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Q570.Prop65の警告表示について
2020年07月10日更新
【質問】 カリフォルニア州 に弊社製品を輸出することになりました。 弊社製品中にThe Prop65 Listに収載されている物質を低濃度で含有していますが、必ず警告表示を行う必要はあるのでしょうか。
【回答】 The Prop 65 List1)に収載されている物質を含有する製品をカリフォルニアに輸出する場合には、このリストに記載されている当該物質のばく露量がセーフハーバーレベル(ばく露によるリスクが十分に低いといえるばく露量)を超える場合に警告表示の義務が生じます。
このばく露量については、製品によってどのように使用されるかは製造者でないとわからないため、製造者自らが自社製品のばく露量を確認して、セーフハーバーレベル以下であることを評価する義務があります。 その際には、通常の使用方法だけでなく考えられる様々な場面を想定する必要があり、例えば玩具であれば子供が口に入れる場合を想定し、その際にどの程度当該物質が溶出するかなども考慮する必要があります。 また、取扱説明書などで正しい使用方法や使用制限事項を記載することも必要となります。
貴社の製品の当該物質がセーフハーバーレベル以下であることを確認する手法は以下が考えられます。
(i) 輸入者と相談し、現地の弁護士に依頼して過去の判例等を調べてもらい対応を考える
(ii) 専門家に依頼してばく露量を見積もる
(iii) カリフォルニア州環境保護庁環境保健有害性評価部 (OEHHA)に安全使用判定(SUD)を要求する
(i)については、米国は判例主義なので、和解判決などが判断の根拠となります。 60日間違反通知(警告要件に違反していると民間の関係者から製造業者に申し立てる60日間の予告法的文書)2)、裁判による和解、裁判外での和解は公開されていて、2016年以降は検索可能です。 また、司法長官のProp65に関る書簡や和解に関する書簡3)も公開されています。
(ii)については分析、評価の手順が大変複雑ですので、Prop65 FAQsでは専門家(Licensed Professional)に依頼することが求められています4)。 国内でこうしたサービスを提供している企業が存在しています。
(iii)については、SUD要求者はOEHHAから以下の資料、情報等の提出を求められます5)。
・関連する事実、データ、情報
・活動に対する企業理由の記述
・製品、活動の詳細な記述
・要求に関する契約書、同意書、説明書、報告書、データ等のコピー
・払戻されない手数料 (1,000ドル) 等々
SUD要求が認められた場合はセーフハーバーナンバーが与えられ、ばく露がセーフハーバーナンバーを超えない場合には警告表示が免除されます。
以上の結果、貴社の製品の当該物質ばく露量がセーフハーバーレベルを超えている場合には警告表示を行う必要があります。 セーフハーバーレベルを超えている場合はもちろん、ばく露量の評価を行わないまま警告表示を行わなかった場合は訴追のリスクがあります。 米国では公益を代表する誰でも違反者を提訴することが可能なため、賠償金目当ての訴訟ラッシュが起きており、事前の適切な対応が求められます。
セーフハーバーレベルはリスト中の全ての物質に設定されているわけではありません。 セーフハーバーレベルが設定されていない物質を使用している場合にも対応としては同様になります。 (iii)のOEHHAに対するSUDの要求も、セーフハーバーレベルの設定がない物質に対しても行うことが出来ます。
なお、The Prop65 Listは毎年改訂されていますので、対応の検討には最新の情報の確認が必要です。 また、Prop65以外にも、含有物質や用途によっては、CPSIA (消費者製品安全性改善法)、TSCA (有害化学物質規制法)、FDA (アメリカ食品医薬品局) 等の規制にも対応する必要があります。
(参考サイト)
1)The Prop 65 List
https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-list
2)Annual report of settlements
https://oag.ca.gov/prop65/annual-settlement-reports
3)Attorney General Letters
https://oag.ca.gov/prop65/ag-letters
4)Prop65 FAQs
https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-faqs
5)Prop65 SUD Process
https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-safe-use-determination-sud-process