top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

Q654.Prop65における規制物質の告知について

  • 執筆者の写真: tkk-lab
    tkk-lab
  • 2023年4月7日
  • 読了時間: 4分

2023年04年07日更新

【質問】

Prop65は製造物が弊社で想定している使用方法であれば問題ないと考えている場合でも規制物質が含有している場合は告知したほうが良いのでしょうか。 (ばく露がNSRLやMADLのレベルを大幅に下回っていることは証明できていません)

【回答】

Prop65(カリフォルニア州法「「1986年の安全飲料水及び有毒物質執行法」」)(1)において、ばく露量が“Safe harbor levels”未満で警告表示することは禁止されてはいません。 しかし、OEHHA(カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局)は不必要な警告表示を推奨しておらず、また、警告表示した場合も、カリフォルニア州法CCR27§25205(2)に基づき、情報提供義務などが生じます。 また、“Short Form”による警告表示でも物質名の記載をする改訂が検討されており(3)、それらも含めて総合的に判断する必要があると考えられます。


Prop65の対象物質は、“The Proposition 65 List”(以下リスト)(4)に約1000物質が収載されています。 リストにはセーフハーバーレベルと呼ばれるばく露量ががんの重大なリスクをもたらさないレベル(NSRL:70年間このレベルで化学物質にばく露した人ががんを発症する確率が10万分の1であること)、もしくは先天異常やその他生殖障害を引き起こすことが見つかるレベルよりも著しく低い場合(MADL:影響が見られない最大無作用量(NOEL)の1000分の1)が示されていますが、これらが示されていない物質もあります。


Prop65は有害物質の濃度規制ではなく、ばく露量規制で、その製品を使用した場合に、有害物質に曝露する危険を、使用者に警告する義務を課したものです。 警告表示の主な責任は製造業者にあります。 製造業者は、その製品がどのように使用されるかの「ばく露シナリオ」を設定し、それに基づいてばく露量を評価します。使用者はときに製造業者が想定しないような使い方をする場合がありますので、「ばく露シナリオ」にどこまで含めるかは悩みどころとなります。 ばく露量がセーフハーバーレベルを下回る場合には警告表示は不要となりますが、セーフハーバーレベルが設定されていない物質の場合には、予想されるばく露量ががんまたは生殖障害の重大なリスクを引き起こさないことを示すことができない限り警告を行う必要があります。

 

警告表示を行うか否かの判断は、警告表示の免除のための費用や手間と、その製品の販売に対するネガティブな影響、警告表示した後の手間を考慮して判断する必要があります。 警告表示免除のための手続きは27CCR§25204(Safe Use Determination(安全使用判定SUD))(5)に規定されています。 SUDとはProp65の規制当局であるOEHHAが発行した文書による判定で、分析報告書を始め様々な必要書類を提出し、1000ドルの手数料を納付する必要があります。 分析評価のためには専門家の支援が必要で、費用も発生します。


判断の手順としては、まず類似品の警告表示状況を確認することが必要でしょう。 類似品が警告表示をしておらず、貴社製品のみが警告表示をする場合には販売に対して悪影響が出る可能性があります。 また、Prop65に関しては、行うべき警告表示をしていなかったという訴訟も多くされています。 類似品のProp65に関する和解や判例情報がカリフォルニア州司法省のサイトに公開されていますので(6)、それらを参考にしてください。 たとえば、類似品が警告表示していない場合、警告表示をすると不利になるため警告表示を行わない判断を行いますが、訴訟を起こされているケースがあり、製造者に不利な和解や判決が出ているようでしたら警告表示を行うという判断になります。


OEHHAは不必要な警告表示については推奨していません。 また、警告表示を行う判断をした場合には、OEHHAに情報提供する義務が生じます。以上を考慮の上警告表示の判断を行ってください。


(参考)

(1)プロポジション65 (原文)Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act 安全な飲料水および有毒排除法


(2)カリフォルニア州法CCR§25205 LEAD AGENCY WEB SITE


(3)Prop65の短い警告文に関するルール改定の2022年5月時点での進捗状況


(4)プロポジション65の対象物質リスト ※対象物質検索可能サイト 物質詳細へのリンクThe Proposition 65 List


(5)プロポジション65 安全使用判定(SUD)の手続きについての解説


(6)プロポジション65 60日間違反通知、裁判による和解、裁判外での和解に関する情報公開

最新記事

すべて表示
Q718.EU電池規則における医療機器への取り外し可能な設計の適用について

2025年06月06日更新 【質問】 医療機器でポータブル電池を使用しています。取扱説明書に「改造禁止」と記載している製品についても、取り外し可能な位置に電池を配置するような設計にする必要があるのでしょうか? ________________________________...

 
 
 
Q716.DEHPを含有する製品のEU輸出について

2025年05月30日更新 【質問】 DEHPはREACH規則で規制されていますが、ROHS禁止物質でもあるので、REACH規則に対応していても製品中のDEHPの含有量がRoHS違反になるとEU輸出は不可になるのでしょうか?...

 
 
 

Comments


© 2011-2024  一般社団法人東京環境経営研究所(TKK)

  • Facebook - White Circle
  • YouTube - White Circle
  • アマゾン - ホワイト丸
bottom of page