当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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GHS分類とラベル・SDS作成について

2020年12月25日更新

化学品の多くは、危険有害性があり、化学品の輸出入にはGHS対応のラベル・SDSの対応が必要になっています。


化学品を海外に輸出される企業の方や海外から輸入される化学品のGHSに対応したラベル・SDSの作成の依頼を頂くことも多くなっています


ご承知のように、GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicalsの太文字を取って略称)は化学品(化学物質、その混合物)の危険有害性(ハザード)を分類するための基準、および、その危険有害性の情報をラベルや安全データシートの記載内容は、世界的に統一するためのルールとして制定され、2008年までに実施することが2002年のWSSD(持続可能な開発に関する世界首脳会議)で提唱されました。 日本をはじめ、多くの国・地域で導入されています。


本コラムの内容は、一部の読者に方からは今更ながらと言われるかもしれませんが、ラベル・SDSの作成のご支援をさせていて、最近気になっていることについて紹介させていただきます。


GHSでは、基本的なルールは決められていますが、決められている内容をすべて取り入れなければならないものではありません。 自国に適用する場合、その所轄官庁はニーズに基づいてGHSルールの要素の一部を取り入れることができます。 他方、自国の規制のために必要となる事項を追加することも許されています。 国(地域も含めて)法規制が異なることなる場合があり、このことに留意することが必要です。 すなわち、海外向けや海外からの輸入品のGHS対応のラベル・SDSを作成に当たっては、単に翻訳するのではなく、その国の法規制に対応することが必要になります。


この例として、ラベル・SDSを作成するうえで最も重要な「分類」について説明します。

GHSの分類では、「選択可能方式(国連文書の言語は”Building block approach”)」が許されています。自国にGHSを採用する場合、「分類」については、下記のようにすることができます。


a) 危険有害性クラスの選択

GHS分類の危険有害性のクラスは、物理化学的危険性、健康に対する有害性、および、環境に対する有害性の3クラスに分けられています。 GHSルールを守ることを念頭に、自国のそれぞれの法規規制のなかで、どの危険有害性クラスを適用するかを決めることができます。

日本のGHSの導入は、分類に関してはJISZ 7252(GHSの基づく化学品の分類方法)、および情報伝達についてはJISZ 7253(GHSの基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル、作業場内の表示および安全データシート(SDS)- )として導入されています。


日本では、化学物質排出把握管理促進法(以下、化管法)では三つのすべてのクラス、労働安全衛生法(以下、労安法)では物理化学的危険性と健康に対する有害性、「毒物及び劇物取締法」(以下、毒劇法では)健康に対する有害性の中の急性毒性に対応する危険有害性の情報がそれぞれ要求されています。EUのCLP規則では三つのクラスが要求されています。


b) ある危険有害性クラスのなかで、それぞれの区分の選択について

ある危険有害性クラスの中では、所管官庁が必ずしも全ての区分を適用しなくてもかまいません。 下記の制限を守り、一貫性を維持して区分を採用することができます。

(i) 適用する危険有害性区分のカットオフ値や濃度限界等の分類基準の変更はできません。 ただし,隣同士の細区分(例、発がん性の区分1A と1B)は一つの区分にすることは可能です。 しかし、残りの危険有害性区分の番号を変更せざるを得ないような区分の統合はしえきません。 さらに、細区分を統一した場合、危険有害性情報の伝達を容易にするために、もとのGHS 細区分の名前や番号は保持しなければなりません(例、発がん性区分1あるいは1A/B)。

(ii) 危険有害性の区分の適用では、その危険有害性クラスにおける最も高い危険有害性区分を採用しなければなりません。 すなわち、常に最も危険有害性の高い(区分1)区分を採用し、さらに一つ以上の危険有害性区分を採用する場合には、これらの区分は分断のない一続きのものとしなければならない。


例えば、急性毒性では、国連文書では区分1~区分5までが設けられていますが、JISZ 7252やEUのCLP規則では、区分1~区分4が適用され、区分5が適用されていません。 ご依頼の多い東南アジア向けについては、区分1~区分5が適用されています。 特に、国内で作成された混合物のSDSの成分情報だけでは、区分5を設けている国へのSDSの対応ができないことがあり、全成分の情報を把握しておくことが必要になります。


