当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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ホルムアルデヒドの規制動向

2019年8月9日更新


ホルムアルデヒド(CAS No 50-00-0)は、ヒトの粘膜や目を刺激するシックハウス症候群の原因となる代表的な化学物質です。 ホルムアルデヒドを37% 以上含む水溶液はホルマリンと呼ばれます。 ホルマリンは学校の理科の実験室の標本に使用されていた記憶があると思います。


また、日本では建材などのF☆☆☆☆(F・フォースター)でお馴染みです。

このような身近な化学物質が各国で規制強化されています。


1.EUでの摘発状況

RAPEX(Safety Gate)1)で次の条件で検索すると4件ヒットしました。

  条件 YearsYears:2018 Free text:formaldehyde


(1)建材(建築製品規則):この合板は製造業者による性能宣言より高いレベルのホルムアルデヒドを室内空気に放出する。フローリングで覆われた設置板として使用しない場合や、拡散防止剤を十分に被覆しない場合には、室内空気中のホルムアルデヒド濃度が高すぎる可能性がある。

ホルムアルデヒドは目や呼吸器への刺激、悪心、不眠症を引き起こす可能性がある。また、吸入すると有毒であり、ガンを引き起こす可能性がある。


(2) 木製ゲームセット(玩具指令):パーティクルボードを使用したこの製品は周囲の空気中に、高濃度のホルムアルデヒドを放出する(測定値は最大981 mg / kg)。 


(3)毛髪矯正(straightening)器(化粧品規則):製品の上部に毛髪矯正溶液を供給するためのポンプを備えた褐色の1リットルの容器があり、多量のメチレングリコールを含有している(測定値は7%)。

メチレングリコールが毛髪矯正製品に使用されると、潜在的なヒト発がん物質として分類されているホルムアルデヒドを放出する可能性があり、健康上のリスクをもたらす。


(4) 木製ゲーム(玩具指令):製品には大量のホルムアルデヒド(7.2mg/kg)が含まれている。


さらに、2015年から2019年7月(8月2日確認)の摘発状況を上記と同じ条件で確認したところ14件でした。 内訳は、化粧品規則不適合(毛髪処理剤にホルムアルデヒドを含有) 7件、玩具指令不適合(素材の木材にホルムアルデヒドを使用)4件、建築製品規則不適合1件、フィンランド国内法不適合 2件で、このように多くの規制法で摘発されています。


2.EUの規制法

ホルムアルデヒドはC&Lインベントリ2)では、急性毒性 経口・経皮・吸入 共に区分3、皮膚腐食性 区分 1B、皮膚感作性 区分1、生殖細胞変異原性、発がん性 区分1Bになっています。

(1)REACH規則

ホルムアルデヒドはCLP規則附属書VIを修正する規則605/2014(2014年6月6日官報により告示)3)により、上記区分が確定しました。


REACH規則附属書XVII(制限)を修正する規則2018/675(2018年5月4日官報により告示)により、ホルムアルデヒドは、附属書XVIIの附録2に収載されました。 附属書XVIIの附録2に収載されたことで、附属書XVII Entry 28の対象となり、2018年12月1日から適用されました。

Entry 28は、ホルムアルデヒドとして、他の物質の構成成分として、または混合物として、0.1%以上含有している場合は、一部医薬品などの例外はありますが、上市及び使用が制限されます。


REACH規則附属書XVII(制限)を修正する規則2018/1513(2018年10月12日官報により告知)4)で、附属書XVII Entry72でホルムアルデヒドが対象となりました。


Entry72のジャケット、コートまたは室内装飾品中のホルムアルデヒドの濃度制限は段階的に適用されます。

2020年11月1日から2023年11月1日  300mg/kg

2023年11月1日以降 付録12に規定されている 75mg/kg

なお、分母は均質物質(homogeneous material)です。


(2)化粧品規則

Safety Gateで最も多く摘発された根拠法が化粧品規則(1223/2009)です。化粧品規則第14条(附属書に記載されている物質に対する制限)で、化粧品には、次のいずれも含まれてはならないとされています。


(a)禁止物質:附属書Ⅱに掲げる禁止物質

(b)規制物質:附属書IIIに定める制限に従って使用されない制限物質

(c)着色剤: 附属書IVに掲げるもの以外の着色剤

(d)防腐剤:附属書Vに掲げるもの以外の保存剤

(e)UVフィルター: 附属書VIに掲げるもの以外の紫外線フィルター


ホルムアルデヒドは附属書III5)に収載され、ネイル硬化剤に5%以下での使用に制限されています。


(3)食品接触材料規則(1935/2004)(規則FCM)

日本の伝統的製品の木製の食器などは海外で注目が集まり、輸出を検討している企業から、前記のSafety Gateで、木製の玩具や建材の摘発状況をうけて、対応のご相談が増えています。


