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Q537.PFOA(パーフルオロオクタン酸)及び関連物質のリスク
2019年4月19日更新
【質問】Q537
PFOA(パーフルオロオクタン酸)及び関連物質の製造・使用、およびそれらを原料とした製品の製造を2015年12月末で完全に終了していると思いますが、現在も多くの製品に含有されているリスクがあるのでしょうか。
【回答】
パーフルオロオクタン酸(PFOA)ならびにその塩およびPFOA関連物質はフッ素ポリマー加工助剤 としての使用やその撥水、溌油機能からカーペット等の防汚処理など、身近な日用品の成分として広く使用されています。
PFOAならびにその塩および関連物質のリスク評価については、米国環境保護庁(EPA)の2010/2015 PFOAスチュワードシッププログラムに次いでPOPs条約においても検討が行われています。
1. POPs条約での検討結果
ストックホルム条約(以降「POPs条約」)1)」は、人の健康と保護および環境の保護を図ることを目的として2004年5月に発効した国際条約です。条約対象物質への追加について検討する検討委員会(POPRC)2)は、加盟国から提案された物質について、1)スクリーニング、2)危険性に関する詳細検討(リスクプロファイル)、3)リスク管理に関する評価の検討の3段階のプロセスを経て、締約国会議(COP:Conference of Parties)に勧告します。ご質問にありますPFOAおよび関連物質についての検討が以下のとおり行われています。
PFOAはPOPs条約の「第14回残留性有機汚染物質検討委員会3)(以降「POPRC14」と略称)」(2018年9月17日~21日) においてPFOAとその塩およびPFOA関連物質について、リスク管理に関する評価およびPOPs条約において、製造・使用等の禁止(廃絶)の必要性について検討が行われました。その結果附属書A(廃絶対象物質)に指定され、以下のように締約国会議に勧告することが決定されました。すなわち、
「医療品製造を目的とするペルフルオロオクタンブロミド(PFOB)の製造のためのペルフルオロオクタンヨージド(PFOI)の使用、およびすでに搭載されている泡消火薬剤の使用を適用除外として、廃絶対象物質(附属書A)に追加することをCOPに勧告すること」を決定しています。
これを受けて日本では、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)4)に 基づき、早ければ2020 年に国内での製造・輸入・使用等を禁止する可能性があります。EUにおいてもREACH規則の改正が官報公示されており、5)2020 年 7 月 4 日以降、PFOA 類の製造・上市を禁止するとともに、PFOA を 25ppb 超 含有する、または PFOA 関連物質を合計 1000ppb 超含有する混合物や成形品の製造時使用および 上市が原則禁止されます。
上記の通り、PFOAは廃絶対象物質に追加することをCOPに勧告される段階であり、現時点では製品への含有リスクを完全には否定できません。
2. 米国環境保護庁(EPA)の2010/2015 PFOAスチュワードシッププログラムでの検討内容
PFOAの主要メーカ8社は米国環境保護庁(EPA)の2010/2015 PFOAスチュワードシッププログラム6)に則り、2015年12月末の全廃に取り組みました。しかしスチュワードシッププログラムでは、「PFOAを2015年までに全廃することに対する努力をすること」を求めていますが、実際に一部のメーカでは僅かに使用が継続されています。また一部の医療品等には今後とも使用されることとなります。
一方でスチュワードシッププログラムの取り組みにより、各社でPFOAの製品含有量は大きく減少していることが報告7)されています。PFOAの含有リスクを完全に否定はできませんが、小さくなってきていると言えます。
参考文献
3)https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180926002/20180926002.html
4) https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/1_chousairai_besshi1.pdf
5)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32017R1000&qid=1497592999609&from=EN