当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Covid-19感染予防対策下におけるBPR対応

2020年06月05日更新

世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス(COVID-19)に対して、多くの感染防止対策がとられています。 欧州疾病予防管理センターはCOVID-19の一般的な感染防止策として、石鹸と水による(少なくとも)20秒間の手洗い、または、アルコールベースの溶液、ゲル、ティッシュを用いた手指洗浄を推奨しています。

そのため、ほとんどの欧州連合加盟国においてハンドクリーナーや手指消毒剤の需要が劇的に増加し、供給不足が生じています。 市場への迅速な投入が求められるなかで、このような製品の生産に新たに取り組む企業も少なくありません。

欧州連合加盟国においては、一般的に手洗いや洗浄時において感染予防対策として用いられる製品は、殺生物性製品規則(BPR, Regulation (EU) 528/2012)の対象となることが多いと考えられます。 今回のコラムでは、感染症予防対策における製品に対するBPRの運用動向について確認します。

企業が新製品を市場に投入するにあたり、該当する法規制の適用範囲を判断することは容易ではありません。 手指洗浄時に使用するハンドクリーナーのような製品は、必ずしも殺生物性の機能を持たない場合もあります。

このように製品がBPRの適用範囲内であるか明確ではない場合において、欧州委員会(EC)はハンドクリーナーと手指消毒剤(ジェル、溶液など)に適用される法律に関するガイダンス1)のなかでは以下のように説明しています。

アルコールベースの溶液、ジェル、ハンドクリーナー、手指消毒剤等の製品は、化粧品規則(Regulation (EC) No. 1223/2009)またはBPR(Regulation (EU) 528/2012)の対象となる可能性があり、通常、製品にはどちらかの法規制が適用されるとしています。

(1)化粧品規則の適用範囲

おもな目的が化粧用途である、または化粧品特有の目的で提供される製品は、化粧品規則の対象となります。 また「身体的にきれい」「視覚的にきれい」など製品の機能が、手や体の洗浄および外観の改善に関する化粧品の定義と一致する典型的な表現を使用している場合も対象に含まれます。

したがって、製品が皮膚の洗浄または皮膚の汚れを落とすことを目的としている場合、その製品は化粧品規則の対象になると考えられます。

(2)BPRの適用範囲

活性物質を含み、主要な用途が殺生物目的(有害生物を駆除することを意図している)で供給される製品は、殺生物性製品規則の対象となります。 例として抗菌ハンドジェルのように、「消毒」、「ウイルスを殺す」、「細菌を殺す」などの感染性微生物の駆除を通じて公衆衛生を改善することを意図する製品が該当します。

したがって製品のおもな目的が明言されていないものの、活性物質を含有し、殺生物活性または交差汚染(二次汚染)を低減する特定の効果を主張して販売されている場合、その製品は殺生物性製品規則の対象になると考えられます。

以上より手指消毒剤製品の供給については、BPRに対応する必要があると判断することができます。 欧州連合域内の消毒剤製品の不足を受けて、供給を増加させることを目的にBRP規則においても特例措置が取られています。2)

BPRのもとで、殺生物製品を欧州連合加盟国に上市するためには、製品分類に該当する承認された活性物質を使用したうえで、欧州連合または上市する欧州連合加盟国により製品の認可を受けることが求められます。

国家当局による緊急措置としてBPR 第55条1項では、管轄当局は、第17条(殺生物性製品の上市と使用)および第19条(認可付与の条件)に緩和措置を適用して、180日を超えない期間(委任法行為第82条第3項で言及されている審査手続きにより採択されれば550日に延長可能)で、認可の条件を満たさない殺生物性製品の上市や使用を許可することができると規定しています。

その使用については公衆衛生、動物の健康または環境に対する危険が他の手段では封じ込めることができず、措置が必要である場合、所管官庁の監督下で限定的に管理されていることを条件としています。 さらに、そのような暫定的な認可においては、殺生物性製品の認可条件である第19条第1項(b)(c)(d)を満たすことが予測される場合に限定されており、最低限の基準が設けられています。

この措置により、欧州連合加盟国はレビュープログラムで評価中となっている未承認の活性物質を含む製品であっても、自国の規定に基づいて許可をすることできます。 そのため、他の欧州連合加盟国で効用が認められる製品についてもすぐに供給を開始することが可能となります。

第55条1項に基づいて欧州連合加盟国が取った措置は、他の欧州連合加盟国が同様の措置をとる判断を行うために重要であり欧州委員会(EC)およびその他の欧州連合加盟国に遅滞なく通知される必要があります。

ECHAのウェブサイト内COVID-19特設ページ3)では、すでに複数の欧州連合加盟国がこの規定による特例を認めていると説明されています。 措置の程度や内容等の詳細については、欧州連合加盟国により異なる対応がとられているため、上市を計画する欧州連合加盟国の所轄官庁4)に問合せをすることが推奨されています。

またBPR 第95条では、関連物質(活性物質と活性物質を生成する物質の組み合わせ)および製品の供給者のリストをECHAが作成し、定期的に更新、公開することを義務付けています。 このリストの目的は、活性物質を上市する事業者に対して平等な取り扱いを保証する(BPR前文8)ことであり、2015年9月1日以降、このリストに登録のない供給者は製品を欧州連合域内で上市できません。

上記特設ページでは、本リストの申請においても消毒剤製品については評価プロセスの迅速化が図られており、手数料の支払い前に評価を進めていると説明されています。 一部の欧州連合加盟国の所管当局においては、この登録義務についても当面免除をするとしています。

公開されている最新リスト5)のなかでは、PT1、PT 2で承認されているエタノール(Ethanol、CAS番号64-17-5)や2プロパノール(Propan-2-ol、CAS番号67-63-0)の物質および製品供給者の登録が感染症拡大後に増加しており、欧州連合加盟各国で消毒剤製品の供給体制が徐々に強化されていることがわかります。

BPRは平常時には安全性や効果を確実に評価する仕組みを持ちつつも、非常時においては最低限の基準はあるものの欧州連合加盟各国の状況により、柔軟に緩和措置を図ることのできる法体系となっています。 そのため、今回のような感染症蔓延時においても、消毒剤製品のような予防対策製品の迅速な国内供給を可能にしています。

(柳田 覚)

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