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Q593.折敷を欧米に輸出した際の留意点について
2021年03月19日更新
【質問】
当社は食器メーカーです。 日本で売れている折敷を欧米に輸出したいと思っています。 折敷は、蒔絵を施した高級品から無垢材まで様々です。 留意すべき事項を教えてください。
【回答】
折敷は、木製の板に様々な表面加工した食器です。 EUおよび米国において、食器は食品に接触するすべての材料(Food Contact Materials 以下FCM)の一つとして関連する法規制への適合が求められます。 内容としては、日本の食品衛生法および食品、添加物等の規格基準の器具と同じく安全な製品設計・品質規格の設定(危害要因の排除)、適正な製造管理、情報伝達等ですが、EUおよび米国での留意すべき法規制について説明します。
例えば、危害要因の排除に関して、製品のみならず使用している原材料が原則認可されたリスト(ポジティブリスト)から構成されている確認が必要です。 また、適正な製造管理を遂行して文書化するとともに、サプライチェーンでの情報伝達を適切に行うことが求められています。
さらに、独自の法規制として、EUでのREACH規則や、米国カルフォルニア州Prop65などの規制も考慮する必要があり、製品の内容に合わせて対応が必要です。
以下に、EUおよび米国における木製食器に対するFCMおよびその他の法規制について説明します。
1. EU向け輸出に関して
木製食器に対するEU市場での主な規制は以下の通りです。
(1)一般製品安全指令(2001/95/EC;GPSD)1)
GPSDは、市場に出る製品の安全を保証することを目的としています。 「安全な製品」の明確な基準はありませんが、製造者が、通常または予見可能な使用条件において有害性に関するリスクを示さないまたは最小限のリスクのみでとどまる製品であることを自ら決定し、安全な製品のみを供給する義務があります。
(2)食品に接触する素材および製品に関する規則(Regulation (EC) No.1935/2004)2)3)
FCMは、通常または予見可能な使用条件において、食品に「人の健康に害を及ぼす」「食品の成分・味・臭いを許容以上に変化させる」ような成分移行をさせないことを求めています。その他の主な要求事項は、次の項目です。
・FCMが適正な製造規範(GMP)で製造されていること4)。GMPはEC No.2023/2006に規定されており、文書化された品質保証システムにより組織体制を整え、モニタリング等の適切な実施による効果的な品質管理システムを確立・維持を行い、完成品等に対する淳社および安全性に関する様々な資料を文書化すること、およびこれらに従ってFCMの製造作業を実施の保証を求めています。
・販売時に食品と接触していないFCMは、「for food conact」やシンボルなどの表示、必要に応じて安全かつ適切な使用のために遵守すべき特別な指示、EU内での上市責任を負う事業者名と住所、および製品のトレーサビリティ確保のための適切な表示をすること5)
・本規則への適合を記載した宣言書を以って安全性を宣言すること
プラスチックなど素材別の規則6)もありますが、木材の規則はありません。 特定措置が決まっていない場合には、各国が国内法で規定することができます。木製品に対してフランス消費者保護総局のガイドラインやオランダ国内法など、接着剤に対しても、フランス消費者保護総局のガイドラインやオランダ国内法やEU接着剤工業会のガイダンスがあります7)8)。
また、適合宣言書の様式は規定されていませんが、プラスチックなどの素材別の規則には必要な項目の記載があり、他のFCMでも準用できます。
(3)REACH規則
製品に使用された化学物質の管理が必要です。例えば、制限物質であるヒ素化合物で防腐処理した木製品の上市を禁止しています。 また、認可対象候補物質(CLS)を含有する場合には、その濃度や他の規制を含めFCMでの使用の適否を確認する必要があります。 使用可能でかつ成形品中に0.1wt%以上含有する場合にはEU輸入者または唯一の代理人に物質名と安全情報の伝達やSCIPへの登録が必要となります9)10)。
2.米国向け輸出に関して
木製食器に対する米国市場での主な規制は以下の通りです。
(1)連邦規則
食品・医薬品および化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act: FFDCA)により、食品に有害物質の混入が禁止されています11)。 FCMは間接添加物(Indirect additives)と定義され、以下の材料や物質が規定されています。
・連邦規則集(CFR)21条のPart170~190に規定された材料および物質12)。例えば、Part178.3800:木材用防腐剤、Part175:コーティング剤および接着剤
・GRAS:「安全と確認された物質」13)14)
・FCS:食品接触物質上市前届出制度(FCN)で受理された食品接触物質(申請者の製品のみ有効)15)16)
色材はPart74で規定されてます17)。
物質ごとにその組成や含有量、物性値や分析方法などが定められ、それらの基準に適合することが必要です。
また、Part117にて、適正な製造規範(GMP)によりFCMを製造することが規定されています18)。
なお、適合宣言書等の作成は法的に要求されていません。事業者間での取り決めによる適合性の情報伝達になります。
(2)カルフォルニア州法(Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986:Prop65) 19)
カリフォルニア州の市民および飲料水資源を、がんや生殖異常などを引き起こすとされる化学物質から保護することを目的した法律です。 木製食器を含め消費者製品は対象で、製品中にProp65で規定された化学物質(The List)の含有とばく露の可能性の検証、必要に応じた表示等の対応が必要です20)21)。
カルフォルニア州以外にも各州で規則を定めている場合があり、確認が必要です。
参考文献
1)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:02001L0095-20100101&from=EN
2)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2004/1935/2009-08-07
3)
https://www.iri-tokyo.jp/book/list/book80.html
4)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2006/2023/oj
5)
https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/cs_fcm_legis_fcm-symbols.doc
6)
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2011/10/2020-09-23
8)
https://www.feica.eu/our-priorities/food-contact
9)
https://www.tkk-lab.jp/post/reach-q560-1
10)
https://www.tkk-lab.jp/post/20201016reach
11)
https://www.govinfo.gov/content/pkg/COMPS-973/pdf/COMPS-973.pdf
12)
13)
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04280400105
14)
https://www.cfsanappsexternal.fda.gov/scripts/fdcc/index.cfm?set=GRASNotices
15)
https://www.fda.gov/food/food-ingredients-packaging/packaging-food-contact-substances-fcs
16)
https://www.cfsanappsexternal.fda.gov/scripts/fdcc/?set=FCN
17)
18)
19)
https://oehha.ca.gov/proposition-65
20)
https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-list
21)