当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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EU 次亜塩素酸および塩化ナトリウムの電気分解により発生する活性塩素の使用承認について

2021年03月23日更新

欧州委員会(EC)は、殺生物性製品規則(BPR規則)に基づき2月26日に「次亜塩素酸から放出された活性塩素を、製品タイプ2、3、4、および5の殺生物性製品で使用するための活性物質として承認*(1)」および「電気分解によって塩化ナトリウムから生成された活性塩素を、製品タイプ2、3、4、および5の殺生物性製品で使用するための活性物質として承認*(2)」を、また3月1日に「次亜塩素酸から放出された活性塩素を、製品タイプ1の殺生物性製品で使用するための活性物質として承認*(3)」および「電気分解によって塩化ナトリウムから生成された活性塩素を、製品タイプ1の殺生物性製品で使用するための活性物質として承認*(4)」を公表しました。


「電気分解により塩化ナトリウム(水溶液)から生成された活性塩素」も電気分解により陽極側に生成される次亜塩素酸からの放出であり、基本的に同一のものと考えられます。 なお、次亜塩素酸を含む水溶液は一般的には「機能水」と呼ばれ、1996年に日本で手術時の手指洗浄消毒*(5)、1997年に内視鏡洗浄消毒*(6)として認可され、2002年に食品添加物(食品衛生法施行規則別表第1「指定添加物リスト」)としても認可された日本で開発された殺菌消毒剤です。


次亜塩素酸は、強い殺菌効果(濃度依存有り)を示し、環境への残留が少なく、手荒れなどの人体への影響も少なく、原理的に耐性菌の発生がないことから、環境に比較的優しい殺菌消毒剤と言われています。 最近ではコロナウイルス対策としての噴霧使用の是非がニュースでも話題になっていますが、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜水、およびその他の薬品混合物が混同されて「次亜塩素酸」と呼ばれているようで、詳細は独立行政法人国民生活センター*(7)、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)*(8)、日本機能水学会*(9)等のHPにありますが、効果を得るためには生成方法や濃度・pH、保存時間など厳密な条件があるとのことで注意が必要です。


1.ECの次亜塩素酸および塩化ナトリウムの電気分解による活性塩素の使用承認内容

今回2月26日に製品タイプ2,3,4および5に対する使用承認を、3月1日に製品タイプ1に対する使用承認を出していますが、内容はほぼ同じですので一緒に見ていきたいと思います。


今回の承認は殺生物性製品規則(BPR規則:(EU)528/2012)*(10)に則り承認されたものですが、そもそもこの2物質は委員会委任規則(委任規則:(EU)1062/2014)*(11)により「殺生物性製品での使用が承認される可能性について評価される既存の活性物質のリスト*(12)」に掲載されていたもので、今回評価を完了して承認されたものです。


承認の要件としては、BPR規則の前身である殺生物性製品指令(98/8/EC)第5条*(13)に規定された要件を用いています。


1)使用が承認された製品タイプ

製品タイプは、BPR規則附属書Vに定義されています。今回承認が得られた製品タイプ1,2,3,4,および5については以下の定義になっています。

メイングループ1:消毒剤

・製品タイプ1:人の衛生

・製品タイプ2:人または動物への直接適用を目的としない消毒剤および殺藻剤

・製品タイプ3:獣医衛生

・製品タイプ4:食品及び飼料領域

・製品タイプ5:飲料水

今回の使用承認は上記製品タイプのみですが、附属書Vにはその他にメイングループ2:防腐剤、メイングループ3:殺虫駆除、メイングループ4:その他の殺生物性製品の製品グループが定義されています。


2)認可条件

認可条件として次の項目が付されています。

a)最低純度条件

・次亜塩素酸:乾燥重量最小90,87%w / wにおいてpH3.0~7.4

・前駆体塩化ナトリウム:次の純度要件を満たすこと。

NF Brand,EN973A EN 973 B, EN 14805 Type 1, EN 14805 Type 2, NF Brand, EN 973 A, EN 973 B, EN14805 Type 1, EN 14805 Type 2, EN 16370 Type 1, EN 16370 Type2, EN 16401 Type 1, EN 16401 Type 2, CODEX STAN 150-1985 or European Pharmacopoeia 9.0.

