当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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CAS構築シリーズ その1

2019年05月10日更新


1.CASの要求

 RoHS2指令(RoHS(II)指令/指令2011/65/EU)1)7条で製造者に次を要求しています。

a.電気電子機器 を上市する時は、製造者は第4 条に規定されている要求に従い設計、製造されていることを確実にすること。

b.製造者は、要求されている技術文書を作成し、Decision No 768/2008/EC の附属書ⅡのモジュールA に従い、内部生産管理手続きを実施するか又は実施させること。

c.電気電子機器 の適切な要求への準拠が(b)に言及される手順より証明される場合、製造者は、EU 適合宣言書を作成し完成品にCE マーキングを貼付すること。

他の共同体法令が少なくとも厳重な適合性評価手順の適用を要求する場合、製造者はこの指令の第4 条(1)の要求への準拠はその手順の文脈に含めて証明することができる。単一の技術文書が作成することができる。

d.製造者は、技術文書とEU 適合宣言書をその電気電子機器の上市後10 年間間保管する。

e.製造者は、適合性を存続するためシリーズ製品に対する手順が決まっていることを確実にする。

製品設計または特性の変更および電気電子機器 の適合性が宣言されるため参照している整合規格又は技術仕様の変更が適切に考慮されなければならない。

f.製造者は、非適合電気電子機器 および製品リコールの記録を保持し、それについて流通業者に告知できる状態にしていなければならない。


 a~d項の要求事項は、e項でルーチン化し標準手順を作成し、変更管理を行うことを要求しています。RoHS2指令はNB(Notified Body)の関与なしで、適合宣言をしてCEマーキングできます。

 f項は、適合宣言にも拘わらず、不適合品が出た場合はリコールをすることが要求されています。


 e項の作業管理手順準や変更管理手順が遵法適合宣言(EC Declaration of Conformity)のためのCAS(Compliance Assurance System)の要素になります。CASのなかで、RoHS2指令の要求に関わる部分を説明するのが技術文書(TD Technical Documentation)です。


 RoHS2指令のCEマーキングは、CAS(遵法システム)を構築し、適合宣言をして、CEマーキングをします。CASの説明をTDの標準的な構成要素に従って記述することになります。

 TDの要求は決定768/2008/EC 第R2条2項で“Manufacturers shall draw up the required technical documentation”となっていますので、文書化が要求されます。


2.CASの構成

 RoHS1指令((2002/95/EC)は2006年7月1日に施行されましたが、“EU RoHS Enforcement Authorities Informal Network”( “EU RoHS Enforcement Authorities Informal Network”)が、“RoHS Enforcement Guidance Document”(RoHS施行ガイダンス文書)2)で、市場監視などについて、フェーズ合わせをしています。

 このガイダンス文書は古く、英国当局はarchiveデータベースで保管していますが、RoHS2指令でも参考になります。


 このガイダンス文書の“Table 2 - Typical Compliance Documentation List”(コンプライアンス文書類リスト)に、CASの構成が示されています。

 大手セットメーカーはRoute A(Process-based Technical Documentation)、川中企業や小規模企業はRoute B(Product/Part-basedTechnical Documentation)を選択します。

Route AでのCASの要素として次を示しています。


Compliance Assurance System(遵法保証システム)

a.システムの目的、その本質的な要件と仕様の定義。この仕様は、企業内およびサプライチェーン内の両方のコンプライアンスをカバーする必要がある。

b.システムの要件を実装し、組織の品質管理システムに統合された正式に定義されたプロセス

c.プロセスとその適合性を保証するための措置を支援する技術文書システム(紙および/または電子)必要な訓練、ツール、インフラストラクチャーと一緒にシステムの要件。


Evidence of Active Control of the CAS (CASの作業管理の証拠)

d.コンプライアンス保証システムおよび/またはプロセスを検証するための社内監査およびサプライヤー監査の結果。すなわちコンプライアンスを保証するための供給者の能力。

