当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q591.金メッキ中の金の原産地証明について

2021年03月12日更新

【質問】

当社はコンタクト部分に金めっきを施した特殊コネクターを製造しています。 顧客から金の産地の照会がありました。 金めっきは外部委託加工をしていますが、金の産地照会の背景と対応を教えてください。

【回答】

◆金の産地照会の背景について

顧客から請求のあった金の産地照会についてはEUとアメリカなどで規制されている紛争鉱物が関連していると考えられます。


アフリカの中央部にあるコンゴ民主共和国では長年内乱が続き、武装勢力による非人道的行為が問題になっていました。 武装勢力の資金源となっていたのは金などの豊富な鉱物資源でした。 その資金源を断ち、勢力を弱体化させるためにコンゴ民主共和国およびその隣接国から産出される鉱物資源への規制の動きが広まっています。


■EUにおける紛争鉱物規制

EUでは紛争鉱物に対する規制である欧州議会および委員会規則EU(2017/821)(EU紛争鉱物規則)注1)が定められています。 EU紛争鉱物規則では、「紛争地域およびハイリスク地域」から産出される「スズ、タンタル、タングステンまたは金を含有する鉱物または金属」を輸入するEU域内の事業者に対して、サプライチェーンデューデリジェンス義務を遵守することを求めています。 本規則におけるサプライチェーンデューデリジェンス義務とは、輸入する事業者に求められる管理システムの構築、リスク管理、独立した第三者による監査、情報開示に関連した義務を意味します。 紛争の影響を受けるリスクの高い地域から鉱物を調達することで発生するあらゆるリスクを特定・評価して対処し、調達活動により発生する悪影響を防止または軽減することを目的に義務の遵守を課しています。


■アメリカにおける紛争鉱物規制

2010年7月21日に制定された金融規制改革法(ドッド・フランク法)注2)第1502条に基づき、米証券取引委員会(SEC)は「証券取引所法(5 U.S.C. 78m)」注3)を改正しました。 コンゴ民主共和国およびその隣接国から産出される「ロンバイト-タンタライト(コルタン)、スズ石、金、鉄マンガン重石(タングステンの原鉱)、またはその派生物」を紛争鉱物に指定し、SEC登録企業に対して自社の製品に紛争鉱物が使用されているかサプライチェーンを遡って確認し、該当する鉱物を使用している場合は、SECに報告すると共に製品中に含有しているかどうかを開示する義務を課しています。 SECには、ソニー・キャノンなど20社程度の日本企業が登録しています。

 

両法規制共にコンフリクト・フリー(紛争鉱物不使用)以外の製品の製造を禁止している訳ではありません。 しかし、「紛争鉱物を使用している製品は使用しない」などの紛争鉱物に対する社会的圧力が強まるなか、自社のサプライチェーンにコンフリクトフリー(紛争鉱物不使用)を求める事業者も増えています。


◆金メッキ事業者への紛争鉱物対応方法

■金の産地確認

顧客からの金の産地照会の対応については、サプライチェーンの川上事業者である金めっきの委託事業者に対して、メッキに使用している金の産地照会を行うか、紛争鉱物情報報告テンプレート(CMRT)の提出を依頼することになります。 CMRTは紛争鉱物に関する取組を主導している団体である「Responsible mineral initiative(RMI)」より作成されたもので、紛争鉱物を含まない原材料を調達するためのサプライチェーン全体における情報管理ツールです。 現在、CMRI(ver6.01)が公開されていて、RMIのウェブサイト注4)から無償でダウンロード可能です。 最終的には金メッキに使用された金の産地は精錬事業者が把握しているので、どの事業者で精錬されたかを確認することになります。


■金メッキ事業者から協力を得られない場合の対応

紛争鉱物調査には負担が発生するため、積極的が回答を得ることができない可能性も考えられます。


自社で紛争鉱物に対する方針を定め、Webページなどで公開することで、紛争鉱物に対する積極的な取組をPRします。 サプライチェーンの川上事業者に対しては普段のコミュニケーションなどで「紛争鉱物を使用することで非人道的行為に加担している」ことを理解してもらい、紛争鉱物に対する積極的な貢献を引き出します。


■自社における社会的責任(紛争鉱物不使用)への貢献活動

企業としての社会的責任から、金以外にも自社の製品中に紛争鉱物を含有していないかを確認し、含有しているのであれば、積極的に川下事業者に報告、もしくは紛争鉱物を使用しないなど、人権侵害に加担しない取組、いわゆる「デュー・ディリジェンス」を行う必要があります。


企業の社会的責任に対して積極的に貢献する調達活動のための指針として経済協力開発機構(OECD)は紛争鉱物に関するOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンスを公表しています。 注5)本ガイダンスではサプライチェーンの各企業が紛争地域および高リスク地域から紛争鉱物を調達することで発生する人権侵害に加担するリスクを防止または緩和するための活動を行うために下記5段階の枠組を自社のマネジメントシステムに組み込むべきとしています。


第一段階:強固な管理システムの構築

第二段階:サプライチェーン内のリスクの特定と評価

第三段階:特定されたリスクに対応するための戦略の立案と実施

第四段階:独立した第三者による鉱物精製事業者のデュー・ディリジェンス行為の監査の実施

第五段階:サプライチェーンのデュー・ディリジェンスに関する報告


注1)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02017R0821-20201119


注2)

https://www.congress.gov/111/plaws/publ203/PLAW-111publ203.pdf


注3)

https://www.law.cornell.edu/uscode/text/15/78m


注4)

http://www.responsiblemineralsinitiative.org/reporting-templates/cmrt/


注5)

http://www.oecd.org/daf/inv/mne/mining.htm


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