冒頭に記載しましたように、GHSを採用している海外の国・地域では、GHS基準で危険有害性に分類される物質、混合物すべてに、ラベル・SDSが必要です。


他方、国内では安衛法や化管法ではラベル・SDSの対象物質が指定されています。 このために、対象となっていない物質や混合物のラベル・SDSの作成のご依頼の中には、その成分情報が不足し、その情報の把握でお困りのことがよくあります。


輸入された化学品のラベル・SDSを日本向けにすることは、比較的容易といえます。 しかし、日本から海外に輸出する場合には、前記しましたように、その製品の成分の情報が必要になることがあります。 特に、EUや台湾などでは、健康有害性の混合物については、健康有害性の分類に寄与する成分名の開示が求められていることには注意が必要です。


GHSで重要なのは、化学品の「分類」です。 既存化学物質の健康有害性や環境有害性の分類のために保有していない場合、そのための試験を行う必要はなく、既存の情報を活用して行うことが許されています。


日本においては、化管法、安衛法および毒劇法の規制対象となる化学物質を中心に、経済産業省、厚生労働省、環境省等関係各省が連携して分類実施の作業が進められています。 既に4,000物質以上の物質の分類結果が独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)1)や厚生労働省2)の等で公開され、自由に利用することができます。 ただし、この分類の使用しなければならないといことではありません。


混合物については、経済産業省のホームページに「GHS混合物分類判定システム」3)が提供されています。 健康に対する有害性、環境に対する有害性について、成分情報を入力することにより、混合物の分類ができます。 物理化学的危険性については一部しか利用できなく、必要な場合は混合物の試験を行うことが必要です。


「物質」の分類については、輸出先によって注意しなければならないことがあります。

上記しました、日本の物質の分類の情報を必ず採用しなければならないことではありません。 信頼できる情報があり、異なる分類となる場合、これに基づいて分類をしてもかまいません。


他方、EUでは、CLP規則の付属書6の別表3に物質の「調和された分類」が4)収載されています。 EU向けのラベル・SDSの作成にあっては、別表3に収載されている物質の「調和された分類」を、必ず使用しなければなりません。 別表3には、順次追加されています。現時点(2020年12月24日)、対応しなければならない表には4264物質、2022年3月1日から対応が必要な表(2020年12月更新)には、4315物質が収載されています。

この表に収載するための物質の提案の予告が随時公表されていますが、その中で気になる提案があります。


2020年7月27日(2020年9月3日に更新)にギリ シャからエタノールの「調和された分類」の提案の予告が出されています。 公開されている提案書の提出予定日は2020年12月31日となっています。


ご承知の通り、エタノールは日本では消毒用として広く使用されています。 EUではBPRで活性物質にリストされています。 CLP規則の表3にもすでに収載されていますが、現時点では「引火性液体 区分2」の分類だけです。従い、危険有害性の成分がエタノール以外に含まれていなければ、「引火性液体」のみの分類で済みます。


今回の気になることは、下記を「調和された分類」とする提案です。

・引火性液体 区分2

・眼に対する重篤な損傷性/刺激性 区分2

・生殖毒性 区分2

・授乳または授乳を介した影響

・特定標的臓器毒性(単回ばく露)区分3

・特定標的臓器毒性(反復ばく露)区分2


他方、日本では下記のように分類されています。

・引火性液体 区分2

・眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B

・発がん性 区分1A

・生殖毒性 区分1A

・特定標的臓器毒性(単回ばく露)区分3(気道刺激性、麻酔作用)

・特定標的臓器毒性(反復ばく露)区分1(肝臓)、区分2(中枢神経系)


将来、EUのCLP規則の別表3に「調和された分類」として収載されますと、日本国内向けのエタノールを0.1%以上含有する混合物の分類とSDSとは別の対応が必要になる可能性があります。

EUに出荷するエタノールを0.3%以上含む混合物について、少なくとも健康に対する有害性の分類が付され、SDS提供の義務が課せられます。 さらに、0.1%以上含む場合は、EU輸出先の要請によりSDSを提供が必要になる可能性があります。


今回は、日本とEUとの比較を主としてご紹介しました。 国(地域)の規制内容によって、分類の相違、ラベル・SDSの要否が相違します。輸出先ごとに細かく法規制を確認しておくことが必要になります。



参考資料

1)

https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/systemTop


2)

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_FND.aspx


3)

https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/ghs_auto_classification_tool_ver4.html


4)

https://echa.europa.eu/information-on-chemicals/annex-vi-to-clp


5)

https://echa.europa.eu/registry-of-clh-intentions-until-outcome/-/dislist/details/0b0236e1852d3d63


(林  譲)

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