当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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2020へのSVHC ロードマップ

2021年02月25日更新

「すべての該当する現在知られている高懸念物質 (SVHCs) を2020年までに候補物質リストに収載させる」というEU副大統領とコミッショナーのコミットメントに基づきEU委員会は加盟国権限当局、EU委員会およびECHAの緊密な協力により「SVHCの特定および現在から2020年までのロードマップ (SVHC Roadmap to 2020 (1) ) を開発しています。 SVHC Roadmap to 2020 (以降「SVHCロードマップ」) はSVHCを特定するためにECHA登録データベース、REACHおよびCLPのデータベースその他の利用可能な情報源を使用し、該当するSVHCを特定するためスクリーリングとリスク管理オプション分析 (RMOA) の使用を見越しています。

SVHCロードマップは、発がん性、変異原性および生殖毒性 (CMRs) 、感作性、難分解性、体内蓄積性および毒性 (PBTs) または非常に難分解性で非常に体内蓄積性物質 (vPvBs) および内分泌かく乱性物質およびCMR/PBT/vBvP特性を有する石油/石炭由来物質によりカバーされている物質グループに対する実施計画を包含しています。


SVHCロードマップはその目標達成を確実にするために信頼できるプロセスを提供することを目的としています。SVHCロードマップ実施計画は、対象となる作業がいかに組織され実行されるかに焦点を当てています。ECHAは毎年ロードマップ実施の進捗状況を報告しています。(2)

2019年時点でSVHCロードマップ報告書は、統合規制戦略報告書 (Integrated Regulatory Strategy Report ) の一部として発行されています。

これはREACH規則第54条に従い、「SVHCロードマップ年次報告書」および「評価の進捗報告の一部として提供されていたその他の情報の年次報告書」とを一体化したためです。


以下に、ECHAによりまとめられている「SVHCロードマップ2020」の要約版 (In brief SVHC Roadmap 2020 ―Achievements and extended aims (3)) の内容を紹介します。


主な実績

・リスク管理のために必要とされている全ての該当する現在知られているSVHCを特定し、行動を起こさせた。物質には、発がん性、変異原性および生殖毒性 (CMRs) 、難分解性、体内蓄積性および毒性 (PBT) または非常に難分解性で非常に体内蓄積性物質および内分泌かく乱性物質が含まれている。

・規制管理オプション分析 (Regulatory Management Option Analysis : 以降「RMOA」 ) によりおよそ220物質に対して規制リスクアセスメントの必要性を評価した。それらの約80%に対して規制行動の必要性が提案された。

・一物質に代えて化学的類似物質グループに焦点を当てることにより、新懸念物質の特定を迅速化

・懸念物質に関する作業の透明性と予測可能性を増加


上記のRMOAについてその目的等を以下に記載します。

RMOAの目的は物質に対してリスクマネジメント措置が要求される懸念を表明するため最も適切な手段を特定することを証明することです。RMOAはSVHCロードマップの下でREACH第57条に規定されているクライテリアに該当する物質であるかどうかの結論の決定を促進します。そのために、その物質を候補物質リストに提案し認可プロセスを開始させるべきかまたはその他のリスク管理ルート (制限、その他法令下の措置等) とすべきかを決定します。


2013年からECHA、加盟国当局および欧州委員会 (EC) は高懸念物質 (以降「SVHCs」) の特定およびそこで要求されるリスク管理に対する適切な措置を講じるべくSVHCロードマップの下で協同作業を行ってきました。

SVHCロードマップは、すべての該当する現在知られているSVHCsを2020年までに特定し、候補リストに収載することを目的として閣僚理事会により設立されていました。 このゴール達成の鍵は、懸念物質を特定し、処理するための一貫性、透明性および効率的なアプローチを確立することでした。

アプローチの一部として、ECHAおよび加盟国はREACH登録物質の系統的なスクリーニングを開始し、規制措置が要求されるかどうかおよびリスクを管理するために最適な方法は何かを決定するために、規制管理オプション分析 (RMOA) と呼ばれる新しい方式を適用しました。


主要な実績 (Core Achievement)

1.すべての該当する現在知られている高懸念物質 (SVHCs) が特定されたこと。

2017年までに発がん性、変異原性、生殖毒性 (CMRs)、難分解性、生物蓄積性、毒性物質 (PBTs)、極めて難分解、極めて生物蓄積性物質 (vPvB) および内分泌かく乱性物質に特定された物質はすでに認可候補リストに収載され、その他の規制管理措置 (例えば制限) に特定された物質あるいはそれ以上の規制リスク管理は現在要求されていない物質が特定されています。

2020年末までに211物質又は物質グループが候補リストに収載されています。

有害特性について結論することのできる適切な情報を持っていない物質の中から更なるSVHCsが特定されることが予測されています。それらの物質ついては有害情報を生成するための物質またはドシエ評価が実施されています。


2.新懸念物質を特定し処理するために確立された効率的プロセス

スクリーニングおよびRMOAは新懸念物質を特定し最も適切な規制措置により効率的に処理するのに役立っています。

2014年からECHAと加盟国は、企業が物質登録時に提出していた有害性情報や使用およびばく露情報を系統的に選別してきました。RMOAアプローチは当局と利害関係者間における早期結論と情報共有を促進しています。


