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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q557.TSCAの製造前届出

2020年01月31日更新

【質問】

アメリカへ化学物質の輸出を検討していますが、有害物質規制法(TSCA)ではどのような場合に製造前届出(PMN)が要求されるのでしょうか。

【回答】

有害物質規制法(TSCA)では、米国で製造、輸入される化学物質をTSCAインベントリと呼ばれるリストで管理しており、化学物質がTSCAインベントリに収載されている場合、既存化学物質とみなされます。 (自然発生で産出された化学物質はTSCAインベントリに収載されていると判断されます) 個別に規制をされている場合(下記参照)を除き、既存化学物質は自由に利用することができます。


一方、TSCAインベントリに収載されていない場合は新規化学物質とみなされ、新規化学物質を製造、輸入する場合、それらを開始する90 日前までに製造前届出(PMN)をアメリカ合衆国環境保護庁(EPA)に届出を行うことが求められています。


EPAによるPMNの審査が完了すると既存化学物質としてTSCAインベントリに登録されます。 ただし、審査時のリスク評価の結果、不当なリスクをもたらす可能性があると判断される場合、対象物資の製造、使用、流通、廃棄方法等に対して様々な制約を課したうえで利用が認められることがあります。 このような制約は重要新規利用規則(SNUR)(規則詳細はリンク先1)参照)として公布され、PMN届出者以外の第三者にも同等の義務を課すことになります。 その要件を遵守できない場合は、対象物質の製造等を開始する90日前までに重要新規利用届出(SNUN)をEPAへ提出する必要があります。


TSCAインベントリはEPAのウェブサイト内のアクセスガイド2)より確認することができます。 そのなかでは物質収載リストのダウンロード方法や用語の案内、物質登録サービス(SRS)による検索等、TSCAインベントリにおける物質の確認方法について説明されています。


ただし、化学物質がTSCAインベントリに収載されていない場合でも、すべてにおいてPMNの届出が要求されるわけではありません。 EPAのウェブサイト内では、そのような例外的な条件に関してフローチャート3)を用いて説明されています。


まず、TSCAの定義する化学物質に該当しない場合には、PMNの届出は要求されません。 具体的には以下に分類される物質は他の連邦法の管轄下にあり、それぞれの法律によって規制を受けるため、化学物質には含まれないと説明されています。


・薬剤

・タバコ

・核物質

・弾薬

・食品添加物

・化粧品

・農薬のためだけに使用される物質


つぎに、通知要件の対象ではない化学物質4)についても規定されており、以下のような物質が該当します。


・輸出専用に製造される化学物質

・偶発的に反応した生成物

・最終用途で反応した生成物

・混合物(混合成分ではない)

・不純物

・副産物

・非分離中間体

・成形品の製造中に形成される物質


さらに、PMNの通知免除規定のなかには、免除届出や通知、文書記録等を要求される場合があります。 化学物質の生産量や放出(ばく露)量によりPMNが免除される場合については、年間10トン以下の量で製造される化学物質(LVE)、環境への放出が少なく、人体へのばく露が少ない化学物質(LoREX)が規定されています。 5)これらが適用されるためには、物質の製造を行う30日前までに免除届出の提出が必要となります。


使用用途によりPMNが免除される場合ついては、テストマーケティングのみを目的として製造または輸入される化学物質(TME)、研究開発のみを目的として少量で製造または輸入される化学物質が規定されています。 6) TMEは物質の製造や輸入を行う45日前までに免除届出を提出することが求められています。 研究開発に関する免除については、免除届出は要求されません。 ただし研究開発に携わるすべて人に対して、当該物質におけるばく露時の有害性や健康上のリスク等の通知を行うことが求められます。


また、ポリマーについての免除も規定されています。 7) ポリマー免除規則は、低リスクのポリマーを特定するための新しい基準に基づき、1995年に修正され、免除の対象となるポリマーの範囲が拡大されました。 ポリマー免除では、事前の免除届出は要求されませんが、規定に従って製造または輸入を開始した場合、翌年の1 月31日までに年次報告書を提出することが求められています。


以上のようにTSCAにおいては、様々なPMNの免除規定が定められています。 そのため、アメリカへの輸出を検討する場合、自社製品がPMNの届出対象となるかどうかについては正確に判断をする必要があります。 そのうえで免除規定に該当すると判断できる場合は、各規定における届出、通知、文書記録の保管等の要件を確認することが重要です。


また、2016年の改正により、TSCAインベントリに収載されている既存化学物質は、アクティブとインアクティブに識別されることになりました。 8)アクティブ指定の物質は商業的に利用されていると確認されており、物質の使用に際して通知を行う必要はありません。 インアクティブ指定の物質は長期に利用されていないと認められる物質であり、物質の使用前にEPAへ通知を行い、アクティブ指定に変更することが求められます。 このように法改正に伴う新たな手続きが発生することもあるため、改正動向に注目することも肝要です。


1)

https://www.law.cornell.edu/cfr/text/40/part-721

2)

https://www.epa.gov/tsca-inventory/how-access-tsca-inventory

3)

https://www.epa.gov/reviewing-new-chemicals-under-toxic-substances-control-act-tsca/basic-information-review-new#who%20notifies

4)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2011-title40-vol31/pdf/CFR-2011-title40-vol31-sec720-30.pdf

5)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2011-title40-vol31/pdf/CFR-2011-title40-vol31-part723.pdf

6)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2014-title40-vol31/pdf/CFR-2014-title40-vol31-sec720-36.pdf

7)

https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2012-title40-vol32/pdf/CFR-2012-title40-vol32-sec723-250.pdf

8)

https://www.regulations.gov/document?D=EPA-HQ-OPPT-2016-0426-0070

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