当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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REACHにまつわる話 ~ECHAの化学物質管理の戦略について~

2019年5月30日更新

ECHAはREACHの下で2007年6月1日に設立されました。ご承知の通りEUにおける化学物質管理はECHAが担っています。

具体的には、REACHだけでなく、その後に成立したCLP、BPRおよびPIC(危険化学品の輸出入に関する規則 649/2012)1)の施行管理の義務が課せられています。さらに、廃棄物枠組指令(指令2018/851)2)の業務の内、成形品中の認可対象候補リストに収載された物質(CLS)のデータベースの構築のECHAの役割となっています。

ECHAは、2018年12月に「ECHAの戦略的計画 2019-2023」3)を発表しています。計画では表1に示します戦略的優先事項が掲げられています。



今回はこのうちの#1に関する状況を整理します。

#1の「懸念物質の特定とリスク管理」については、ECHAで既に2015年から統合規制戦略として実施している事項です。なお、統合規制戦略は下記の目的のために策定されているものです。


・潜在的な懸念物質を効率的に選択し、安全性を評価するために必要な情報を取得し、懸念が残る場合には、最も適切な規制上のリスク管理手段によって対処できるようする。


・産業界、ECHA、加盟国、および欧州委員会のすべての関係者が、REACHおよびCLPのさまざまなプロセスの中で、適切でタイムリーな介入を可能にし、懸念物質が正しく規制されるようにする。


・利害関係者および一般の人に、登録者がREACHの要求情報をすべて提出している信用を与え、サプライチェーンでの安全な使用に関するコミュニケーションを改善する。

2019年4月に、ECHAから2018年5月までの統合規制戦略の実施状況に関する年度報告が公表されています4)。その概要は下記の通りです。

報告書によりますと、これまで年間100トン以上の登録物質約4,700のうち、約40%の約2,000強の物質の検討が実施済であるとのことです。その検討結果の要点は下記の通りです。


・約270物質がリスク管理の最優先の対象である。これら物質は特定された懸念を持つ物質であり、詳細な規制上のリスク管理が行われているか、または現在利用可能な情報に基づいて規制を進めることができる。大部分の物質はスクリーニングによって優先してリスク管理を行う必要がある懸念物質として同定された。今後の詳細な検討によっては、分類の調和、SVHCとしての同定、制限、他の法律の下で規制、あるいはEUレベルでの規制は正当化されないと結論が下される。


・約1,300物質は、優先してデータ収集が必要である。これらの物質は潜在的に懸念のある物質である。さらなる規制上のリスク管理が必要かどうかを決定することができるように、新たにハザードデータを取得するか、既存のデータをより詳細に評価する必要がある。大部分はスクリーニングによって同定された。テストには時間がかかるので、規制によるリスク管理が確実に速やかに開始することができるように、法律で許可されている限り短期に、すべてのプロセスの期限を定めて行うことが重要である。


・約450の物質はすでに十分に規制されているため、優先度は低い。これらの物質については、さらなる規制措置を取る必要はない。2018年には、16物質がCL物質(通常、SVHCと呼ばれている)として特定され、3件の規制提案が提出された。


・約500物質は優先度が低いと結論付けられている。これらの物質については、ハザードと使用に関する入手可能なデータに基づいて、追加作業の優先度が低いと見なすことができると結論付けている。ただし、ハザードと使用に関する新しい情報が入手可能になったときに再検討されることになる。

ご参考に、上記の報告書の手順と規制の状況の概要を図1に纏めました。



上記、要点の2項目の「約1,300物質は、優先してデータ収集が必要」については、2019年5月に、ECHAの2019年の計画での優先事項として、「REACH登録文書のコンプライアンスチェックの向上」を掲げています5)。このために、これまで登録トン数ごとに登録文書5%についてコンプライアンスの評価が行われていましたが、評価対象とする登録文書の拡大を計画していると考えられます。他方、ECHAでは、登録者には登録情報のアップデートすることを要求しています6)。登録者は新たな情報を入手した場合や提出していなければならない情報が不足している場合は、登録文書のアップデータすることが必要です。

(林  譲)



参考資料


1)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX:32012R0649

2)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32018L0851&from=EN

3) https://echa.europa.eu/documents/10162/26075800/echa_strategic_plan_2019-2023_en.pdf/3457ccff-7240-2c1f-3a15-fa6e5e65ac56

4) https://echa.europa.eu/documents/10162/27467748/irs_annual_report_2018_en.pdf/69988046-25cc-b39e-9d43-6bbd4c164425

5)

https://echa.europa.eu/-/improving-compliance-is-echa-s-key-priority

6)

https://echa.europa.eu/recommendations-to-registrants

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