当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q586.EU域内を経由した場合のSCIP登録義務について

2021年01月21日更新

【質問】

当社はEU域内を経由してEU域外に製品(成形品)を輸出しています。 その際でもSCIP情報登録義務は発生するのでしょうか。

【回答】

2021年1月5日からEU市場で0.1重量(wt)%を超える濃度でREACH規則のCLS(substances of very high concern (SVHCs) on the Candidate List.)を含有する成形品を「上市」する企業は、これらの成形品に関する情報をECHAが管理するSCIPデータベースに登録する義務が発生します。


SCIPデータベースは、廃棄物フレームワーク指令2008/98/EC(2018/851/EU(WFD)に基づいて確立された成形品自体または複雑なオブジェクト(製品)に含まれる懸念物質(SVHC)に関する情報のデータベースですが、SCIP データベースへの登録義務は、REACH規則とWFDが連関した規制です。


具体的には、REACH規則は第33条により、成形品中にCLSを0.1wt%以上含有していれば、「物質名と安全取扱情報」を提供しなくてはならないとされているのに加え、WFD第9条(廃棄物の発生抑制)では「REACH規則第33条の情報提供を保証する」としています。詳細は2020年10月17日付コラム1)を参照ください。


REACH規則2)序文(10)では「再輸出及び通過の目的で、税関の監視下にある物質で暫定的に保管されているもの及び免税区域又は無税の保税倉庫にあるものは、本規則の意図する範囲においては取り扱われず、従って本規則の適用範囲から除外すべきである。鉄道、道路、内陸水路、海路又は空路による危険な物質や危険な調剤の輸送もまた、特定の法規が既にそのような輸送に適用されていることから、その適用範囲から除外すべきである」と記述されています。


したがいまして、貴社製品がEU域内に上市される可能性が無く、物流の経由地としてEU域内を通過するだけの場合には、REACH規則は適用されないことになり、SCIP情報登録義務は発生しないと考えます。


他方、EU域内の輸入者が貴社製品を輸入する手続きを行い、それを改めてEU域外に輸出する場合には、適用除外とは一概に判断できないと思われます。 貴社製品を輸出される商流や取引方法などを把握され、川下の顧客や物流会社などからのSCIP情報提供要求の有無を確認されることをお勧めします。


また、EU域内を経由した最終輸出先の各国における化学物質規制に対応するための情報提供の準備は必要になると思います。 各国の法規制の情報を収集し、それに対応するための情報を川上のサプライヤーから収集するなど、タイムリーに情報提供できる準備をされることが望ましいと考えます。


なお、WFDはREACHのように加盟各国に直接適用される「規則」とは違い「指令」であるため、TFEU(欧州連合の機能に関する条約)の第192条により、加盟各国は自国の事情を加味し、既存の法律に組み込む場合があります。 


例えば、ドイツの場合では「循環経済を促進し、環境に適合した廃棄物の管理を保護するための 法律」Kreislaufwirtschaftsgesetz (KrWG)3)という既存の国内法にWFDの規定を組み込んでいます。


KrWGの第1条2項では「WFD(EU)2018/851の修正後の2008/98/EC)の目的を達成する(WFDに準拠する)」ことが明記されています。 また、7条aはWFDにより追加された条項で、Chemikalien- und Produktrechts (化学物質と製品法)の要件に合わせるとしています。 加えて「化学物質と製品法」の要件が16条fとして追加され、サプライヤーの義務としてWFD第9条の規定にしたがって情報提供すること(SCIP条項)が規定されています。KrWGはWFDの内容を反映した改正版を2020年10月29日より発効しているようです。


また、フランスでは「廃棄物と循環経済の対応に関する法律(2020年2月10日)」4)という国内法の第125条でWFDに準拠することを明記しています。 


上述の通り加盟国ごとにSCIP情報登録が規定されていますが、SCIP情報登録は原則としてEU域内のサプライヤー(日本から輸出する場合には各加盟国の輸入者)ごとに登録が必要とされています。 しかし、簡易SCIP情報提出(Simplified SCIP notification (SSN))という制度を活用し、他のサプライヤーが情報登録した際に発行されたSCIP番号を使って、同一製品を簡易的に登録できる場合もあります。 詳しくは2020年12月11日掲載コラム5)をご参照ください。


(1) 2020年10月17日掲載コラム

 「2021年1月から義務化される SCIP データベースの登録について」

https://www.tkk-lab.jp/post/20201016reach


(2)環境省REACH規則(和訳)文書類

https://www.env.go.jp/chemi/reach/reach.html


(3)ドイツ「循環経済を促進し、環境に適合した廃棄物の管理を保護するための 法律」Kreislaufwirtschaftsgesetz (KrWG)

http://www.gesetze-im-internet.de/krwg/BJNR021210012.html#BJNR021210012BJNG0002000002018/851/EU


(4)フランス「廃棄物と循環経済の対応に関する法律(2020年2月10日発行)」

https://www.legifrance.gouv.fr/download/pdf?id=6S9k2YS08HQneDKoZEk6IvW-c5JqEb-SEAz0MfCl1vU=


(5) 2020年12月11日掲載のコラム

「UKのEU離脱、SCIPそして中国VOCなどの最近のお問い合わせから」

https://www.tkk-lab.jp/post/20201211reach

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