当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q592.ガーデニング用小型防寒ハウスの遵法対応

2021年03月17日更新

【質問】

PVC(塩化ビニル)製シートとアルミ製の枠で構成されているガーデニング用小型防寒ハウス (ヒーター等は不使用) を海外 (EUおよびアメリカ) に輸出・販売を検討中です。遵法上のポイントについてご教示ください。

【回答】

【EUの場合】

消費者向け製品は一般製品安全指令 (GPSD)2001/95/EC(1) の対象となります。その第2条では「安全な」製品を以下のように定義しています。

「一般的な条件または合理的に予見可能な条件においてリスクが見られないか、リスクが見られるものの、許容範囲と見なされ、一定かつ高レベルの保護が提供される製品である。

安全な製品の概念には、製品の特徴、梱包と組立手順、該当する場合は設置と保守を含み、製品を使用する際に危険にさらされる消費者のカテゴリー、特に子供と高齢者に配慮が必要とする。(一部略)」


化学物質に関する安全適合については、生産者は含有している化学物質を調べ、使用開始から廃棄までの使用方法(ばく露シナリオ)を考え、リスク評価を特に社会的弱者を念頭に置いて行う必要があります。

 

GPSDのリスク評価のガイドになる“RAPEX Guide”(2)では、有害物質を使用した製品について、以下のシナリオを例示しています。

ハザードグループ:毒性

・ハザード(製品特性):有毒な固体または液体

・・典型的な怪我のシナリオ:人は製品から物質を摂取する(例えば 口に入れる、および/または物質が皮膚に付着する )

・・・典型的な怪我:急性中毒; 刺激、皮膚炎


・ハザード(製品特性):CMR物質

・・典型的な怪我のシナリオ:人は製品から物質を摂取する(例えば それを口に入れることによって、および/または物質が皮膚に付着する; および/または人が物質をガス、蒸気または粉塵として吸入する)

・・・典型的な怪我:がん、突然変異、生殖毒性


シナリオにより、「怪我の重症度」を判定し、傷害と確率の重症度の組み合わせからのリスクレベル(S : 深刻なリスク/H:高リスク/M : 中リスク/L: 低リスク)を決定し、リスク管理措置を検討します。

 

しかし、含有化学物質にCMRで区分1A、1B物質が0.1%以上含有していれば、REACH規則(3)の制限で規制されますので、リスクレベルに関係なくリスク管理措置は「0.1%以上含有させない」になります。


物理的安全適合も同様なシナリオを作成し評価しますが、この文書では割愛します。


リスクがある場合には警告表示も有効ですが、警告によって免責されるわけではありません。

ご質問の「ガーデニング用小型防寒ハウス」は家庭用製品ですので、組立中やその後の使用時に子供が触ったり舐めたりする可能性を考慮する必要があります。

構造上そうしたリスクが回避できていない場合は、リスク管理措置として玩具指令の附属書II(特別安全要求事項)や整合規格EN71-3などを参考することがあります。

PVCシートには可塑剤や耐候剤などを含有しています。表面コーティングや接着剤を用いている場合にはそれらの中に有害化学物質が含まれているか確認する必要があります。アルミニウム枠については塗装されている場合は塗料の含有物、メッキやクロメート処理など表面処理が行われている場合にはそれに関わる化学物質について確認が必要です。


規制物質がその上限濃度を超えて含有されている場合は上市できませんので代替材料に変更する必要があります。 例えばPVCの可塑剤として用いられる特定フタル酸エステル類は0.1重量%以上含有されている場合上市できませんが、Tris(2-ethylhexyl) Trimellitate(CAS RN 3319-31-1)やアジピン酸エステル類などの代替剤が使用されます。 この場合であっても、代替剤についてのリスク評価は必要です


【米国の場合】

米国ではTSCA(米国有害物質規制法)(4)により化学物質規制が行われており、CPSIA(消費者製品安全改善法)(5)で消費者向け製品に含まれる化学物質の規制を行っています。また、州ごとに州法による規制があり、カリフォルニア州のProposition65(Prop65)(6)などが有名です。


考え方はEUと同じで、CPSIAの玩具に対する規制に準じる必要があります。 PVCの可塑剤を例に取ると、上記TSCA、CPSIA、Prop65では複数のフタル酸エステル類が規制対象物質に登録されています。これらが0.1重量%以上含有されている場合は上市できませんので代替材料への変更が必要となります。


Prop65の場合は濃度限界という概念はなく、がんや生殖毒性に対する最大許容ばく露量(セーフハーバーレベル)で判断され、基準となるばく露量を超える場合に警告表示の義務が生じます。例えばDEHPは発がん性物質としてばく露量が310µg/日と設定されています。

DEHP、BBP、 DBP、 DIDP、 DINP、 DnHPは連邦法のCPSIAでそれぞれ0.1%以上含有することは制限されます。Prop65はばく露量がセーフハーバーレベルを超える場合は警告表示の義務があるという判例が出されています(7)。 


また、米国ではPL法を意識する必要があります。

JETROの解説では、米国のPL(Product Liability)法の特徴は、被害者が損害賠償の請求にあたり、a. 損害発生の事実、b. 製品の欠陥(設計上の欠陥、製造上の欠陥、警告・表示上の欠陥の三類型に分類される)の存在、c. 損害と欠陥の因果関係 の三点さえ証明できれば、製造業者等の不法行為としての故意・過失の存在や製造業者等による契約違反の事実を証明する必要のないことです(8)。

有害物質を含有させない、含有している場合は警告表示するなどの対応が求められます。


(参考)

(1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32001L0095

(2) https://eur-lex.europa.eu/eli/dec/2019/417/oj

(3) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:02006R1907-20140410

(4) https://www.epa.gov/laws-regulations/summary-toxic-substances-control-act

(5) https://www.cpsc.gov/Regulations-Laws--Standards/Statutes/The-Consumer-Product-Safety-Improvement-Act

(6) https://oehha.ca.gov/proposition-65

(7) https://oag.ca.gov/system/files/prop65/settlements/2016-00937S6111.pdf

(8) https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000951.html


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