当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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NIAS(Non-Intentionally Added Substance:非意図的添加物質)1)や Contamination(混入物)の企業対応

2019年7月12日更新


RAPEX(Safety Gate)2)で検索すると次のような摘発がありました。


香港製のプラスチック人形にDEHP(CAS No.117-81-7 別名 DOP)が0.13%含有しているとして代理店によるユーザーからリコールとなりました。

メーカーのホームページでもリコール案内がされています。(Alert number: A12/0709/19)


中国製の玩具の自動車に使用されている「はんだ」に鉛が0.3%含有しているとして市場から撤退措置となりました。(Alert number:A12/0490/19)

DEHPは塩化ビニルの可塑剤として使われますが、柔らかくするには20%程度混入させます。0.1%程度の含有では効果はありません。


共晶はんだ(錫/鉛60:40)は鉛 40%、鉛フリーはんだは鉛 500ppm程度で、鉛が0.3%程度という「はんだ」は一般的ではありません。

リサイクル段階でのDEHPの混入や「はんだ槽」での鉛の偏析(はんだの組成が不均一になって分布に偏りが生じる)などが推測されます。

RoHS(II)指令(2011/65/EU)の適合性は決定768/2008/EC(製品のマーケティングに関する共通の枠組み)のモジュールA(内部生産管理)によります。

モジュールAでは、適合性評価は「適切なリスク解析及び評価を含まなくてはならない」としています。

RAPEXで通知された事例は、低濃度の製品の仕様で含有させたものではなく、NIAS、Contamination(コンタミ)といわれる非意図含有をリスクベースで対応することは、多くの企業で苦慮しています。


1.NIASの法規制

EUでは、食品包装材のような食品接触材料は、規則 1935/2004(食品と接触することを意図した材料および成形品規則: FCM Food Contact Materials)3)により、食品への移行が制限されています。

FCMでは、第5条(材料や成形品グループに対する具体的な措置)で、「附属書Iにリストされている材料および成形品のグループ、ならびに適切な場合にはそれらの材料および成形品、あるいはそれらの材料および成形品の製造に使用されるリサイクル材料および成形品については、特定の措置を採用または修正することができる。」としています。


この規定により、規則10/2011(食品接触用プラスチック材料及び成形品規制:PIM plastic materials and articles intended to come into contact)4)で、プラスチック規制が行われます。

PIMは、食品接触用プラスチック製包装材などに含有する物質の食品への移行量を制限するものです。

附属書Iに収載されている物質(約800物質)についての移行量が定められていますが、一般的には10μg/kg-食品(前文 27)以下にされています。

PIMは、第3条(定義)で、「Non-Intentionally added Substance: NIAS 意図的に添加されていない物質とは、使用される物質中の不純物、または製造工程中に形成される反応中間体、または分解もしくは反応生成物を意味する。」としています。

NIASはプラスチック材料に含有していることは許容されます(第6条4項)が、移行量は制限されます。


このように論理的な規制ですが、非意図的含有物質の移行量規制であり、その移行量の確認は難しいものがあります。


コンタミによる含有もNIAS同様に非意図的含有物質です。コンタミは、サプライチェーン全体で起きる可能性があります。

日本では、塩化ビニルの可塑剤のDEHPなどのフタル酸エステル類の接触移行やコンタミが問題視されています。


これらによる含有をゼロにする対策は難しいので、法規制基準や有害性基準を超える可能性(リスク)を下げる対応が求められます。


2.EN50581:2012(有害物質の使用制限に関する電気•電子製品の評価のための技術文書)

RoHS(II)指令の整合規格であるEN50581は、適合性確認の技術文書についての規格ですが、適合性の確証(エビデンス)を「はじめに」で次のように示しています。


“均質材料”のレベルで適用される制限については、複雑な製品の製造者にとっては、最終組立製品に含まれる全ての材料に独自の試験を実施することは非現実的である。

代替手段として、製造者はサプライヤと連携し順法管理や、順法の証拠として技術文書を集めるのである。


EN50581では、順法確証文書として「サプライヤによる自己宣言及び/または契約上の合意」及び/または「材料宣言」及び/または「分析試験結果」を示しています。(4.3.1項)


材料、部品、半組立品に必要とされる技術文書の種類は、次の事項による製造者の評価(assessment)に基づくとしています。


a)材料、部品、半組立品に制限された物質が含まれている可能性

b)サプライヤの信用格付け

             

a)は「技術的判断」b)は「サプライヤの実績」などから、確証文書(documents)を決定し、収集後に評価(evaluation)して、技術文書(documentation)に構成します。