e.製品審査(RoHSの正当化を含む)などの項目を含む製品固有適合性評価の結果を含む、システムがフォローされていることの証拠、資材宣言、調達、在庫管理、生産管理、および必要に応じて物質分析

f.RoHS準拠データの管理に使用される内部データシステムの概要


b項で「組織の品質管理システムに統合された正式に定義されたプロセス」としていますので、ISO9001の品質マネジメントシステムを運用しているのであれば、そのシステムに統合します。ISO9001の品質マネジメントシステムは第三者認証が必須ではなく、エコステージ3)のようなスモールモデルでもよく、自社のマネジメントシステムとRoHS2指令の遵法活動を統合することが要求事項です。


 Route Bの場合は、次となります。

Compliance Assurance System (CAS)  遵法保証システム

a.制限物質の使用が許可されたレベルにあることを宣言する生産者または供給者の保証/証明書

b.各部品の製造者または供給業者の完成品の宣言(改訂部品の改訂を含む)およびRoHSの分類と免除の使用の正当化。これらの宣言は、完全な物質宣言ではなく、RoHS物質のリストに限定される。

c.部品/部品の均質材料(生産者または供給業者が内部または外部の試験結果を所有する可能性がある)の分析レポート。試験結果は、部品/部品内の均質な材料を指すものとする。


Evidence of Active Control of the CAS (CASの作業管理の証拠)

d.アプローチBのみを使用する企業(人)は、彼らが信頼できるかどうかを判断するために材料宣言が評価されている。

 施行当局はまた、文書化されたコンプライアンス手順を参照する。


 対象となる製品の構成部品について、いわゆる非含有証明書(RoHS Directive(2011/65/EU、(EU)2015/863)compliance certificate)により、遵法保証をするものです。仕組みではなく、実物による検査保証です。


3.CASのTDの説明例

 CASをISO9001:2015の品質マニュアル(作成は必須ではありませんが)での例をご紹介します。


(1)品質マニュアル

8. 運用

8.1 運用の計画及び管理

当社は開発、設計、購買、生産やサービスなどの運用に関わるすべてのプロセスの運用計画を他のマネジメントシステムの構成要素との整合をとって、効果的に計画することを目的に、「松浦科学株式会社 品質及び順法保証システム(Matsuura Scientific Co., Ltd. Quality and Compliance Assurance System :MAQCASAS)」により運用し維持する。

運用に関わるすべてのプロセスはMAQCASの構成手順の「運用計画規定」によりリスクを考慮して、計画し、運用し維持する。

 運用計画の実施結果はそれぞれのプロセスで、検査あるいはレビューを行い、総合的なレビューは、経営トップ主催のMAQCAS会議でレビューを行い、次の運用計画のインプット情報とする。

 MAQCASは品質保証部署が主管する。


8.1.1 運用計画

運用に関わるすべてのプロセスの運用は付表1「運用体系図」に示すMAQCAS の構成文書及びMAQCAS構成文書の手順により作成した手順書やフロー図で、主要業務の流れや相互関係を明確にする。

各プロセスの運用基準は、規定またはその下位文書の手順書、要領書、基準書等で明確にする。

なお、GMP、CEマーキング、化学物質規制、順法法令など法規等により運用計画書の作成が定められている場合は、適用される法規等に基づいて要求事項を定めた運用計画書や基準書等を作成する。


8.1.2 個別製品の運用計画書の作成

次のプロセスでは、必要に応じて個別製品の運用計画書を作成する。

なお、運用計画書は複数の個別製品で共通使用する場合がある。

必要に応じて法規制に係わる事項についても運用計画書で明確にする。

1)顧客・市場ニーズの具現化のプロセス:新製品開発計画書、見積書(特殊仕様の場合)

2)製造・検査のプロセス:QC工程表、製品標準書(医療用具の場合)

