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Q577.中国のVOC規制について
2020年10月09日更新
【質問】
中国産の接着剤を輸入し、日本にて製品に使用して、その製品(成形品)を中国へ輸出しています。 その製品は中国国内で使用されています。 この場合に、中国VOC規制に抵触するでしょうか。
【回答】
中国において、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)は、GB/T 5206-2015 塗料とワニスの用語と定義にて「常温常圧下で、自然に蒸発する可能性のある液体または固体有機化合物」とされています。 このVOCに対する規制に関して、2020年3月4日に、塗料・インク・接着剤等の製品に含有されるVOCなどの有害物質の制限量に対する7件の国家強制標準(GB規格)が告示されました。 中国に輸入される塗料・インク・接着剤にも同様に適用されます。 制定の背景を含め、7件の強制標準の概要は、本サイトのREACHコラム(8月26日)で紹介しています1)。
接着剤に対しては、GB33372-2020:接着剤の揮発性有機化合物(VOC)の制限量(以下、本強制標準)が告示され、2020年12月1日から適用されます2)3)。 現行の推奨標準GB/T33372-2016からの置き換えとなり4)、規制が強化されます。
本強制標準の内容は、接着剤のタイプ(溶剤型・水性型・固形型)別に、建築用・内装用・家具用など用途ごとにVOC量の上限を設定しています。 トルエン、1,2ジクロロエタン、ベンゼン類や炭化水素類などといった個々の物質および物質群に対する規制ではなく、含有する総VOC量を規制しています。 なお、第1項に、適用除外される接着剤の種類や容量の規定があります。 また、附属書AからEで、接着剤のタイプ別にVOC含有量の測定方法を規定しています。
ご質問の製品は成形品であり、中国製接着剤を使用していますが接着剤そのものではないので、中国に輸出されて使用されても本強制標準は適用されません。
中国におけるVOC削減の方針として、生態環境部が2019年6月26日に告示した「主要産業における揮発性有機物(VOC)の包括的な管理プログラムの発行に関する通知」5)の中で、「VOCの発生源からVOCを低減させる」ことを強力に推進しています。 原料を低VOC化することで、それらを使用する製造工程からの発生量を抑え、VOC量を抑制させる方針です。 低VOC含有量の接着剤やインク等への転換と使用が強く求められています。
上流工程から規制して目標を達成する通知の方針に対して、サプライチェーン内での情報伝達は有用です。 VOC物質に限らず製品の含有化学物質に関して、情報ツール等を活用して効率的かつ確実な情報交換を行うことで、新たな規制に対しても適切な対応が可能となります。 日頃からサプライチェーン内での信頼関係を醸成して行くことは重要です。
なお、本強制標準と同時に告示された塗料・洗浄剤等に対する強制標準においては、VOC量に加えて、重金属類(鉛、カドミウム、六価クロム、水銀)やホルムアルデヒドなど特定の揮発性有害物質を規制しています1)。 種類や対象用途によって、適用除外や特定の揮発性有害物質の種類及び規制値が定められています。 例えば、GB30981-2020 工業用保護塗料の有害物質の制限量では、塗料中の重金属類の基準や含有量測定方法も規定されています6)。
これらの強制標準も、塗料や洗浄剤そのものに対する規制であり、それらを使用した成形品には適用されていません。
但し、例えば電気電子製品の場合、塗料に含まれていた重金属類が成形品に残っていれば、中国RoHS(II)等の他の規制に抵触する可能性がありますので注意が必要です。
1) https://www.tkk-lab.jp/post/reach20200826
2) http://xdz.xa.gov.cn/ztzl/hjbh/stgysfyq/qjsc/5f56f6c6fd850845e6f979e7.html
3) https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5663_00_x.pdf (WTO通報版)
4) http://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/newGbInfo?hcno=60F7D824D35F67C3D100FA2EB3A5A51A
5) http://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk03/201907/t20190703_708395.html
6) https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_5664_00_x.pdf