当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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RoHS指令附属書IIIの一部の適用除外用途の見直しに関する調査プロジェクト(パック22)がスタート

新年あけましておめでとうございます。


2021年も化学物質管理規制における大きなマイルストーンがいくつかありますが、その中でも関心の高い事項として、RoHS指令附属書IIIの適用除外用途の見直しが挙げられます。 今回は附属書IIIのうち、多くの電気電子製品で活用されている合金中の鉛や電気接点中の鉛に関する6(a)および6(a)-I、6(b)および6(b)-I、6(b)-II、6(c)、7(a)、7(c)-I、7(c)-IIの適用除外用途の見直しに向けた調査プロジェクト(パック22)の意見募集が2020年12月に開始されました1)のでその概要をご紹介します。


1.これまでの流れ

パック22の対象となっている適用除外用途については、2016年7月が第1回目の有効期限であったため、2015年8月に調査プロジェクト(パック9)として意見募集が行われ、2016年6月に報告書が公表されていました。 その後、この報告書や産業界からの意見を踏まえ、2018年5月に6(a)、6(b)は内容が分割される形で、6(c)、7(a)、7(c)-Iは従来どおりの内容で有効期限が2021年の5月または7月に延長され、2019年2月には7(c)-IIが、従来通りの内容で、有効期限が2021年7月まで延長されており、その内容は現状のRoHS指令統合版(2020年9月1日版)2)で確認することができます。


RoHS指令では、適用除外用途について有効期限の延長などを求める場合には、有効期限の18カ月前までに産業界から更新申請を提出することが求められています。 2019年12月に意見募集が行われたパック18では、当初の調査仕様では早期に産業界から提出された更新申請を受けて6(a)や6(b)、6(c)、7(a)、7(c)-Iも対象となっていましたが、2020年1月の更新申請期限までに更なる更新申請が産業界から提出されることを考慮し、実際の調査対象からは外されていました。 今回、2020年1月までに提出された更新申請を踏まえ、改めてパック22として欧州委員会が委託した調査会社(Oeko-Institut e.V.)による調査プロジェクトが開始されました。


なお、2019年11月から2020年1月までに産業界から提出された更新申請書の内容や、その更新申請状況を踏まえた2020年4月時点での附属書IIIおよびIVの状況が欧州委員会環境総局のホームページ3)で確認することができます。


2.パック22の概要

パック22の対象となった適用除外用途については、個社や業界団体等から1~6件の更新申請が提出されています。

・6(a):機械加工用途の鋼材および亜鉛めっき鋼中に合金元素として含まれる0.35wt%までの鉛【2020年1月に提出された2件の更新申請】

・6(a)-I:機械加工用途の鋼材中の合金元素として含まれる0.35wt%までの鉛とホットディップ溶融亜鉛めっき鋼中に含まれる0.2wt%までの鉛【6(a)と同様】

・6(b):アルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛【2019年12月および2020年1月に提出された2件の更新申請】

・6(b)-I:鉛含有アルミニウムスクラップのリサイクルに由来するアルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛【6(b)と同様】

・6(b)-II:機械加工用途のアルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛【2019年11月に提出された1件の更新申請】

・6(c):銅合金中の4wt%までの鉛【2020年1月に提出された2件の更新申請】

・7(a):高融点はんだ中の鉛(鉛系合金に含まれる85wt%以上の鉛)【2020年1月に提出された2件の更新申請】

・7(c)-I:コンデンサ中の誘電セラミック以外のガラスまたはセラミック中に鉛を含む電気電子部品(圧電素子等)およびガラスまたはセラミックの化合物中に鉛を含む電気電子部品【2020年1月に提出された6件の更新申請】

・7(c)-II:定格電圧AC 125VまたはDC 250V以上用のコンデンサ中の誘電セラミック中の鉛【2020年1月に提出された1件の更新申請】


これら、すべての適用除外用途に更新申請を提出している申請者に、アンブレラ・プロジェクト(RoHS Umbrella Industry Project)があります。アンブレラ・プロジェクトの更新申請では、EUの業界団体であるデジタル・ヨーロッパ(DigitalEurope)や欧州機械・電気・電子・金属加工産業連絡会(ORGALIME)をはじめ、日本電機工業会(JEMA)や電子情報技術産業協会(JEITA)、米国商工会議所(AmCham)やIPCといったEU域外の業界団体等の40以上の業界団体・工業会で構成されていることが示されており、これらの団体が共同提出した更新申請となっています。


アンブレラ・プロジェクトの更新申請を見ると、いずれも製品カテゴリー1~10を対象としており、製品カテゴリー別に分割されている6(a)と6(a)-I、6(b)と6(b)-Iについては、統合し、従来の6(a)-Iおよび6(b)-Iをそのまま最大期間(製品カテゴリー8、9は7年、その他は5年)延長する内容となっています。 また、6(c)など残りの適用除外用途についても、従来の内容を最大期間延長する内容となっています。


このパック22のプロジェクト完了期限は2021年7月27日となっており、この日までに最終報告書が欧州委員会に提出され、その後、欧州委員会で報告書の内容を踏まえた検討や法制化手続きが開始されることになります。 調査プロジェクトの完了期限が6(a)等の適用除外用途の現状の有効期限である2021年7月21日よりも後になっており、今回の更新手続きも現状の有効期限から遅れていることがわかります。 なお、仮に更新が認められなかったとしても、決定までの時間に加え、決定後12~18か月の猶予期間が設定されるため、2021年7月21日以降もしばらくは現状の適用除外用途がそのまま有効になるものと想定されます。


3. 最後に

今回は多くの電気電子製品で活用されている適用除外用途の見直しに関する動向を取り上げましたが、RoHS指令に関しては、制限物質の追加検討(パック15)やRoHS指令第24条2項に基づく全体見直しも併行して実施されています。 2021年中にはこれらの報告書等が順次公表されているものと想定されるため、世界を先導するEU RoHS指令の今後の方向性が注目されるところです。


(井上 晋一)


1)調査会社 パック22の意見募集

https://rohs.exemptions.oeko.info/index.php?id=354

2)RoHS指令統合版(2020年9月1日版)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02011L0065-20200901&qid=1609553485978

3)欧州委員会環境総局 RoHS指令附属書IIIおよびIVの更新状況

https://ec.europa.eu/environment/waste/rohs_eee/adaptation_en.htm

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