当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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REACHにまつわる話 ~CL物質の追加と収載の有害性根拠について~

2019年7月26日更新


2019年7月16日に、ECHAから認可対象候補リスト物質(CL物質)に4物質を収載することが発表されました1)。この結果、CL物質は201物質になりました。 収載された物質は下記の通りです。


①:2-メトオキシエチル酢酸(別名;酢酸メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル酢酸エステル)

・CAS番号:110-49-6

・CL物質収載の有害性;第57条(c):生殖毒性

・用途:洗浄溶剤、印刷インキ溶剤、塗料溶剤

②:亜りん酸4‐ノニルフェニル,分岐及び直鎖)(4-NP)を0.1重量%含有する亜りん酸トリス(4‐ノニルフェニル.分岐及び直鎖)(TNPP)

・CAS番号:―(TNPP;CAS番号; 26523-78-4)

・CL物質収載の有害性;第57条(f):内分泌かく乱性(環境)

・用途:樹脂酸化防止剤

③:2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポオキシ)プロピオン酸、その塩、およびハロゲン化アシル化合物(その異性体、その組み合わせを含む)

・CAS番号:(2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポオキシ)プロピオン酸;CAS番号;13252-13-6)

・CL物質収載の有害性;第57条(f):環境、及び、ヒトへの同等程度の懸念のある物質

・用途:フッ素樹脂の製造の加工助剤 

④:4-tert-ブチルフェノール(別名:p‐tert‐ブチルフェノール)

・CAS番号:98-54-4

・CL物質収載の有害性;第57条(f);内分泌かく乱性(環境)

・用途:フッ素樹脂の酸化防止剤


上記4物質の内①はまだ登録はされていません。 CL物質収載提案に対するコメントがなかったことからECHAで収載が決定されました。


③については、意見募集でコメントが提出されたことから、ECHAの加盟国委員会で検討され、全員の一致で収載が決定されています3)。


④については2016年に提案されましたが、ECHA加盟国委員会では収載の結論に至らず、欧州委員会に決定が委ねられていました。 今回の収載は、欧州委員会での決定です2)。


②、③および④については、「REACH規則第57条(f)」の有害性があるとして、CL物質として特定されています。 ただし、②、④と③の「第57等(f)」の意味合いが少し異なります。


ここで、REACH規則第57条で規定されています、CL物質として特定される物質の有害性について、ご説明しておきたいと思います。


第57条では附属書XIVに収載される「認可対象物質」は下記の有害性がある物質であると規定されています。 認可対象物質は、CL物質、すなわち、認可対象候補物質リストに収載された物質から、優先順位を付けて選ばれることになっています。すなわち、CL物質と認可対象物質の収載根拠は同じです。


REACH規則第57条の附属書XIVに収載される物質

(a)CLP規則基準で発がん性区分1A 又は区分1Bの分類される物質

(b)CLP規則基準で変異原性区分1A 又は区分1Bの分類される物質

(c)CLP規則基準で生殖毒性区分1A 又は区分1Bの分類される物質

(d)附属書 XIIIの基準で難分解性、生体蓄積性及び毒性を有する物質(PBT)

(e)附属書 XIIIの基準で極めて難分解性で高い生体蓄積性を有する物質(vPvB)

(f)内分泌かく乱性を有するか、又は難分解性、生体蓄積性及び毒性を有するか、又は極めて難分解性で高い生体蓄積性を有するような物質であって、(d)又は(e)の基準を満たさないが、(a)から(e)に列記した他の物質と同等レベルの懸念を生じさせる、人又は環境に対する深刻な影響をもたらすおそれがあるとの科学的証拠がある個別に特定される物質


②と④については、第57条(f)の有害性の内、「内分泌かく乱性」であることが示されていますが、③については、「(a)~(e)と同等レベルの懸念がある物質」ということになります。 ③をCL物質とする提案書4)には、下記の内容の特記があります。


【2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポオキシ)プロピオン酸、その塩、およびハロゲン化アシル化合物(その異性体、その組み合わせを含む)】のCL物質収載の根拠の特記内容(要約)

「残留性があり、地球上を長距離移動する。また、吸着ポテンシャルが低く、水溶性が高いため、(飲料用)水を介して摂取され続けることになり、人の健康(肝臓、腎臓、血管や免疫系、生殖器等)や鳥類や哺乳動物へ悪影響の可能性がある。」


③は、ペルフルオロカルボン酸、すなわち、フルオロアルキル基を有する化合物です。既に10件のフルオロアルキル基を有する化合物がCL物質として収載されていますが、これらの物質のCL物質の収載根拠は、生殖毒性、PBTおよびvPvBでした。さらに、他のCL物質の収載根拠にもないことから、「(a)~(e)と同等レベルの懸念がある物質」を収載根拠としたのは今回の収載が最初のケースとなります。


1) https://echa.europa.eu/-/four-new-substances-added-to-the-candidate-list

2) https://echa.europa.eu/documents/10162/99a7e1c6-2aa4-0c35-acc3-35ec26bb1ee8

3) https://echa.europa.eu/-/msc-unanimously-agrees-that-hfpo-da-is-a-substance-of-very-high-concern

4) https://echa.europa.eu/documents/10162/53fa6a5b-e95f-3128-ea9d-fa27f43b18bc


(林  譲)

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