が策定される段階でも「Have your say」を通じていくつかのステップで情報が公開され、意見募集が求められています。具体的な改正内容やその検討状況といった詳細については確認することができませんが、進捗状況等を確認することができます。


なお、改正案をECが採択した後は、改正案に対する意見募集やWTOへの通知等を経て、ECが正式に採択し、欧州議会・欧州理事会の確認を経て問題なければ官報公示されることになります。


2.主な化学物質関連規制の改正案の検討状況

3月末時点での「Have your say」で示されている主な化学物質関連規制の改正案検討状況は次のとおりです。

・REACH規則3):現在、2022年1月20日~4月15日の意見募集段階であり、ECによる改正案の公表は2022年第4四半期が予定されています。

・CLP規則4):各種の意見募集は完了し、2022年第2四半期に予定されているECによる改正案の公表待ちの段階です。

・RoHS指令5):現在、2022年3月10日~6月2日までの意見募集段階であり、ECによる改正案の公表は2022年第4四半期が予定されています。

・ELV指令6):各種の意見募集は完了し、2022年第4四半期に予定されているECによる改正案の公表待ちの段階です。

・包装廃棄物指令7):各種の意見募集は完了し、2022年第1四半期に予定されているECによる改正案の公表待ちの段階です。

・ErP指令8):各種の意見募集は完了し、2022年第1四半期に予定されているECによる改正案の公表待ちの段階でした。


上記のうち2022年第1四半期に改正案の採択が予定されていたErP指令については、3月30日に改正案として「持続可能な製品のエコデザイン要件の枠組み規則」案が公表9)され、4月3日から意見募集が開始されました。 改正案では、従来対象であったエネルギー関連製品のみならず、ほぼすべての製品についてエコデザイン要件を設定することが可能な枠組みとし、また、エネルギー効率のみならず、次のような観点がエコデザイン要件として設定できるようになっています。

・耐久性・信頼性

・再利用性

・アップグレードや修理、保守、改修の可能性

・含有懸念物質

・エネルギー効率および資源効率

・リサイクル材の使用

・再製造およびリサイクル

・環境フットプリント(製品ライフサイクルを通じた環境影響の定量化)およびカーボンフットプリント(製品のライフサイクルを通じた温室効果ガス(GHG)の定量化)

・廃棄物発生

また、製品ラベルやマニュアルを補完し、製品の修理やリサイクルに関する情報提供やサプライチェーンにおける懸念物質の追跡を行うための電子情報である「デジタル製品パスポート」に関する一般規定も新たに定められています。 「デジタル製品パスポート」は、バーコードや2次元コード等を読み取ることで、消費者や修理・リサイクル業者等が必要なまたは関心のある情報を容易に確認できるようにすることが意図されており、製品ごとの具体的な要件については、今後製品ごとに定められることになります。


3.最後に

グリーンディールや循環型経済行動計画で示された各種法規制の改正について具体的な検討が進んでおり、ErP指令については改正案が策定されました。今後も多少のスケジュールの延伸等はあるかもしれませんが、REACH規則やRoHS指令をはじめとした上記法規制の改正案が順次策定・公表されることになります。


1)本ホームページ記事(2022年3月11日更新)


2)EC  Have your say


3)EC REACH規則の見直しに関するイニシアチブ


4)EC CLP規則の見直しに関するイニシアチブ


5)EC RoHS指令の見直しに関するイニシアチブ


6)EC ELV指令の見直しに関するイニシアチブ


7)EC 包装材指令の見直しに関するイニシアチブ


8)EC 持続可能な製品(ErP指令の見直し)に関するイニシアチブ


9)EC プレスリリース


(井上 晋一)


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