3.より迅速に懸念物質を特定するためのグループ化

ECHAと加盟国は規制措置を必要とする化学物質の特定を迅速化するため化学的に類似している物質のグループ化に関する作業を開始していました。 

グループ化作業によって、以下が実現されています。

・当局が利用可能データすべてを使用し、有害性およびばく露情報が欠けているものも含めてより大量の登録物質を共有することができた。

その結果、2014年以降の各年度のスクリーニング物質数は、2014年―2018年までは300件程度であったが2019年は約900件、2020年は約2,000弱と物質の増加が認められます。

・類似物質を処理する際の規制の一貫性が改善され、当局による予見可能性が増加しています。

・知られている懸念物質に対して潜在的代替を検討する際に良好な見聞に基づいた (better - informed) 代替品へと産業界をリードしています。

・更なる可能な行動を要求しない物質を早期に特定できています。


4.石油と石炭由来物質に関連し取られる行動

石油および石炭由来物質を定義し評価することは挑戦的です。 何故ならば、それらは非常に複雑で変化する組成であり、それらに関する規制措置は延期されているからです。 SVHCロードマップの下で加盟国、欧州委員会、ECHAおよび産業界の利害関係者は石油、石炭由来物質の優先順位を上げ、処理するためのアプローチを開発しています。 得られた経験に基づいて、当局は現在懸念のある構成成分を含んでいる物質を管理しそれらを開示するために効果的で効率的な規制措置を定義しています。


5.内分泌かく乱物質とPBTsに関する科学的アドバイス

内分泌かく乱物質の評価は専門家グループにより支援されてきました。 それはロードマップの下で確立されています。 また、難分解性、生物蓄積性および毒性物質のための専門家グループ (PBT Expert Group)の作業は化学物質の難分解性、生物蓄積性および毒性物質および非常に難分解で非常に生物蓄積性 (PBT and vPvB) の特性の特定に関して科学的なアドバイスの提供を継続して行っています。


6.透明性と予測性の増進

ECHAはREACH規則とCLP規則のプロセスの差異によりカバーされる懸念物質に関する当局の作業の透明性と予測可能性を増進するためにPACT (the public activities coordination tool) を開始しています。 PACTはデータジェネレーションおよび評価領域における計画中、進行中および完了活動の評価、RMOAおよび規制リスク管理情報を利害関係者に提供しています。


予測 (ON THE HORIIZON)

SVHCロードマップの一部として開始された作業は、ECHAの総合規制戦略 (ECHA’s Integrated Strategy ) の下で継続しています。


ECHAは、REACH登録物質を詳細に検査するために、2027年までにすべてのREACH登録の適合性を改善するために各登録トン数帯の登録ドシエの20%の評価をスタートしています。これは全登録物質のおよそ30%がチェックされることを意味しています。

登録物質の精査が高まれば、既に本年1月から開始されている成形品および複雑な製品に含まれているSVHCを登録するSCIP登録の精度の向上が期待されます。


以上のように次のゴールは2027年に設定されています。 その時点までの目的は、登録物質すべてについて以下について結論することです。

・EUレベルの規制リスク管理に対する高い優先性

・PACTによるデータジェネレーションに対する高い優先性  または

・今後のEUレベル規制行動に対する現状の低い優先性

 

世界規模でのこの作業は化学物質に関する国連2030 SDGsに貢献につながります。


まとめ

2020年は、地球サミット開催後10年目にあたる2002年に南アのヨハネスブルグにおいて開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議 (WSSD) 」において採択されたWSSD目標 (予防的取組み方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順を用いて2020年までにすべての化学物質の人の健康や環境への影響を最小化する方法で生産・利用させること) の目標年となっていました。

「SVHCロードマップ2020」も上記目標達成に向け推進されてきました。


そして、これからは、EU循環型経済 (Circular Economy) への取組みを推進していくこととなります。循環型経済の目指すところは以下です。

・持続可能な製品をEU市場の標準とする。

・消費者等の買い手の力を強化する。

・循環可能な製品に焦点を当てる。

・再生材料市場を有効に機能させ、無駄をなくす。

 

(瀧 山 森雄)


(引用)


(1)

https://echa.europa.eu/svhc-roadmap-to-2020-implementation


(2)

Annual Report 2015

https://echa.europa.eu/documents/10162/19126370/svhc_roadmap_2015_en.pdf/38512385-2a46-455e-b2cd-3a52c1ad63f7


Annual Report 2016

https://echa.europa.eu/documents/10162/19126370/svhc_roadmap_2016_en.pdf/4c99ad17-fc00-48f1-9ada-5c5945ee7b83


Annual Report 2017

https://echa.europa.eu/documents/10162/19126370/svhc_roadmap_2017_en.pdf/a8430302-c03c-d55a-b7d1-822451dfc34e


Annual Report 2018

https://echa.europa.eu/documents/10162/19126370/svhc_roadmap_annual_report_2020_en.pdf/9598b52a-776d-8ab8-2e88-dd0b645dac0b

 

(3) https://echa.europa.eu/documents/10162/19126370/svhc_roadmap_2020_achievements_en.pdf/ea2249db-bf03-a3ed-e3dd-42a2dcce05db


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