当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q652.フタル酸エステル類の有無の測定

2019年7月26日更新


【質問】

EUでは2019年7月22日よりRoHS指令でフタル酸エステル類の使用が制限されます。 フタル酸エステル類の有無はどのように測定するのでしょうか。

【回答】

ご指摘のようにRoHS(Ⅱ)指令では2015年6月4日に4種類のフタル酸エステル(DEHP、BBP、DBP、DIBP)を附属書Ⅱに追加しました。 含有制限はカテゴリー8および9の製品群以外は2019年7月22日から、カテゴリー8および9の製品群は2021年7月22日から適用になります。


顧客に対してフタル酸エステル類の非含有(含有制限以下であること)を保証するためにはいくつかの方法があり、整合規格EN50581:2012および2023年12月7日に置き換わるIEC63000:20161)の第4.3.3章には次の3つの方法が提示されています。


1)サプライヤーの自己宣言または(and/or)契約上の合意

2)材料宣言

3)分析試験の結果


したがって、できた製品または部品を都度(全数または抜取)分析して非含有を保証することは時間とコストの面で現実的ではなく、製造装置や環境による汚染など非意図的な混入が無い仕組みを作り、製造現場管理を徹底することにより、上記1)または2)で保証することが現実的です。


分析試験は、初期の非含有の確認などに限定して行われることをお勧めします。


以上を踏まえて、以下にRoHS(Ⅱ)指令対応の測定方法をご紹介します。


RoHS(Ⅱ)指令の含有物質分析方法はIEC62321シリーズに規定され、フタル酸エステルに関しては2017年3月に発行されたIEC62321-8:2017(以下IEC62321-8と表記)2)に記載があります。


対象物質は、前記4種類のフタル酸エステルに加えて、Di-n-octyl phthalate(DNOP)、Di-isononyl phthalate(DINP)とDi-iso-decyl phthalate(DIDP)の3種類のフタル酸エステルの分析方法も含まれています。


前述のIEC62321-8に規定されている分析方法は、フタル酸エステルが閾値の1,000ppm以上含まれているかどうかのスクリーニングを行う方法として半定量分析法であるパイロライザー付ガスクロマトグラフィ質量分析計(Py-GC/MS)を用いる方法が、定量的な検証を行う方法として定量分析法であるガスクロマトグラフィ質量分析計(GC/MS)を用いる方法が掲載されています。


どちらの方法を用いるかは事業者の判断に委ねられています。


一般的にPy-GC/MS法は、サンプルを直接加熱して気化したフタル酸エステルを分析するので、サンプル作成の手間が少なく早く結果を得ることが可能ですが濃度測定精度が定量分析と比較して悪いことが知られています。 したがって、判断基準としては閾値の1,000ppmに対して測定値が500ppm以下であれば非含有、1,500ppm以上であれば含有と判断します。500ppmから1,500ppmの間の場合には、精度の高い定量法を用いて再測定をして判定をします。


定量法であるGC/MSでは、サンプルを粉砕して溶媒を用いてフタル酸エステルを溶媒中に抽出する必要があり、溶媒の種類によりソックスレー法と再沈殿法がありますが、どちらも抽出に時間がかかる方法です。 抽出後に溶媒を濃縮したものをGC/MSにかけて測定を行います。定量法の精度が良いのは被測定濃度を包含する3種類の標準濃度サンプルを用いて濃度測定の校正を行うことができるためです。 抽出に手間と時間がかかるために費用も高くなります。


IEC62321-8には他にもAnnex Aにイオン付着質量分析計(IAMS)法が、Annex Bに液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)法が紹介されています。


ある製品にフタル酸エステルが意図的に混合されているかどうかを簡易的に検証する用途であれば、可塑剤などの用途での意図的含有では濃度が10%以上となる場合がほとんどですので、レーザラマン分光計(ラマン分光)法3)を用いることができます。上記のPy-GC/MS法もGC/MS法も破壊検査ですが、ラマン分光は非破壊検査が可能ですので、意図的含有の有無を調べるには便利な方法です。 Py-GC/MS法とラマン分光法のデータ比較については、JASIS2018コンファレンスにおいて東京都立産業技術研究センター/萩原利哉氏が講演を行っており、その講演資料が東京環境経営研究所HP会員専用ページ4)にアップされていますので参考にしてください。


1) https://webstore.iec.ch/publication/25985

2) https://webstore.iec.ch/publication/32719

3) https://www.jaima.or.jp/jp/analytical/basic/spectroscopy/raman/

4) https://www.tkk-lab.jp/

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