当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q541.TSCAでの成形品に含まれる物質の届け出

2019年6月20日更新


【質問】

アメリカの有害物質規制法(Toxic Substances Control Act:TSCA)の重要新規利用規則(SNUR)は成形品も対象とありますが、成形品で使用する物質についても届け出は必要でしょうか。

【回答】

TSCAにおいて、TSCA インベントリー(既存化学物質リスト)に収載されていない新規化学物質の製造または輸入を予定している事業者は、その化学物質を米国で製造等を開始する90 日前までに、製造前通知(Pre-Manufacturing Notice:以下PMN)をアメリカ合衆国環境保護庁(Environmental Protection Agency:以下EPA)に提出する必要があります。


PMNには予定されている使用用途を申請することになりますが、その後、当該化学物質が異なる用途で使用されることも考えられます。

こうした新規の使用用途によって、PMNの評価の際には考慮されなかった人や環境へのばく露が増大する可能性もあります。このような化学物質の新規用途について、PMNと同様のリスク評価を行い、その物質の製造や使用を制限する規則が重要新規利用規則(Significant New Use Rule:以下SNUR)です。


SNURの特定は、以下を含むすべての関連要因を考慮して決定されます。

(A)化学物質の製造および加工の予測量。

(B)使用が人の環境または化学物質へのばく露の種類または形態を変化させる程度。

(C)使用によって人間または環境が化学物質にさらされる規模および期間が増加する程度。

(D)合理的に予想される製造方法、加工方法、商業的流通方法、化学物質の廃棄方法。


成形品については、以上の要件に基づいて、成形品や成形品カテゴリーに属する化学物質へのばく露の合理的な可能性があるとEPA長官によって認められるとき、SNURに指定されることになります。(第5条(a)(5)) 1)


SNURに該当する化学物質を製造、輸入または加工しようとする者は、その化学物質ごとに制定された要件を遵守する必要があります。その要件を遵守できない場合は製造等を開始する90 日前までに、「重要新規利用届出」(Significant New Use Notice:以下SNUN)をEPAへ届け出る必要があります。


SNUNの要件には免除(40 CFR § 721.45)2)が定められており、成形品の一部として物質を輸入または加工する者は免除されると規定されています。

つまり通常SNUR指定されている化学物質については、成形品に含まれていても上記該当者の届け出は免除されることになります。


ただし、成形品の一部として化学物質がSNUR指定されている場合は、SNUR要件としてその免除が取り消されることがあります。

例えば、水銀元素のSNUR3)においては、成形品の一部として使用されている8件の重要新規用途が記載されており、上記成形品の免除事項を特定の通知免除の一時停止または取り消しとしています。


次にTSCAにおける成形品の定義について整理します。基本的な成形品の定義は以下のようになっています。


(1)製造の過程で特定の形状またはデザインに形成されているもの。

(2)最終使用時にその形状またはデザインに依存して全体的または部分的に機能するもの。

(3)最終使用時に化学組成の変化がないか、または発生しうる組成の変化が製品の目的とは別の商業的目的を持たないもの。ただし流体や粒子は、形状やデザインに関係なく、成形品とはみなされない。


TSCAに基づいて成形品を分類するためのガイダンス4)のなかでは、成形品に該当するか否かについて製品例を用いて説明しています。

そのなかでは、変圧器(変圧器油を充填している)のように、含有する化学物質や混合物が成形品から取り除かれることを意図しておらず、成形品自体と同じ最終用途や商業目的をもっているため、成形品とみなされるとされています。


いっぽう、ペンの中のインクのように物質または混合物が1つの成形品に含まれている場合でも、成形品自体から意図的に取り除かれ、別の最終用途や商業目的をもっているものは成形品に含まれないとされています。


また、TSCAにおいてはインベントリーリセットにより、既存化学物質に優先順位付けを行い、リスク評価を行っています。

TSCAインベントリーに収載されている既存化学物質は商業的に使用されている(過去10年間に製造ならびに輸入されている)アクティブ物質と使用されていないインアクティブ物質に分類されます。EPAはアクティブ物質を高優先度物質と低優先度物質に区分し、高優先度物質は優先順位付けを行い、その優先度に従ったリスク評価が行われることになります。

そのなかで不当なリスクがあると判断された化学物質については、リスク管理措置の検討や実施が行われます。


このプロセスにおいて、健康または環境に対する不当なリスクを示さないために必要とされる範囲内で、EPAは化学物質を含む成形品や成形品のカテゴリーを禁止または制限することができるとしています。(第6条(c)(2) (E)) 5)


以上のようにTSCAにおいては、成形品に対する規制や制限が強化される可能性が考慮されます。

したがって現状では上記免除に該当する場合でも、今後は既存化学物質における成形品のSNUR指定が増加することも考えられるため、動向を注視する必要があります。


1)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/USCODE-2017-title15/pdf/USCODE-2017-title15-chap53-subchapI-sec2604.pdf

2)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2011-title40-vol31/pdf/CFR-2011-title40-vol31-part721-subpartA.pdf

3)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2018-title40-vol33/pdf/CFR-2018-title40-vol33-sec721-10068.pdf

4)

https://www.epa.gov/sites/production/files/documents/articlesfactsheetforcdr_reporting_080312.pdf

5)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/USCODE-2017-title15/pdf/USCODE-2017-title15-chap53-subchapI-sec2605.pdf

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