- tkk-lab
REACHにまつわる話 ~プラスチック規制動向について~
2019年6月28日更新
プラスチックの環境汚染はグローバルの課題として、種々の規制措置が検討されています。 日本においては、来年4月からレジ袋の有償化が義務化する計画が発表されました。 また、コンビニでは包装材料やフォークやスプーンなどの食器類を生分解性のあるバイオプラスチックへ変更する動きが始まっています。
他方、EUにおいては、環境保全のための循環経済1)の構築に向け、プラスチック戦略2)が策定されています。
プラスチック戦略の施策としては下記の項目が挙げられています。
1) プラスチックリサイクルの経済性と品質の向上
2) プラスチック廃棄物とポイ捨ての抑制
3) 循環経済のための投資と革新の推進
4) 国際的な活動を活用
1)項に関して、プラスチックのリサイクルを2025年には1,000万トンとする目標を掲げています。 約70の企業・団体が自主的にリサイクル目標を立てて、約束をしているとのことですが、その合計目標は約640万トンで、EU全体のも目標達成のためには、一段の努力が求められています3)。
1)及び2)項に関しては、法規制による推進が行われています。 その一つとして、環境負荷を低減するための使い捨てプラスチック使用量の削減を目的とする指令が公布されました。 また、REACH規則に基づきマイクロプラスチックの使用制限に関する意見募集が行われています。 今回はこの概要についてご紹介します。
Ⅰ.使い捨てプラスチックの使用削減のための規制
2018年5月28日に、使い捨てプラスチックの使用削減を目的とする「環境への負荷へのプラスチック製品の削減に関する指令」の草案が欧州委員会から提出発表されていました4)。 この草案は欧州議会と欧州理事会で審議により、一部の修正が行われ、2019年6月12日のEU官報(OJ)で公布されました5)。
この規制は指令として制定されましたので、加盟国は2021年7月3日までに国内法を制定することが求められています。
この指令は、特定のプラスチック製品が環境(特に水生環境)と人間の健康に与える影響を防止および軽減し、革新的で持続可能なビジネスモデル、製品及び材料によって循環経済への移行を促進し、その結果、域内市場の効率的な機能に貢献することを目的に制定されました。
加盟国には、附属書パートAに記載された使い捨てプラスチック製の飲料用カップや食品用容器を2022年に比較し2026年までに測定可能な削減を達成することが求まれています(第4条)。 また、2021年7月3日以降は、附属書パートB記載の使い捨てプラスチックおよびオキソ分解性プラスチック製品の上市が禁止されることになります(第5条)。 具体的な附属書パートBのプラスチック製品は下記の通りです。
附属書パートBに記載されている上市が禁止されるプラスリック製品
(1)綿棒(医療機器に関する欧州理事会指令90/385 / EECまたは医療機器に関する欧州理事会指令93/42 / EECの適用製品は除く)。
(2)食器類(フォーク、ナイフ、スプーン、箸)。
(3)プレート
(4)ストロー(医療機器に関する欧州理事会指令90/385 / EECまたは医療機器に関する欧州理事会指令93/42 / EECの適用製品は除く)。
(5)飲料用混ぜ棒。
(6)風船を取り付ける、または、支えるための棒。消費者に提供されない産業用等の用途の製品は除く。
(7)発泡ポリスチレン製の食品容器(蓋付きまたは蓋なしの容器)。
(8)発泡スチロール製の飲料容器(蓋を含む)。
(9)発泡スチロール製の飲料用カップ(蓋を含む)。
なお、公布された指令では、欧州委員会の草案にはなかった、オキソ分解性プラスチック製品および附属書パートBのリストに発泡ポリスチレン製の製品類が追加されています。
2021年7月3日以降上市が禁止されるプラスチック製品には、上記の附属書パートBに記載されている使い捨てのプラスチック以外に、分解し環境汚染、特に海洋を汚染の原因となるオキソ分解性のプラスチック製品も含まれます。
2024年7月3日以降、容量3ℓ未満の使い捨てプラスチック飲料用容器で、プラスチック製キャップおよび蓋が使用過程で取り外せる場合は上市が禁止されます(第6条)。
Ⅱ.マイクロプラスチックの使用を制限の検討について
欧州委員会は、欧州議会からの要請に基づき、ECHAにマイクロプラスチックを化粧品、パーソナルケア製品、洗剤および化粧品に使用することを禁止する提案書の作成を指示していました。 ECHAは、2019年3月20日にREACH規則附属書XVの制限案に関する報告書を公表し2019年9月20日まで意見募集を行っています6)。
制限案の主な内容は下記の通りです(下記は報告書の抜粋であるため、番号(1~3)は報告書と同じではありません)。
1.マイクロプラスチックそれ自体、またはマイクロプラスチックを[0.01] w / w%以上の濃度で含有する混合物を上市してはならない (注【0.01】は暫定案です) 。
なお、用語の定義は下記の通りである。
・「マイクロプラスチック」とは、固体ポリマーを含有する粒子からなる材料(添加剤または他の物質が添加されていてもよい)であり、1w / w%以上の粒子が次の寸法であるものを意味する。
(i)すべての寸法が1nm≦x≦5mmである、または(ii)繊維については、長さ3nm≦x≦15mm、アスペクト比(長さ対直径の比)>3。
・「粒子」とは、明確な物理的な境界を有する微小な物体を意味する;明確な物理的境界は界面である。
・「ポリマー含有粒子」とは、(i)任意の厚さの連続ポリマー表面層を有する任意の組成の粒子、または(ⅱ)1w/w%以上のポリマー含有量を有する任意の組成の粒子を意味する。
2.第1項は、下記のポリマーからなるマイクロプラスチックには、適用されない。
・化学処理されていない天然由来のポリマー
・生分解性ポリマー
3.第1項は、下記には適用されない。
・産業用途
・ヒトまたは動物用の医薬品
・EUで規制されている肥料用の物質または混合物
これまで、使い勝手の良い材料として使用されてきたプラスチックは、石油を原料としていること、また、これらのプラスチックの廃棄物は世界的な環境汚染問題を引き起こしてきました。
しかし、これらの問題を克服する新たな材料の開発の成功が報告されています。近い将来、これらの問題が解決され、新たな産業へと発展することを祈念したいと考えます。
1) http://ec.europa.eu/environment/circular-economy/index_en.htm
2) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1516265440535&uri=COM:2018:28:FIN
3) https://ec.europa.eu/commission/news/eu-plastics-strategy-2018-nov-20_en
4) http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-3927_en.htm
5) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32019L0904&from=EN
6) https://echa.europa.eu/restrictions-under-consideration/-/substance-rev/22921/term
(林 譲)