順法の証拠としてNIASやコンタミをどのように扱うべきか、測定をどこまで実施するのかなどが、課題になっています。


EN50581では、これらは企業が自らの判断により決定しなくてはならなく、アセメント手順は品質マネジメントシステムの一部に組み込むことができるとしています。


3. GB/T 36560:2018/ IEC 63000:2016(电子电气产品有害物质限制使用符合性证明技术文档规范: Specifications for technical documentation for the conformity demonstration of electrical and electronic products with respect to the restriction of hazardous substances)


GB/T 36560:2018は IEC 63000:2016の翻訳規格で、適用範囲は「製品が対応する制限物質の要件を満たすことを宣言するために製造業者が要求する技術文書を指定している。」としています。

IEC 63000:2016はEN50581:2012と調和されいますので、EN50581と同じように確証は「これらの制限は部品または均質材料に基づいているため、電気および電子製品の製造業者が最終製品のすべての材料の最終検査を実行することは不可能である。

しかし、製造業者はサプライヤと協力してコンプライアンス管理を行い、自社製品のコンプライアンスを実証するための技術文書を作成することができる。」としています。

2019年11月1日から適用される中国RoHS(II)管理規則の目録収載製品(現時点では12品目)の「合格評価制度」では明記されていませんが、「供給者適合宣言」の規格に指定されると思われます。


中国の適合性評価もサプライヤ管理をリスクベースで行うことになります。


なお、「合格評価制度」については、2019年6月13日のコラム及び「グリーンマーク」の仕組み5)をご確認ください。


GB/T 36560/IEC63000が求める順法確証は、前記EN50581と同じ文書になりますが、

GB/T 36560/IEC63000は、明確に次の規格を引用しています。


IEC 62321電気工業製品中の特定物質の定量

IEC 62474:2012 電気電子業界及びその製品に関する材料宣言


IEC 62474は、材料宣言の規格で、情報伝達の様式(XML スキーマ)と伝達対象物質の指定です。


川中企業の悩みは、顧客毎に異なる伝達様式と指定物質です。

これが、国際的に標準化されれば喜ばしいことになります。


IEC62474の具体的ツールが“chemSHERPA”ですが、NIASやコンタミをどのように扱うかが悩ましいものとされています。


GB/T 36560/IEC63000には参考文献として

EN50581

GB/T 19001:2016(质量管理体系要求(ISO 9001:2015))

GB/Z 30374:2013(电子电气产品中限用物质评价指南(IEC/TR 62476:2010))

などが示されています。


中国RoHS管理規則に関連する規格として、GB/T31274:2014(电子电气产品限用物质管理体系要求 電子電気製品における使用制限物質の管理体系 要求事項)が、2014年10月10日に発行され、2015年4月16日から実施されています。

GB/T31274はISO9001:2008にRoHS管理規則の要求を統合したものです。


この規格との関係も今後整理されると思います。

IEC/TR 62476(電気電子機器における物質の使用制限に対する製品の評価のためのガイダンス)は、製品評価に関する設計、調達、製造などの管理の枠組みを与えるものです。


なお、EN50581は2023年12月7日にEN IEC 63000:2018(IEC63000:2016をEN(ヨーロッパ標準)用に翻訳)に置き換えがされます。

EUも中国もIEC63000:2016 による適合宣言となります。

JIS Z 7201:2017(製品含有化学物質管理-原則及び指針)もIEC/TR 62476と同じです。JIS Z 7201は「製品含有化学物質管理に取り組む各組織が、製品含有化学物質管理の有効性向上、伝達する製品含有化学物質情報の信頼性向上及び不適合の発生防止のための基礎を築けるように、設計・開発、購買、製造及び引渡しの各段階における製品含有化学物質管理の原則及び指針を示す。」としています。


このように、日欧中の基本的な考え方は、IEC規格で同じになっています。


4. NIASやコンタミ防止のマネジメントシステム

日欧中の要求事項はISO9001に代表されるマネジメントシステムに有害物質の混入のリスクマネジメントを組み込むことを推奨しています。

FCMの移行管理は、規則2023/2006(食品と接触することを意図した材料および成形品の製造規範:GMP)6)で管理方法を示しています。

電気電子機器製造と食品接触材料製造では異なりますが、NIASやコンタミ対応では相通じるものがあります。


規則2023/2006のGMPの定義は「人の健康を危険にさらすことなく、又は食品の組成に許容できない変化を引き起こすことなく、又はその官能特性の悪化を引き起こすことなく、材料及び成形品が、それらに適用される規則及びそれらの意図された使用に適した品質基準に適合することを確実にするために、一貫して製造され、管理されることを確実にする品質保証の側面を意味する」です。


