当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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認可と収載根拠となる固有特性(第57条)の関係 ― 4種のフタル酸エステル類に関する附属書XIVの改正勧告 ―

2019年7月31日更新


2019年7月16日に4物質が新たに認可対象候補リスト物質(CL物質)に収載されました。 CL物質に収載された物質は固有の特性や用途の分散性、高生産量などから優先順位をつけてREACH規則附属書XIVの認可対象物質に収載されていきます。


これまで附属書XIVの改正は、CL物質から新たな物質を追加するために実施されてきましたが、ECHAは2019年7月10日に既に附属書XIVに収載済の4種のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DIBP)について、認可対象物質の収載根拠となる固有特性を追加するよう附属書XIVの改正勧告を公表[i])しました。


今回は、認可に関する初めての動向として、この改正勧告内容をご紹介します。


1. 4種のフタル酸エステル類に対する認可関連の経緯

CL物質や認可対象物質に収載される場合には、REACH規則第57条で定められた(a)から(f)までの次の6つの固有特性のいずれに該当するかが収載根拠として示されます。


(a) CLP規則基準で発がん性区分1A 又は区分1Bに分類される物質

(b) CLP規則基準で変異原性区分1A 又は区分1Bに分類される物質

(c) CLP規則基準で生殖毒性区分1A 又は区分1Bに分類される物質

(d) 附属書 XIIIの基準で難分解性、生体蓄積性及び毒性(PBT)を有する物質

(e) 附属書 XIIIの基準で極めて難分解性で高い生体蓄積性(vPvB)を有する物質

(f) 内分泌かく乱性を有するか、又はPBTもしくはvPvBを有するような物質であって、(d)又は(e)の基準を満たさないが、(a)から(e)に列記した他の物質と同等レベルの懸念を生じさせる、人又は環境に対する深刻な影響をもたらすおそれがあるとの科学的証拠がある個別に特定される物質


4種のフタル酸エステル類のうち、生殖毒性(第57条(c))を収載根拠としてDEHP、BBP、DBPは2008年に、DIBPは2010年にCL物質に特定[ii])されました。

その後、同様の収載根拠でDEHP、BBP、DBPは2011年に、DIBPは2012年に附属書XIVに追加[iii])され、日没日である2015年2月以降は認可申請を実施していなければ、4種のフタル酸エステル類そのもの、およびこれらを含む混合物の上市や使用が原則禁止され、今に至っています。


一方、CL物質の収載根拠については、2014年12月にDEHPに対して、生殖毒性に加え環境に対する内分泌かく乱性(第57条(f))が、さらに2017年7月に4種のフタル酸エステル類すべてに対して、健康に対する内分泌かく乱性(第57条(f))が追加されました。


この結果、4種のフタル酸エステル類については、附属書XIV収載当時はCL物質と附属書XIVの収載根拠は同一でしたが、現時点では異なった収載根拠となっています。


2. 4種のフタル酸エステル類に関する附属書XIVの改正勧告

今回公表された4種のフタル酸エステル類に関する附属書XIVの改正勧告は、これまでの新たな物質を追加するための勧告とは異なり、附属書XIVに収載済の4種のフタル酸エステル類について前述の収載根拠の差異をなくすための、次のように附属書XIVを改正する勧告となっています。


<DEHP>

第57条の固有特性として、健康に対する内分泌かく乱性(第57条(f))と環境に対する内分泌かく乱性(第57条(f))を追加

固有特性の追加に伴い、「食品接触材」や「医療機器」、「医薬品接触容器」用の物質・混合物、および「DEHPを0.1%~0.3%含む混合物」が新たに認可対象となるため、これらについて認可に関わる日没日および認可申請期限日を設定

除外用途として設定されている医薬品接触容器を削除

<BBP、DBP、DIBP>

第57条の固有特性として、健康に対する内分泌かく乱性(第57条(f))を追加

固有特性の変更に伴い、各物質を0.1%~0.3%含む混合物が新たに認可対象となるため、認可に関わる日没日および認可申請期限日を新たに設定


このように、収載根拠である固有特性の追加に伴って、従来は認可の対象外であった用途等が新たに認可の対象となることになります。


3. 固有特性に追加に伴う影響

REACH規則では、認可に関する内容は、第VII編(第55条~第66条)で規定されています。 ここでは、いくつかの認可の適用除外が定められており、今回のフタル酸エステル類の勧告に関連する事項としては次の適用除外が挙げられます。


<化粧品および食品接触材(第56条5項)>

発がん性(第57条(a))、変異原性(第57条(b))、生殖毒性(第57条(c))のみ、または健康影響のみで第57条(f)に該当するとして特定された物質については、化粧品および食品接触材用の物質・混合物は認可の適用除外とされています。


しかしながら、今回の改正勧告ではDEHPについて、従来の生殖毒性のみから、新たに環境に対する内分泌かく乱性が追加されたため、この適用除外条件に該当しなくなります。 そのため、これらの用途について新たに日没日や認可申請期限を設定する内容となっています。


<医療機器(第60条2項および第62条6項)>

認可の申請や審査において、医療機器への認可対象物質の使用による健康リスクは対象としないことが定められており、収載根拠が健康リスクのみであれば、医療機器用の物質・混合物は認可の適用除外とされています。

しかしながら、DEHPについては、新たに環境に対する内分泌かく乱性が追加されたため、この適用除外条件に該当しなくなります。


<混合物(第56条6項)>

混合物の場合は、次の2つの濃度による適用除外条件が定められています。

0.1wt%未満:難分解性・生体蓄積性・毒性(PBT)を有する物質(第57条(d))、極めて難分解性が高く生体蓄積性(vPvB)を有する物質(第57条(e))、第57条(f)に該当する物質

CLP規則が定める濃度限界値未満:上記以外の全ての物質

固有特性が従来の生殖毒性のみであれば、CLP規則の濃度限界値である0.3%が適用され、4種のフタル酸エステル類の濃度が0.3%未満の混合物は認可の適用除外となります。

しかしながら、今回の改正勧告では4種のフタル酸エステル類は、いずれも健康に対する内分泌かく乱性(第57条(f))が固有特性に追加されたため、適用除外となる濃度は0.1%となり、4種のフタル酸エステル類の濃度が0.1%~0.3%の混合物が新たな認可対象として、日没日や認可申請期限が設定されています。


これまで、収載根拠となる固有特性の追加については、CL物質に対してのみ実施されてきましたが、今回初めて認可対象物質についても動きが出てきました。 とはいえ、現時点ではECHAによる勧告段階であり、今後欧州委員会(EC)で法制化の手続きを経て正式に改正されることになります。


また、物質・混合物を輸出する日本企業の場合、すでに認可対象物質およびそれらを含む混合物のEUへの輸出をしていなければ特に影響はありません。 ただし、上記のような適用除外を活用している場合は、これまでのような認可対象物質の追加のみならず、固有特性の追加による影響も考慮することが求められることになります。


(井上 晋一)

[i] 4種のフタル酸エステル類に関する附属書XIVの改正勧告

https://echa.europa.eu/-/endocrine-disrupting-properties-to-be-added-for-four-phthalates-in-the-authorisation-list


[ii] ECHA 認可対象候補物質リスト(CL物質)

https://echa.europa.eu/candidate-list-table


[iii] ECHA 認可対象物質リスト

https://echa.europa.eu/authorisation-list

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