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Q538.EU、アメリカなどのフタルエステル類の規制状況
2019年5月6日更新
【質問】Q538
EUのフタル酸エステル類の規制に適合していれば、アメリカなどに輸出する場合でも、フタル酸エステル類の規制に適合しているといえるでしょうか。
【回答】
1.EUの状況
EU REACH規則の規制は、認可と制限の両方で厳しくしています。
主要な規制対象物質は次などです。
(1)REACH規則の認可物質 附属書XIV
Bis(2-ethylhexyl) phthalate/ Di-(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
Butyl benzyl phthalate (BBP)
Di-butyl phthalate (DBP)
Di-isobutyl phthalate (DIBP)
Bis(2-methoxyethyl) phthalate
Di-pentyl phthalate
N-pentyl-isopentyl phthalate
1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C6-8-branched alkyl esters, C7-rich
1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C7-11-branched and linear alkyl esters
1,2-Benzenedicarboxylic acid, dipentyl ester, branched and linear
(2)REACH規則の認可物質の候補物質 CLS(いわゆるSVHC)
Di-n-hexyl phthalate(DHexP)
Di-pentyl phthalate (DPP)
Di-isopentyl phthalate (DIPP)
及び、附属書XIVに収載された物質
(3)REACH規則の制限物質 附属書XVII エントリNo51
DEHP、DBP、BBP の3種のフタル酸エステルについて、玩具および、育児用品のみ、使用および上市が禁止されていたがすべての成形品に拡大されました。さらに、2020年7月7日以降は、DIBP が追加されました。
可塑化された材料中に4種のフタル酸エステル類の合計の含有量が0.1wt%超となる成形品の上市が禁止されます。
ただ、RoHS指令(2011/65/EU)の適用範囲である電気電子製品は、DEHP、DBP、BBPとDIBPはRoHS指令が適用され、REACH規則は適用されません。
(4) REACH規則の制限物質 附属書XVII エントリNo52
DNOP
DIDP
1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C9-11-branched alkyl esters, C10-rich
1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C8-10-branched alkyl esters, C9-rich
DINP
子供が口に入れることができる玩具及び育児用品に、可塑化材料の0.1重量%を超える濃度で物質又は混合物として使用してはならない。
可塑化材料の0.1重量%を超える濃度でこれらのフタレートを含有するこのような玩具及び育児用品は、上市してはならない。
2.アメリカの状況
アメリカでは、連邦法と州法で規制されています。
主要な規制法をご紹介します。
(1)連邦法のTSCAの検討・規制物質
・Dibutyl phthalate (DBP),
・Butyl benzyl phthalate (BBP)
・Di-(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
・Di-n-octyl phthalate (DNOP)
・Di-isononyl phthalate (DINP)
・Di-isodecyl phthalate (DIDP)
・Di-isobutyl phthalate (DIBP)
(2)FDA(アメリカ食品医薬品局)の規制物質
・Di-n-butyl phthalate(DBP)
・Dimethyl phthalate(DMP)
・Diethyl phthalate(DEP)
(3)CPSIA(子供用玩具または育児用品)の規制物質
・Di-(2-ethylhexyl) phthalate(DEHP)
・Di-n-butyl phthalate(DBP)
・Butyl benzyl phthalate(BBP)
・Di-isobutyl phthalate(DIBP)
・Di-n-pentyl phthalate ( DPENP)
・Di-n-hexyl phthalate (DHexP)
・Di-cyclohexyl phthalate (DCHP)
(4)CPSIAの3歳未満の子供の口に入る育児用品の規制物質
・Diisononyl phthalate(DINP)
・Di-isodecyl phthalate(DIDP)
・Di-n-octyl phthalate(DNOP)
(5)カリフォルニア州法Prop65の規制物質
Butyl benzyl phthalate (BBP)
Di- (2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)
Di-isodecyl phthalate (DIDP)
Di-isononyl phthalate (DINP)
Di-n-butyl phthalate (DBP)
Di-n-hexyl phthalate (DnHP)
3.EU、アメリカ以外の規制
フタル酸エステル類の規制は、EU、アメリカ以外でも規制が強化されています。
(1)中国
中国は既存化学物質の有害化学物質を危険化学品目録1)に収載して規制をしていますが、中国化学品目録2015にはDEHPは収載されていません。
しかし、GB6675.1 玩具安全規格で規制をしています。
口に入れる玩具(おしゃぶり) DBP、BBP、DEHP 合計 0.1%
口に入る玩具 DNOP、DINP、DIDP 合計 0.1%
(2)韓国
子ども製品安全特別法2)で、13歳以下の子供の安全基準があり、DEHP・DBP・BBP・DINP・DIDP・DnOPの総含有量は以下の条件で0.1%以下としています。
合成樹脂製、コーティングしたテキスタイルおよびレザー製について
(i)子供が口に入れて使用する用途でない製品の場合はDEHP、DBP、BBPを適用
(ii) 子供が口に入れて使用する用途の製品の場合はDEHP、DBP、BBP、DINP、DIDP、DnOPを適用
子供が口に入れて使用しない子供の製品の中でDEHP、DBP、BBP、DINP、DIDP、DnOPの総和が0.1%を超過した製品には、警告表示が要求されます。
「警告!口に入れるとフタル酸エステル類の可塑剤が溶出されることがありますので、口に入れないこと」
または
「フタル酸エステル類の可塑剤が溶出されることがありますので、子供の顔と口に触れないようにすること」
(3)台湾
玩具について、フタル酸エステル類については「可塑劑檢測」で、CNS4797「玩具安全(一般要求事項)」とCNS15138「プラスチック玩具のフタル酸エステル系可塑剤の試験方法」が適用されます。
3歳以下の子供用に設計された製品の基準は次です。
DEHP、DBP、BBP、DNOP:添加禁止 (非意図的場合は0.1%)
DINP、DMP、DIDP、DEP:01%以下(樹脂類の規定に適合している場合)
フタル酸エステル類は、EUが特に厳しいのではなく、ことに子供向け製品は多くの国では厳しく規制しています。
規制対象フタル酸エステル類は、類似していますが、国より若干の差異があります。輸出先国の法規制は確認する必要があります。
引用
1)http://www.shsafety.gov.cn/wcm.files/upload/CMSAJJ/201607/201607190228041.doc
3)HWPファイル
http://www.katri.re.kr/file/download.do?file_id=KIDS_QUA18_HWP