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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q702. 米国向けラベルを貼り付けた製品を他国で流通させる場合の対応について

2024年12月13日更新

【質問】

米国向けに対応したラベルが貼り付けられた製品の場合、米国以外の国にそのラベルを表示したまま流通させることに問題はありますでしょうか。

_________________________________________


【回答】

国ごとにラベルに対する言語や記載内容などが定められており、物質によっては分類も規定されている場合もあります。流通させる国(以下、対象国)において、米国向けラベルが対象国の規定に適合している場合にはラベルを貼付したままの流通は可能ですが、それ以外は適合するラベルを貼付する必要があります。


GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」)は2003年7月に国連勧告として採択され、2023年に改定10版が発行されています1)。GHSは化学品の危険有害性を世界的に統一された一定の基準に従って分類して分かりやすく表示し、災害防止及び人の健康や環境の保護に役立てようとするものです。

GHSを導入している多くの国では、ラベルに記載すべき内容を規定しています。ラベルを表記する言語は現地語で、物質名称や組成、危険有害性情報や対象国内での連絡先などが規定されています。さらに、ラベルのサイズやピクトグラムの大きさなども定めている国があります。輸入品の場合、輸入者がその国の規則に則ったラベル表示を行うことが求められています。

言語については、現地語以外に英語での表記を認めている国もありますが、確認が必要です。例えば、カナダでは英語とフランス語の両方で表記したラベルが必要です2)。

分類について、その国で採用しているGHSの改訂版や基準によって同じ物質でも分類結果が異なる場合があります。EUや中国のように、特定の物質に対して法的に分類を規定している場合もあり、その分類に準拠した内容にする必要があります。

なお、規則等で定めた区分より厳しい区分を採用することを許容する国もあります。例えば、EUではCLP規則の附属書VIの1.2.1項で、自己の評価によりCLP調和分類より厳しい区分の結果がある場合にはその区分を採用するとしています3)。


米国では、危険有害性周知基準(Hazard Communication Standard: HCS)により、米国に製造または輸入される化学品の危険有害性を分類し、それらの情報を雇用者および従業員に伝達することを規定しており、これに準拠したSDSの作成とラベルの貼付が必要です4)。HCSは、国連GHS改訂第7版及び改訂第8版の一部の規定に適合した内容に改訂されて2024年7月19日に発効しました。

また、米国国内の基準として、全国防火協会(National Fire Protection Association:NFPA)のプログラム(NFPA704)や、米国コーティング協会(American Coatings Association)の危険有害性物質識別システム(Hazardous Materials Identification System: HMIS)に基づくラベルがあります5)6)7)。どちらもSDSに記載されている危険有害性情報と関連付けられており、色付きの図形、数字と文字で構成されたラベルで、作業場内での危険有害性情報の伝達に活用されています。

ともに自主基準ですが、規制基準としている州や郡もあり、対応が必要です。


ご質問の「米国向けに対応したラベル」の内、HCSに基づくラベルについて、そのラベルが対象国の規定に則っていることが前提になります。英語表記のみでの可否、対象国での連絡先やラベルサイズなど書式面も含めた適合性の確認が必要です。

「米国では分類されるが対象国では分類が無い危険有害性」以外の危険有害性について、対象国での分類結果に準拠しているか確認する必要があります。

これらの項目が適合している場合に、米国のHCSに基づくラベルを貼付したまま対象国で流通させることは可能となります。いずれかの項目で適合しない場合には、対象国向けのラベルを新たに貼付する必要があります。

また、NFPAやHMISのラベルは米国内向けであり、前述のHCSに準拠したラベルと同様に対象国の規制に該当しなければ、貼付したままの流通は可能となります。


1) GHS 改訂10版 2023年


2) Canadian Centre for Occupational Health and Safety :OSH Answer fact Sheetst


3) CLP規則


4) 危険有害性周知基準(Hazard Communication Standard)


5) NFPAとHMISについて


6) 緊急時対応のための材料の危険性特定のための標準システム(NFPA704)


7) 危険有害性物質識別システム(HMIS)

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