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Q572.REACH規則におけるフタル酸エステルの規制内容について
【質問】
当社はEUに複数のフタル酸エステル類を含有した製品(成形品)を輸出しています。 2020年7月7日以降フタル酸エステルの4物質(DEHP、DBP、BBP 、DIBP)が0.1wt%以上含有する場合にREACH規制の対象となりますが、複数のフタル酸エステルが含有している場合、濃度を合計しなくてはならないのでしょうか。 分母をどう設定すれば良いのかを含めて教えて下さい。
【回答】
ご質問の内容については、委員会規則 (EU) 2018/2005「DEHP、DBP、BBP、DIBPに関するREACH規則附属書ⅩⅤIIエントリー51改正」1)に以下の記載があります。
「4種のフタル酸エステルを1種類または任意の組み合わせで0.1wt%以上含有する成形品は上市できない。」
任意の組み合わせとあるため、フタル酸エステルの4物質は合計して含有量を計算します。
また、濃度計算の「分母」は「成形品」とされているため、「成形品に含まれる物質に関する要求事項についてのガイダンス(第4版)」2)を参考に成形品の範囲について判断し分母を設定する必要があります。
(i) REACH規則附属書ⅩⅤII(エントリー51)の内容について
エントリー51の3項にて成形品に関する規制が記載されています。
4項に、3項の適用除外として以下の用途で使用する成形品をあげています。
・人間の粘膜や皮膚と長時間接触しない工業用または農業用、または屋外でのみ使用する成形品
・2024年1月7日より前に上市された航空機または航空機の安全性と耐空性を確保するために航空機のメンテナンスや修理に限定して使用する成形品
・2024年1月7日より前に上市された指令2007/46 / ECの範囲内の自動車または自動車の正常な動作に不可欠でメンテナンスまたは修理に限定して使用する成形品
・実験室用の測定装置またはその部品
・RoHS(Ⅱ)指令で規制される電気電子機器や、食品包装材、医療機器、医薬品など他の法規制により制限を受ける用途で使用する場合
・2020年7月7日より前に上市された成形品
貴社においてはフタル酸エステルの4物質の含有とその対応について、自社の取り扱う製品(成形品)の使用状況を把握しながら、適用除外や他の法規制による制限などを考慮していく必要があります。
(ii)分母の設定について
分母となる成形品は、製造プロセスにおいて与えられる特定の形状・表面・デザインが機能を発揮する上で化学組成よりも主要な役割を果たすものを指します。
貴社が取り扱う製品が複数の成形品で構成されている場合、その製品は「複雑な成形品」となります。 「複雑な成形品」については、複数の成形品が製造プロセスを経た後も成形品の定義を維持している場合、それぞれを成形品として法規制の適用を行うとされています。 したがって、分母の設定は製品を構成するそれぞれの成形品について行います。
成形品同士の接合方法などによって設定する分母が異なる場合など様々なケースが想定されるため、より詳細な内容については「成形品に含まれる物質に関する要求事項についてのガイダンス(第4版)」またはQ5523)の内容などを確認することをお勧めします。
また、例えば製品の用途がRoHS(Ⅱ)指令の適用範囲となる場合、先述した通りREACH規則附属書ⅩⅤIIエントリー51は適用除外となります。この際の分母はRoHS(Ⅱ)指令第3条20項で定義する「均質材料」となり、分子はフタル酸エステル4物質の個別含有量となります。 このように適用する法規制が変わるとREACH規則を適用する場合と異なる判断となることがあるため、注意が必要です。
1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32018R2005