GMPは品質保証の側面とし、次を要求しています。(機械翻訳)


第5条 品質保証体制

1. 事業者は、実効的かつ文書化された品質保証体制を確立し、実施し、その遵守を確保しなければならない。

その制度は

(a)完成した材料及び成形品がそれらに適用される規則に従うことを確実にするために必要な、人員の適切性、それらの知識及び技能、並びに施設及び設備の組織を考慮する。

(b)事業者が行う事業の規模を勘案し、事業に過大な負担をかけないようにすること。

2. 出発原料は、原料または成形品がそれに適用される規則に確実に適合するように、あらかじめ定められた規格に準拠して選択されるものとする。

3. 異なる作業は、あらかじめ定められた指示及び手順に従って実施されなければならない。


第6条 品質管理体制

1. 事業者は、効果的な品質管理体制を整備し、これを維持しなければならない。

2. 品質管理システムは、GMPの実施及び達成のモニタリングを含み、GMP達成の失敗を是正するための措置を特定するものとする。そのような是正措置は、遅滞なく実施され、権限のある当局が検査のために利用できるようにされなければならない。


附属書 B項

食品と接触することを意図したリサイクルプラスチック材料及び成形品に関する規則282/2008号及び規則2023/2006号の対象となるプラスチックリサイクルプロセスの品質保証システム

1. リサイクル業者によって実施される品質保証システムは、リサイクルされたプラスチックが認可の要件を満たすことを保証するために、リサイクルプロセスの能力に適切な信頼性を与えなければならない。

2. リサイクル業者が品質保証システムのために採用したすべての要素、要件、および規定は、計画的かつ秩序ある方法で、文書化された方針書および手順の形で文書化されなければならない。

その品質システム文書は、品質プログラム、計画、マニュアル、記録、及びトレーサビリティを確実にするためにとられた測定など、品質方針及び手順の統一された解釈を可能にしなければならない。


それは、特に、以下を含まなければならない。

(a)リサイクル業者の品質目標、事業の組織、特に組織構造、管理スタッフの責任、およびリサイクルされたプラスチックの製造に関する組織権限の明確な定義を含む品質方針マニュアル。

(b)リサイクルされたプラスチックの品質管理のために重要な点の選択を含む、インプット及びリサイクルされたプラスチックの特性評価、供給者の資格、選別プロセス、洗浄プロセス、深部洗浄プロセス、加熱プロセス、又はリサイクルされたプラスチックの品質に関連するプロセスの他の部分のためのものを含む品質管理計画。

(c)すべての製造段階における検査及び品質保証技術、特に再生プラスチックの品質にとって重要な点における重要な限界の設定を含む、リサイクルプロセス全体を監視し、管理するために実施される作業手順を管理し、管理すること。

(d)品質システムの効率的な運用を監視する方法、特に、適合しない製品の管理を含む、所望の再生プラスチック品質を達成する能力を監視する方法。

(e)リサイクルプラスチック製造前、製造中及び製造後に適用される試験及び分析プロトコールその他の科学的証拠、実施頻度、使用される試験装置。試験装置の校正を適切に追跡することができるものでなければならない。

(f)採択された記録文書


規則2023/2006のGMPは、自社及びサプライヤ管理の方向性を示唆しています。

例えば、フタル酸エステル類の接触移行は様々な状態で起こり、その状況は個々には特定できません。

接触移行のリスクが十分に低いといえるように管理することになります。


その管理は、接触移行を起こさない作業標準を策定し、品質マネジメントシステムの一つとして管理することになります。


日欧中で認めているように、品質マネジメントシステムで、NIASやコンタミを保証することになります。


(松浦 徹也) 


引用

1) https://www.foodpackagingforum.org/food-packaging-health/non-intentionally-added-substances-nias

2)https://ec.europa.eu/consumers/consumers_safety/safety_products/rapex/alerts/?event=main.search&lng=en#searchResults

3)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32004R1935

4)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32011R0010

5)https://www.tkk-lab.jp/post/whatsnew20190611

6)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32006R2023

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