当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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ECHAの執行情報交換フォーラにおける最近の動向

2020年11月06日更新

欧州化学物質庁(ECHA)の「執行情報交換フォーラム(以下、フォーラム)では、毎年1つのテーマに基づき、多くの加盟国が参加して大規模な「REACH規則執行プロジェクト(REACH EN FORCE:REF)」が行われています。 また、REFよりも小規模ではありますが、個別テーマを設定したパイロットプロジェクトが毎年複数実施されています。

今回は、今後予定されているテーマや最近公表された調査結果を取り上げます。


1.REF

REFの調査結果としては、「混合物の分類および表示・SDS」をテーマとして、2018年に調査が実施されたREF-6の結果が2019年12月に公表され、本コラム(2020年1月31日更新)でもその内容を取り上げていました。

現在、2022年に実施予定のREF-10まで次のようなテーマが決定しています。


・REF-7(2019年実施、2020年末結果公表)

2018年5月に段階的登録物質の最終期限を迎えたことを受けて、その順守状況を確認することを目的に、「登録および中間体の登録」をテーマに、登録一式文書の提出や更新義務、中間体の要件検証等に関する調査が実施されました。 現時点ではEU域内の製造・輸入者が1トン/年以上の取り扱う物質はすべて登録されているはずですが、実際の順守状況がどの程度か、2020年末に公表される見込みの調査結果が注目されます。


・REF-8(2020年実施、2021年末結果公表)

過去に実施したパイロットプロジェクトで違反率が高かったことを受けて、「物質・混合物・成形品のインターネット販売」をテーマに、インターネット販売製品を対象にREACH規則やCLP規則、殺生物性製品規則における含有制限義務や表示義務等について、現在調査が実施されているところです。


・REF-9(2021年実施、2022年末結果公表)

過去にパイロットプロジェクトとして2回実施されましたが、改めて「認可対象物質」をテーマに、日没日以降に認可対象物質が未認可のまま上市されていないか、また認可されていたとしても認可時に設定された使用条件を順守しているかについて、調査することが予定されています。


・REF-10(2022年実施、2023年末結果公表)

「消費者製品(混合物および成形品)中の有害化学物質」をテーマにREACH規則の制限やPOPs規則といった含有制限義務および成形品中の認可対象候補物質(CLS)の情報伝達義務について調査することが予定されています。 なお、含有制限義務については、調査対象とする物質を2021年に決定することになっており、調査対象にはフタル酸エステル類やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等が含まれることが想定されています。


2. パイロットプロジェクト

直近では、9月に「税関当局と連携した輸入品に関するパイロットプロジェクト」の結果1)が公表されました。 このパイロットプロジェクトでは、16加盟国が各国税関と連携し空港や港、陸路において、1,389種の輸入品のREACH規則の制限およびCLP規則のラベル等の各種義務について調査が2019年3月~11月にかけて実施されました。


その結果、REACH規則の制限については、17%の輸入品で違反が確認され、中でも鉛、カドミウム、ニッケルといった重金属類の制限違反が散見されました。 一方、CLP規則の各種義務については、64%の輸入品で何らかの違反が確認され、中でもラベル記載内容について、未記載や不備が多く指摘されています。


この結果から、執行フォーラムはEUへの入口となる税関において、化学物質規制に対する継続的な執行監視が必要であると述べています。


また、これら調査で判明した違反製品は、RAPEXに通知され、Safety Gateによって公表されることになるわけですが、RAPEXのデータを分析したEUの化学業界団体(Cefic)は、REACH規則の制限に違反している製品の90%以上はEU域外からの輸入品であると指摘し、輸入品に対する適切な執行が必要不可欠であると述べています2)。


なお、既に次のようなテーマのパイロットプロジェクトが決定されており、実施および実施予定となっています。


・殺生物性製品および処理された成形品

・洗剤や洗浄剤等の混合物の分類

・廃棄物管理当局と連携した廃棄物から回収・再利用された物質


3. 最後に

REACH規則が施行されて、12年が経過していますが、まだまだ執行フォーラムによる調査によって、違反事例は散見されています。 しかしながら、特定の義務における違反率の低下等、徐々にEU域内企業への浸透が図られているものと推測されます。


一方、前述の輸入品に対するパイロットプロジェクトやCeficの分析結果からは、EU域外からの輸入品に対する執行強化が指摘されています。


EU域外企業は直接REACH規則の義務を受けるわけではないのですが、輸入品の執行強化が図られれば、今後EU域内の輸入者からの対応要請が拡大することが予想されます。 そのため、「これまで対応要請がなかったからOK」ではなく、今後の対応要請に向けた準備が必要であると考えます。


(井上 晋一)


1)ECHA 「税関当局と連携した輸入品に関するパイロットプロジェクト」報告書

https://echa.europa.eu/documents/10162/13555/customs2_project_report_en.pdf/5a2c3795-7ed9-5900-fe28-540228abc7c1


2)Cefic ニュースリリース

https://cefic.org/media-corner/newsroom/more-than-90-of-all-non-compliant-chemicals-in-consumer-products-come-from-outside-of-the-eu/

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