当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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EU化学物質戦略

2020年10月30日更新

2020年10月14日に、欧州委員会からか「持続可能性のための化学物質戦略」が発表されました1)。 今回は、この制定の経緯や概要をご紹介します。


EUでは、持続可能な成長のための種々の分野でその政策が検討されています。 その基本的な方針を、2019年12月9日に「The European Green Deal(以下、「欧州グリーンディール」と訳します)」と発表しています2)。 目標は、自然を保護し、経済を守り、人の幸せを改善することです。 この政策分野として、下記が挙げられています。


欧州グリーンディールの政策分野

・生物多様性;脆弱な生態系を保護するための対策

・農場から食卓まで;より持続可能なフードシステムを確保する方法

・持続可能な農業;共通農業政策によるEUの農業と農村地域の持続可能性

・クリーンエネルギー;クリーンエネルギー

・持続可能な産業;より持続可能の、より環境に配慮した生産サイクルを確保する方法

・建物と改修;よりクリーンな建設セクターの必要性

・持続可能なモビリティ;より持続可能な輸送手段の推進

・汚染の削減;汚染を迅速かつ効率的に削減するための措置

・気候変動対策;2050年までに温室効果ガスをゼロにする


上記の政策分野の「汚染の削減」の中では、化学物質が取り上げられ、下記の施策があげられています3)。

・無毒な環境のための持続可能性のための新しい化学物質戦略で危険有害性のある化学物質からの市民の保護。

・より持続可能な代替物質の開発。

・グローバルな競争力を向上させ、より良い健康保護。

・上市される化学物質の評価に関するルールの改善。


このロードマップが2020年5月9日に公表され、6月20日まで意見が募集されました4)。 よせられ意見を踏まえて、2020年10月14日に「持続可能性のための化学物質戦略;無害な環境を目指して」が採択され、「欧州議会、理事会、欧州経済社会評議会及び地域評議会への欧州委員会からのコミュニケーション」として公表されました5,6)。


公表されました「コミュニケーション」は、次のような内容です。


1. 化学物質戦略の目的

・市民と環境をよりよく保護する

・安全で持続可能な化学物質のイノベーションを後押しする

2. 行動計画

・消費者製品に含まれる有害な化学物質を禁止-必要な場合にのみ使用を許可する。

・化学物質のリスク評価では、化学物質のカクテル効果の説明責任を設ける。

・不可欠でない限り、パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の使用を段階的に廃止する。

・設計とそのライフサイクルを通じて安全で持続可能な化学物質の生産と使用のための投資と革新的な能力を強化する。

・重要な化学物質の供給と持続可能性のEUの力を増強する。

・化学物質のリスクとハザードの評価では、より単純な「1物質1評価」プロセスを確立する。

・厳しい基準を提案と普及をし、EUで禁止されている化学物質を輸出しないことにより、グローバルに主導的な役割の遂行。


行動計画の具体的な内容については、化学物質戦略のコミュニケーションの付属書に約70項目が示されています6)。 この中から、REACHやCLPにかかわるものとしては、下記の項目が挙げられています。(カッコ内は、行動目標年)


1)REACHの(グループ)制限では、発がん性、変異原性および生殖毒性物質(CMR)、内分泌かく乱物質、難分解性、生体内蓄積性および毒性(PBT)、および、非常に難分解性および非常に高い生体内蓄積性物質(vPvB)、免疫毒性物質、神経毒性物質、特定の臓器に毒性のある物質および呼吸器感作物質を優先するロードマップ(2021年)

2)消費者製品に、発がん性、変異原性、生殖毒性、内分泌かく乱性や、PBT等の化学物質を含まないようにするためのリスク管理の一般的なアプローチを展開するための提案。(2022)

3)REACH68条(2)の制限をプロユーザーにも適用する修正提案。(2022)

4)保育用品およびその他の子供向け製品(玩具を除く)に含まれる有害化学物質から子供の安全性を強化するための一般製品安全指令およびREACH制限における必須の法的要求条件の導入。(2022)

5)内分泌かく乱性物質、PBT / vPvB、難分解性(P)および移動性(M)物質の新しいハザードクラスを導入するためのCLP規則の修正、および、それらをすべての法律に適用する提案。(2021)

6)関連する法律での、特にREACH、化粧品、食品接触材料、植物保護製品、殺生物性製品法律での、内分泌かく乱性物質を特定できるように情報要求項目の更新。(2022)

7)混合物のリスク評価を最善にするためのファクターの評価とREACH付属書Iへの導入。(2022)

8)内分泌かく乱物性質、難分解性、移動性および毒性(PMT)および非常に難分解性および非常に移動性(vPvM)の物質を高懸念物質のリストに追加するREACH第57条を改正する提案。(2022)

9)消費者製品を含むすべての本質的以外の用途でのPFASのREACH制限の提案。(2022-2024)

10)REACHの認可及び制限のプロセスの改定提案。(2022)

11)REACHへの登録情報要求を改訂するための提案。神経系および免疫系への影響を含む重大な危険性を持つ物質の特定、グループ化アプローチへの移行、懸念ポリマーの登録、化学物質の環境全体へのフットプリントに関する情報、1〜10トンの物質の化学物質安全性報告書の義務等。(2022)

 

今回の化学物質戦略の行動計画には、REACHやCLPの多くの改正が計画されています。 特に11)番目に挙げました登録に必要な情報要件、特にポリマーに関する事項や、これまで要求されていなかった年間1~10トンの物質の化学物質安全性報告書(CSR)の要求が気になるところです。 また、7)番目の混合物のリスク評価については、上記11番目に1~10トンのCSR要求とも関連するかもしれませんが、混合物中の物質が1トン未満でも、リスク評価を要求されることも考えられます。

今後の提案に注意する必要があるようです。


参考資料

1)

https://ec.europa.eu/environment/strategy/chemicals-strategy_en

2)

https://ec.europa.eu/info/strategy/priorities-2019-2024/european-green-deal_en

3)

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/fs_19_6729

4)

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12264-Chemicals-strategy-for-sustainability

5)

https://ec.europa.eu/environment/pdf/chemicals/2020/10/Strategy.pdf

6)

https://ec.europa.eu/environment/pdf/chemicals/2020/10/Annex.pdf


(林  譲)


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