b)製品認可条件(次亜塩素酸および塩化ナトリウム電気分解で同一)

・製品評価は、認可申請の対象となる用途に関連するばく露、リスク、および有効性に特に注意を払うものとするが、有効成分の連合レベルのリスク評価は行わない。(共通)

・製品タイプ1:上記以外に条件は付されていない。

・製品タイプ2:製品評価は、モップまたは拭き取りによる硬い表面の消毒を行う専門家ユーザーの保護に特に注意を払うものとする。

・製品タイプ3、4,5:食品または飼料に残留物をもたらす可能性のある製品については、規則(EC)No 470/2009*(14)または規則(EC) No 396/2005*(15)に規定された最大残留物レベル(MRL)を検証し、新規に設定するか、既存のMRLを修正する必要がある。また、設定されたMRLを超えないように適切なリスク軽減策を講じる必要がある。


3)有効期限

・承認の発効日:2022年7月1日

・承認の失効日:2032年6月30日


2.まとめ

BPR規則では殺生物性製品の認可が2段階になっていることに注意が必要です。 製品としての認可(authorisation)を得るためには、まず製品に使われる活性物質が承認(approval)されている必要があります。活性物質の承認は連合レベルで行われ、活性物質とそれを使用可能な製品タイプ(用途)との組み合わせで承認されます。本稿で説明した活性塩素の承認がこれに該当します。


個々の製品としての認可は、使用される活性物質と製品タイプの組み合わせが承認されていることを前提に加盟国レベルで行うことが原則ですが、一国で認可された製品は相互協定の下で他の加盟国に拡張することが可能です。 また、多国間で共通の申請がある場合などに対応するために連合レベルでの認可の仕組みもあります。


ただし、BPR規則第55条では、公衆衛生、動物の健康、または他の手段では封じ込めることができない環境への危険を防ぐために、認可条件を満たさない製品でも180日を越えない期間で限定的かつ所管官庁の下で管理された状態で上市を許可することができる規定があります。 この規定の許可は加盟国所管官庁となりますので、各国の国内法に委ねられています。


また、殺生物性製品で処理された成形品は、認可された製品以外で処理されたものは輸入および上市が禁止となっていますので注意が必要です。


(杉浦 順)


*1 (EU)2021/347

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32021R0347&from=EN

*2 (EU)2021/345

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32021R0345&from=EN

*3 (EU)2021/365

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32021R0365&qid=1614643084119&from=EN

*4 (EU)2021/364

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32021R0364&qid=1614643279018&from=EN

*5 強電解水企業協議会: 強酸性電解水の規格基準(医療編)、1999

*6 強電解水企業協議会: 強酸性電解水による内視鏡洗浄消毒マニュアル、2006

*7 国民生活センター「物のウイルス対策等をうたう「次亜塩素酸水」」

http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20201224_1.pdf

*8 NITE 「新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告をとりまとめました。~物品への消毒に活用できます~」

https://www.nite.go.jp/information/osirase20200626.html

*9 日本機能水学会

http://www.fwf.or.jp/gakkai.html

*10 BPR規則:(EU)528/2012

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32012R0528

*11 委任規則:(EU)1062/2014

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32014R1062&from=DA

*12 殺生物性製品での使用が承認される可能性について評価される既存の活性物質のリスト

https://echa.europa.eu/regulations/biocidal-products-regulation/approval-of-active-substances/list-of-approved-active-substances

*13  殺生物性製品指令(98/8/EC)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A31998L0008

*14 規則(EC)No 470/2009

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32009R0470&from=EN

*15 規則(EC)No 396/2005

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32005R0396&from=EN


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