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Q560.成形品でばく露保護している場合の情報伝達
2020年03月27日更新
【質問】 成形品にCLSを使用していますが、ばく露しないように保護をしています。このような場合には、届出や情報伝達の義務はないと考えていいのでしょうか。
【回答】 ご質問の届出や情報伝達の義務はREACH規則の第7条(届出の義務)、第33条(情報伝達の義務)にそれぞれ規定があります。 その中で届出の義務については第7条の3項に以下のような規定があります。
第7条3項
生産者または輸入者が、廃棄を含む通常または合理的に予見可能な使用条件において、人間または環境へのばく露を除外できる場合、ECHAへの届出義務は適用されない。 届出義務を適用しない場合、生産者または輸入者は、成形品の受取人に適切な情報を提供しなければならない。
この規定によると貴社の成形品中に含まれるCLSのばく露に対する保護が適切に実施されている場合、届出の義務は免除されると考えられます。
ただし、届出の義務を免除した場合、成形品の受取人に対しては、取扱説明書などで十分な情報を提供することが要求されています。
一方で、情報伝達の義務を規定する第33条では第7条3項に相当するような条文が見あたりません。 よって、情報伝達の義務はCLSのばく露に対する保護がなされている場合であっても発生します。
以下に、それぞれについて述べていきます。
◆届出の義務について
貴社が取り扱う成形品に第7条3項を適用すれば、届出の義務は免除されます。(第7条6項の適用除外に該当するすでに登録されている物質は除く)
届出義務がないとして免除する場合には、「成形品の要求事項に関するガイダンス(第4版)(1)」内の3.3.2項「ばく露の除外に基づく免除」の記載を確認しておく必要があります。 ガイダンスの記載によると、CLSのばく露が回避されていることは、生産者/輸入者が証明できるようにするとしています。
したがって、貴社が成形品中のCLSについて保護によりばく露しないとして届出義務を免除する場合、廃棄を含む製品ライフサイクル全般において、破損などによるCLSのばく露が発生しないことについて、文書化などで証明できるようにしておく必要があります。
届出義務の免除に関する情報収集は、第7条に従って届出することよりも時間や労力がかかる場合があります。 届出義務がないとして免除の利用する場合、貴社として上記の内容を踏まえて判断する必要があると思われます。
◆情報伝達の義務について
先述の通り、CLSがばく露しないよう保護している場合であっても、サプライチェーン内の関係者へは、成形品の安全な使用のために、予見可能な使用方法に応じた情報伝達が求められます。
ただし、情報伝達の内容については、ばく露のリスクに応じてケースバイケースで判断できるとされています。 例えば、保護などにより環境などへのばく露が発生しない場合や影響がほとんどないという証拠を示せる場合、ばく露のリスクが小さいと判断できるため、伝達する情報に関しては、物質の名称程度でよいとされています。
CLSのばく露が保護された成形品は、ばく露がないとして届出義務の免除を適用することが可能です。 ただし、貴社としてばく露が発生しないことの証明や取扱説明書の提供などの対応が必要となります。
また、情報伝達の義務については、伝達する情報量に検討の余地があるものの、義務自体を免除することはできないとされています。
上記を踏まえ、どのように対応することが貴社として適切か判断する必要があるように思えます。
(1) https://echa.europa.eu/documents/10162/23036412/articles_en.pdf