当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • tkk-lab

Q567.営業秘密を理由に製品含有化学物質調査の回答を拒否された場合の対応について

2020年06月15日更新

【質問】 EUに混合物を輸出しています。

販売先から製品含有化学物質の調査依頼がありました。 材料の購入先に対して含有化学物質の調査を依頼したところ営業秘密を理由に回答を拒否されてしまいました。 このままでは販売先に回答できません。 どうすれば良いでしょうか。

なお製品のEUへの輸出量は年間1トン未満です。

【回答】

EUへの混合物の輸出量が年間1トン未満の場合でREACH規則の登録の義務がない場合でも、生じる以下の義務があります。

(a)SDSの提供義務

 物質または混合物が下記要件に該当ずる場合には数量に関係なく、SDSを川下企業に提供する必要があります(REACH規則第31条)。


1)物質または混合物がCLP規則に従って危険と分類された場合

2)REACH規則附属書XIIIのPBT、vPvBの基準に適合する物質、または

これらの物質を含む混合物の場合

3)1)あるいは2)以外の理由で認可候補物質リストに記載された(CLS

となった)場合

また、上記1)に分類されない混合物であっても、以下の要件に該当する場

合は、川下企業からの要求があればSDSを提供する必要があります。

4)人の健康または環境に有害な少なくとも1つの物質を、1wt%以上含ん

でいる場合(気体の場合は0.2wt%以上)

5)少なくとも1つのPBT、vPvBを0.1wt%以上含んでいる場合(気体の

場合は除く)

6)CLSを0.1wt%以上含んでいる場合

7)EU域内の作業所のばく露限界値がある場合

(b)分類、届け出義務

以下に該当する物質または混合物中の物質は、分類、届け出の義務があります(CLP規則第25条、第39条)。


1)危険有害性があると判断された場合

2)CLP規則第11条および附属書Iの1.1.2.2、附属書VIの表3に指定さ

れている物質で、混合物中に濃度限界値以上の濃度で含有している物質(た

だし、混合物全体で危険有害性に指定されない場合、届出は不要)

ここでSDSの構成は、REACH規則附属書IIセクション3:組成/成分に関する情報の「3.2混合物」にあります。 SDSへの記載事項として製品識別子、濃度または濃度範囲、および分類を必要とされています。 また、CLP規則の基準を満たす混合物については、物質名と、混合物中のその物質の濃度または濃度範囲とが、共に表示されなければならないとされています。


同様に、JIS Z 7253の附属書DのD.4項目3「組成および成分情報」では、混合物の場合は組成の全部を記載する必要はなく、JIS Z 7252で規定される混合物のGHS分類基準に基づき危険有害性があると判断し、かつ濃度限界以上含有する場合は、その危険有害性区分の分類根拠となった成分の化学名または一般名、および濃度または濃度範囲を記載することが望ましいと記載されています1)。


一方、営業秘密について、以下の条件を共に満たす場合には、混合物中の物質の製造者、輸入者または川下企業は、安全上最も重要な化学官能基を特定できる化学名もしくは申請の際に指定した代替化学名を、混合物の当該物質の化学名として使用できることをECHAに要請しても良いとされています(CLP規則第24条)。


 ・物質がCLP規則附属書IのパートIに定められた基準を満たすこと

 ・当該物質の化学特性がラベルまたはSDSで開示されることで知的財産権が危うくなることを証明できること

上記より、貴社ははじめに販売先から含有化学物質の調査の依頼がある物質または混合物について、営業秘密にできる条件に該当するかを確認します。


次に、材料購入先にGHS分類基準に基づき危険有害性がある物質を含むかなどを確認し、含有している場合には物質名(一般名も可能)と濃度または濃度範囲の情報開示を求めます。

ご質問への回答は以上ですが、混合物に混ぜる購入材料が混合物の場合には、「Mixture in Mixture(MiM)」として、その対応についてECHAの質問サイト2)が参考になります。

質問)他の供給者からの無害な混合物を使用して混合物を調合しています。提出にあたり、この混合物(私のMiM)の組成情報を取得するにはどうすればよいでしょうか?

回答)サプライチェーンで良好なコニュニケーションを確立することが重要な要素です。 供給者に組成情報を要求するか、供給者が自主的に提出した場合は、代替えとしてUFIを提供することもできます。 いずれの場合も、主成分に関する名前やCAS番号など、組成に関する情報が必要です。 また、自主で通知された非危険混合物のラベルにUFIを付けることも任意で行います。

ここでUFI(Unique Formula Identifier)は、混合物を識別する追加の情報要件の手段としてラベルに印刷または貼り付けられる一意の16桁の英数字コードで、CLP規則の附属書VIII追加草案に記載されています(参考:Guidance on harmonised information relating to emergency health response –Annex VIII to CLP:Draft (Public) Version 1.0、March 2018)。


上記の質問/回答のようにMiMの対応では、サプライチェーン内でのコミュニケーションの充実を図り、供給者に主成分に関する名前やCAS番号など、組成に関する情報を要求します。 営業秘密を保持したい混合物の対応としては非危険混合物である旨のUFIを添付するなども記載されており参考となります。


1) https://www.jisc.go.jp/pdfa3/PDFView/ShowPDF/iAAAAFpHB3fIpWbwdzrj

2) https://poisoncentres.echa.europa.eu/questions-and-answers

878回の閲覧

最新記事

すべて表示

Q578.PFOAの適用除外について

2020年10月16日更新 【質問】 弊社はフッ素ゴム製のシール部品を製造しています。 REACH規制の条文には、PFOA 25ppbを超過するものは、上市を制限するとしていますが、炭素6個以下のフルオロケミカル製造時の副生成されるPFOAは適用除外と聞いています。 規制の対象外であることを、申請する必要等はあるでしょう。 【回答】 PFOAとはペルフルオロオクタン酸(Per Fluoro Oct

Q577.中国のVOC規制について

2020年10月09日更新 【質問】 中国産の接着剤を輸入し、日本にて製品に使用して、その製品(成形品)を中国へ輸出しています。 その製品は中国国内で使用されています。 この場合に、中国VOC規制に抵触するでしょうか。 【回答】 中国において、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)は、GB/T 5206-2015 塗料とワニスの用語と定義にて「常温常圧下で

Q575.EU離脱後のイギリスにおけるREACH規則の登録義務について

2020年09月25日更新(2020年10月12日修正) 【質問】 イギリスに化学物質を輸出していますイギリスはEUより離脱しましたが、REACH規則による登録手続がどうなるか教えて下さい。 【回答】 イギリスは2020年1月31日にEUを離脱しました。 2020年末までは移行期間となり、イギリスとEUは通商を含む将来関係の交渉フェーズとなっています。 1.2021年12月31日まで(移行期間)

© 2011-2019  一般社団法人東京環境経営研究所

  • Facebook - White Circle
  • YouTube - White Circle
  • アマゾン - ホワイト丸