食器などは規則FCMの対象となりますが、無処理の天然木材の物理的加工品は対象外となります。 接着剤を使用した集成材は、接着剤にホルムアルデヒドが含有している場合は、規則PIM(10/2011 Plastic Implementation Measure)による移行制限が適用されます。


(4)玩具指令

2018年12月18日に玩具指令(2009/48/EC)の附属書IIの附録Cにホルムアルデヒデを追加する修正法をWTOに通告6)しました。


附属書IIの附録Cは、36ヶ月未満の子供が使用する玩具または口にいれることを意図したその他の玩具に使用される化学物質の特別制限値が示されます。

ホルムアルデヒドの規制値案7)は次です。

 ・高分子玩具素材 1,5 mg / l(溶出量限度)

 ・樹脂接着木材玩具材料 0.1ml / m 3(放出限度)

 ・織物玩具素材 30 mg / kg(含有限度)

・革のおもちゃ素材 30 mg / kg(含有制限)

・紙のおもちゃ素材 30 mg / kg(含有限度)

・水性玩具素材 10 mg / kg(含有限度)。


3.アメリカの規制法

(1)連邦法

複合木材製品はTSCAの下位規定のホルムアルデヒド規制(e-CFR Title40 Part770)で、詳細な規定があります。放出基準は、§770.10(ホルムアルデヒド放出基準)8)で定めています。

 ・ベニアコアまたは複合コアで作られた広葉樹合板 0.05ppm(ホルムアルデヒドとして)

 ・中密度繊維板 0.11 ppm(ホルムアルデヒドとして)

 ・中密度繊維板(薄板) 0.13 ppm(ホルムアルデヒドとして)

 ・パーティクルボード 0.09 ppm(ホルムアルデヒドとして)


EPA(環境保護庁)は、自動車などの移動源からの排出の規制が大気浄化法の下位規定(e-CFR Title40 Part85)9)で規定しています。

EPAは、ホルムアルデヒドに関する情報を提供10)しています。

CPSC(消費者製品安全委員会)は、自主基準11)として消費者向製品のホルムアルデヒドを規制しています。


(2)Prop65

カルフォルニア州法のProp65(1986年安全飲料水および有害物質施行法)の対象物質リストにホルムアルデヒドが収載されています。


ホルムアルデヒド(ガス)は40μg/日が基準値です。

セーフハーバーレベル(40μg/日)を超える場合は、警告表示が要求されます。


4.その他の国の規制法

中国ではホルムアルデヒドは「危険化学品目録」に収載されています。


韓国ではホルムアルデヒドは「子供製品共通の安全基準」で75mg/kgが制限値となっています。


日本では「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で、乳幼児製品は、測定方法を定め、ホルムアルデヒドは検出されてはならないとしています。

厚生労働省は室内のホルムアルデヒドは100μg/m3(0.08ppm)としていますので、ホルムアルデヒドの放出量の少ないF☆☆☆☆材などを利用することになります。

ホルムアルデヒドは様々な国で、多様な法律で規制されています。ホルムアルデヒドは多用されていますので、リスクにより用途制限がされています。


製品によるリスクは企業でしか評価できなく、Prop65のセーフハーバーレベルなどを参考にして、用途制限、警告表示などを検討することになります。


なお、JASIS展(2019年9月5日)でビスフェノールA、ホルムアルデヒド、シロキサン、ナノ物質などの新たな規制物質に関するコンファレンス12)を開催します。

また、(一社)東京環境経営研究所のブースで無料窓口相談もお受けします。


(松浦 徹也)


引用

1) https://ec.europa.eu/consumers/consumers_safety/safety_products/rapex/alerts/?event=main.search&lng=en

2) https://echa.europa.eu/information-on-chemicals/cl-inventory-database

3) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32014R0605

4)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:02006R1907-20190702

5) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:02009R1223-20180801&from=EN

6) https://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/en/search/?tbtaction=get.notif&Country_ID=EU&num=635&dspLang=EN&basdatedeb=&basdatefin=&baspays=HUN&baspays=HUN&basnotifnum=30&basnotifnum2=&bastypepays=&baskeywords=&lang_id=EN&addendum_num=0&corrigendum_num=0&supplement_num=0&revision_num=0

7)https://members.wto.org/crnattachments/2018/TBT/EEC/18_6477_00_e.pdf

8) https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=7b1af0d73477f9dd7cc60abf32cabbe4&mc=true&node=pt40.34.770&rgn=div5#se40.34.770_110

9)https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?c=ecfr&tpl=/ecfrbrowse/Title40/40cfr85_main_02.tpl

10)https://www.epa.gov/formaldehyde

11)https://www.cpsc.gov/Regulations-Laws--Standards/Voluntary-Standards

12) https://www.tkk-lab.jp/jasis

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