3)据付・引渡しのプロセス:QC工程表

4)アフターサービスのプロセス:QC工程表

 運用計画書は、MAQCASの構成手順の「文書管理規定」により、レビュー、承認を得て発行する。


8.1.3 運用計画書の構成

前項の個別製品の運用計画書の構成は、それぞれMAQCAS の構成文書で定める他、適宜関連する「MAQCASの構成文書」を引用し、次項を計画する。

1)製品に対する順法・品質目標及び要求事項

2)製品に特有なプロセス及び文書の確立の必要性、並びに資源の提供の必要性

3)製品のための検証、妥当性確認、監視、検査及び試験活動、並びに製品合否判定基準

4)製品実現のプロセス及びその結果としての製品が要求事項を満たしていることを実証するために必要な記録

 (中略)


8.3.3 設計・開発へのインプット

1)インプットは次項とする。これらは記録として維持する。

①製品開発のクラスA,Bの場合

「新製品開発計画書」、開発計画日程表、デザインレビュー計画等

②製品開発のクラスCの場合

「新製品開発兼登録申請書」

③特殊仕様

「見積書」

④安全設計基準

⑤順法設計基準

⑥製品に適用される法規制(RoHS指令、EMC指令、低電圧指令、ErP指令など)及び規格(EN50581、EN55032)等

 これらの引用文書は、順法文書リストとして維持管理する。


2)インプットレビュー

 開発部署は、設計計画の詳細とインプットを新製品開発計画書、または新製品開発兼登録申請書、見積書、並びにこれらの構成文書に纏め、関連部署の代表と共にこれら文書の適切性をレビューする。

 開発クラス、売上規模など事業経営上重要な製品の場合は、新製品開発計画書は、「経営会議」で経営の総合評価を得る。

3)設計者は、順法認証済データベース「TMDB」に収載された材料、部品や半製品(ユニット)により設計する。

TMDBの収載手順は「購買規定」に定める。

 TMDBに未収載の材料、部品や半製品(ユニット)を使用する場合、及び/又は新規の作業工程、作業方法を指定する場合は、品質保証部署に採用の可否の評価を依頼する。品質保証部署は出図までにこれを評価し、順法性が評価できた場合はTMDBに登録する。

 TMDBの構成は、材料、部品や半製品(ユニット)の技術データ、購買データ、順法データなどで構成しており、順法データの見直し期間なども含める。

 (以下略)



(2)技術文書例

 技術文書の構成

Contents

The following contents become the Technical documentation based on a directive of EU.


Preface


1. GENERAL DESCRIPTION ..........................................WZ-25A_GEN-001

1.1 Manufacturer's Identification

1.2 Testing and Evaluation Firm

1.3 Product Description

1.4 Applicable Standards


2. EMC DESCRIPTION .................................................. WZ-25A_EMC-001

SECTION 1 GENERAL INFORMATION

SECTION 2. SUMMARY OF TEST RESULTS

SECTION 3. EQUIPMENT UNDER TEST

SECTION 4. SUPPORT EQUIPMENT

SECTION 5. USED CABLE(S)

SECTION 6. TEST CONFIGURATION

SECTION 7. OPERATING CONDITION

SECTION 8. UNCERTAINTY

SECTION 9. EVALUATION OF TEST RESULTS

SECTION 10. PHOTOGRAPHS OF MAXIMUM EMISSION SET-UP

SECTION 11. LIST OF MEASURING INSTRUMENTS


3. SAFETY(LVD) DESCRIPTION ..................................WZ-25A_LVD-Q001

TRF No. IEC61010_1J (IEC Test Report Format)

Safety Critical Component List(SCCL Rev.01)

Risk Assessment Sheet Rev.01


4. RoHS DESCRIPTION ................................................ WZ-25A_RoHS-001

4.1 RoHS Directive

4.2 Category of EEE

4.3 Evidence of RoHS Conformance

4.4 RoHS Compliance Check List

4.5 The Applicable Standard

5. DECLARATION OF CONFORMITY............................Attached

6. APPENDIXES…..........................................................Attached

RoHS Evidence Parts List ............. WZ-25A-A01 Parts List Rev.00


具体例

4.1 Typical List of Overview Documentation

4.1.1 RoHS Directive (2011/65/EU)

We have described this Technical Documentation based on the requirements of Harmonized standard EN 50581:2012 of a ROHS directive of the product of WZ-25A by Matsuura Scientific Co., Ltd.

