当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • tkk-lab

Q558.使い捨てカイロは成形品になるのか

2020年02月22日更新

【質問】 使い捨てカイロは成形品として対応を考える必要があるのでしょうか。教えてください。

【回答】 REACH規則では成形品を「生産時に与えられる特定な形状、表面、デザインが、その化学組成よりも大きく機能を決定する物体」と定義しています(第3条)。 そのため、検討対象となる物体の機能を特定することが判断のスタート点となり、次に、その機能が化学組成に依存するものなのか、特定の形状に依存するものなのかを考えていくことになります。


その検討においてはECHAが提供している「成形品中の物質への要求事項に関するガイダンス(第4版)」1)中に示されている以下の判断基準が参考になります。


Step 1: 機能を特定する

Step 2: 形状、表面、デザインが化学組成よりもより機能に影響するか?

はい … 成形品である

いいえ… 物質/混合物である

明確に判断ができない… Step 3に進む

Step 3:

物体から分離する物質/混合物を有しているか?

はい … Step 4の質問をチェック

いいえ… Step 6の質問をチェック

Step 4:

a~cの過半がはい …物質/混合物を含む成形品

a~cの過半がいいえ…Step 5に進む

a.対象物から分離しても物質/混合物は原則として機能は実行できるか?

b.対象物は放出、運搬するための容器/担体としての機能を有するか?

c.物質/混合物が消費(使用や化学変化)された結果、対象物の使用寿命は終わるか?

Step 5:

a~cの過半がはい …成形品

a~cの過半がいいえ…物質/混合物を含む成形品

a.物質/混合物が分離されると対象物は意図する機能が果たせないか?

b.対象物の主目的は物質/混合物を運搬すること以外のことか?

c.対象物は使用寿命経過時点で物質/混合物とともに廃棄されるか?

Step 6:

a~dの過半がはい …成形品

a~dの過半がいいえ…物質/混合物

a.対象物は後工程での処理用途以外の機能(最終製品としての機能)を有するか? 

b.市場で販売され、顧客は主にその形状/表面/デザインに興味を持ち購入するか?

c.後工程での処理は大きく形状を変えない軽微なものか?

d.後工程での処理ののちも対象物の化学組成は同じままか?


ご質問の使い捨てカイロの場合、以下のプロセスで「物質/混合物を含む成形品」であると考えます。


Step 1: 機能は発熱によって適切な「暖」を提供することである

Step 2: はい/いいえが明確に判断できない


発熱は内容物の化学反応で生じますので、明らかに化学組成が機能に関係しています。 一方、発熱量や発熱時間をコントロールするためにパッケージングすることで使い捨てカイロとして機能させています。 パッケージデザインが機能を担保していると見ることもできます。


Step 3: はい

Step 4: 過半がいいえ

a.いいえ 袋から分離しても内容物は発熱しますが、適切な「暖」を提供することは不可能です。

b.いいえ 袋は内容物を放出、運搬するための容器/担体ではありません。

c.はい 内容物の化学反応が終了した時に使用寿命が終了します。

Step 5: 過半がはい

a.はい 物質/混合物が分離されると、適切な「暖」を提供する機能が果たせません。

b.はい 主目的は、発熱によって適切な「暖」を提供することであり、物質/混合物を運搬すること以外のことです。

c.はい 使用寿命経過時点で物質/混合物とともに廃棄されます。


これらの結果から、ご質問の使い捨てカイロでは、「成形品」としての対応が必要であると考えます。


1)https://echa.europa.eu/documents/10162/23036412/articles_en.pdf

361回の閲覧

最新記事

すべて表示

Q608.工業用途の混合物のEU毒物センターへの届出制度について

2021年09月17日更新 【質問】 工業用途の混合物のEU毒物センターへの届出制度について質問があります。 混合物の組成、含有率を非公開にしたく、混合物の組成に関する情報提供は、EU向けSDSに記載されている物質の情報のみでよいでしょうか。 【回答】 SDSの目的は化学物質を安全に取り扱い、事故や災害を未然に防止することです。 そのため、受領者が物質や混合物等の化学品の有害性を容易に特定できるも

Q607.塗料や接着剤を使用している製品の化審法適用対象について

2021年09月03日更新 【質問】 当社は産業用機器のメーカーで、製品には塗料や接着剤が使用されていますが、当社は化審法の対象となるのでしょうか。 それとも材料メーカーが対象となるのでしょうか。 【回答】 ◆化審法の義務 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、化審法)(1)の適用範囲は次のようになっており、貴社のように製品に塗料や接着剤を使用する場合、適用対象外になると考えられます。

Q606.EUのPBT規制の動向について

2021年08月27日更新 【質問】 EUのPBT規制の動向を教えてください。 【回答】 1.PBT規制とは 「PBT」は、難分解性(persistent)、高蓄積性(bioaccumulative)、毒性(toxic)の略語です。PBTがある化学物質を規制する仕組みが、「PBT規制」です。また、「vPvB」とは、「とても難分解性(vP)で、とても高蓄積性(vB)」です。 PBTの概念は、2001