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Q578.PFOAの適用除外について
2020年10月16日更新
【質問】
弊社はフッ素ゴム製のシール部品を製造しています。
REACH規制の条文には、PFOA 25ppbを超過するものは、上市を制限するとしていますが、炭素6個以下のフルオロケミカル製造時の副生成されるPFOAは適用除外と聞いています。
規制の対象外であることを、申請する必要等はあるでしょう。
【回答】
PFOAとはペルフルオロオクタン酸(Per Fluoro Octanoic Acid)の略称で、有機フッ素化合物の一種です。親水性(水になじむ性質)と親油性(油になじむ性質)の両方をもつことから界面活性剤としての機能を有し、撥水剤、撥油剤、消火剤、フォトレジスト、塗料などに幅広く利用されています。 家庭で使用するテフロン加工のフライパンなどにも利用されてきました。
REACH規則ではPFOAとその塩、及び化学式C7F15が別の炭素原子に直接結合した直鎖または分岐ペルフルオロヘプチル基を有する任意の関連物質(その塩およびポリマーを含む)が制限物質リスト(附属書XⅦ)に収載され、製造および上市が禁止されました。
PFOAは附属書XⅦのエントリ68(1)に収載されており、以下の制限条件が明記されています。
(1)2020年7月4日から,物質として製造又は上市してはならない
(2)2020年7月4日から,以下での製造での使用,上市してはならない
(a)他の物質の成分
(b)混合物
(c)成形品
濃度は,PFOAとその塩で25ppb以上,又はPFOA関連物質で1000ppb以上
(3)下記は(1)及び(2)の適用が以下の時期からとなる
(a)2022年7月4日
・半導体製造で利用される装置
・ラテックスインク
(b)2023年7月4日
・作業員の健康と安全を守る為の繊維
・医療用繊維,水処理の濾過,製造プロセス及び排水処理で利用される膜
・プラズマナノコーティング
(c)2032年7月4日
・医療機器指令93/42/EECに適合した植込み型以外の医療機器
(4)適用除外項目(詳細は原文(1)参照)
ご質問の通り、附属書XⅦエントリ68 4項(b)で「6原子以下の炭素鎖を有するフッ素化合物(フルオロケミカル)の製造時に不可避の副産物として生じるPFOA等の対象物質」は適用除外となっています。
REACH規則では認可対象物質を使用・上市する場合の「認可」の申請や、成形品に規定値以上にCL物質が含まれている場合には、「届出」が要求されますが、附属書XⅦに収載される制限対象物質は、それぞれの物質の制限条件に抵触しなければ使用可能です。
製造者である貴社が制限の適用除外であることを確認できる場合には要求事項は無く、あらためてその事実を申請する義務はありません。
しかし、REACH規則では物質のリスク管理は製造者または輸入者の責任であるとしており、川下ユーザーとその先の使用者を含むサプライチェーン全体に対する情報伝達の履行を求めています。
つまり制限の適用除外になる成形品をEU域内に輸出する場合であっても、貴社製品の輸入者には情報伝達義務が発生することになります。
そのため、川下のユーザーから情報提供を求められた場合には、安全性データシート(SDS)等により認可の有無、制限についての情報などを伝達する必要があります。
以上より、貴社が製造する部品(成型品)に含まれるPFOAが、適用除外の対象となることを証明するための情報をとりまとめておくことをお勧めします。
PFOAなど有機フッ素化合物は安定性が非常に高いため、環境中で分解しにくく、生体内にも蓄積することなどから、2019年4月29日~5月10日の残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)の締約国会議(COP9)で、PFOAとその塩、及びPFOA関連物質が同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定されました。
また、それに伴いREACH規則附属書XⅦエントリ 68の規制は削除され、規則2019/1021(EU POPs規則)に移動します。(2020年1月10日コラム(2)、2019年12月16日のコラム(3)参照)
このように、制限条件などは不定期に改正される可能性がありますので、欧州化学品庁(ECHA)のウェブサイトなどで最新情報を収集する必要があります。
参考資料
(1)REACH規則附属書XⅦエントリ68(原文)
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32017R1000&qid=1498182184866&from=EN
(2) PFOA(ペルフルオロオクタン酸)規制の動向
(一般社団法人東京環境経営研究所 2020年1月10日コラム)
https://www.tkk-lab.jp/post/reach20200110
(3) EU POPs規則附属書Ⅰへの物質追加の動向について
(一般社団法人東京環境経営研究所 2019年12月16日コラム)