このテクニカルドキュメンテーションは、Matsuura Scientific Co.、LtdによるWZ-25Aの製品のRoHS指令の整合規格EN 50581:2012の要件に基づいて説明しています。


4.1.2 Category of Electrical and Electronic Equipment (EEE)

 Category: 9.

この製品は主に製品開発部署などで使うことを想定しています。オペレーターは特別に教育を受け、専門知識を得た者が測定、評価、決定をします。よってこの製品は専門家向けのため工業用監視、制御装置に該当します。


4.1.3 Approach to compliance

当社は開発、設計、購買、生産やサービスなどのプロセスの運用計画を他のマネジメントシステムの構成要素との整合をとって、効果的に計画することを目的に、「松浦科学株式会社 順法及び品質保証システム(Matsuura Scientific Co., Ltd. Compliance and Quality Assurance System :CAS)」により運用し維持しています。

製品の順法対応は、2ステップ運用しています。

(1)順法認証済データベース(順法認証済DB)への登録

順法認証済データベースは、CASの構成サブシステムの「含有化学物質管理システム」により管理しています。

(i)リスク評価

整合規格EN 50581:2012をベースとした「順法認証済データベース登録手順」、次のようにリスク評価をします。

・自社及びサプライヤの製造工法(工程)・作業方法による特定有害化学物質の含有や混入などの順法に関連するリスク評価

・部品、材料、ユニット、EEE(Electrical and Electronic Equipment)について特定有害化学物質の含有や混入の可能性などの順法に関連するリスク評価

(ii)順法確証データ

リスク評価から順法確証データを指定して、順法性等を確認し順法認証済DBに登録します。


(2)設計及び製造

設計は、順法認証済DBに登録された部品、材料、ユニットを採用します。

購買は、設計情報により順法認証済DBに登録されたサプライヤに部品、材料、ユニットを手配します。

製造は、設計情報により順法認証済DBに登録された作業方法により作業をします。

4.2項で当社のCASの説明をします。


 この事例は、MTEP(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 広域首都圏輸出製品技術支援センター)4)及びKISTEC(地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所)5)のセミナー副読本を引用しています。


4. 順法認証済データベースとは

 TDの事例の「8.3.3 設計・開発へのインプット」に記述している順法認証済データベースを図示します。“図1”

 担当部署は、自社で使用する材料、部品、購入ユニットや作業方法をEN50581の手順で遵法確認し、データベースに登録しておきます。

 設計者は、設計するときに使用する材料、部品、購入ユニットや作業方法はデータベースに登録してあるものしか使用しないルールとします。

 新規材料等を採用したい場合は、担当部署に「新規材料・部品・ユニット・作業方法採用申請」をします。担当部署は申請を受けて、EN50581の手順で遵法確認し、データベースに登録します。

 出図(設計部署からの図面の発行)前のDR(Design Review 設計審査)で、順法認証済データベースに登録されていることを確認します。

 製造工程での作業も順法認証済データベースに登録された標準作業によりますが、新規工程の採用の場合は、設計同様に事前に評価します。



 次回は、自社のマネジメントシステムとRoHS2指令の遵法活動を統合する手順をご紹介します。


(松浦徹也)

引用

1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:02011L0065-20171211

2) https://webarchive.nationalarchives.gov.uk/20100104175041/http://www.berr.gov.uk/files/file30049.pdf

3) https://www.ecostage.org/

4) https://www.iri-tokyo.jp/site/mtep/

5) https://www.kanagawa-iri.jp/


図1



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