当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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REACHにまつわる話~新たな制限の提案:繊維、皮革、毛皮製品への皮膚感作性物質の含有の制限~

2019年9月27日更新


ECHAから下記の新たな制限案が公表され、2019年12月19日迄意見募集が行われています1)。


・意見募集されている制限の内容

提案国:フランス

制限対象となる有害性物質:皮膚感作性 区分1、1A、1Bに分類される物質

制限の条件:上記の皮膚感作性の物質を含有する、一般消費者が着用時に皮膚と接触する繊維製品、皮革製品の上市の禁止。


今回の提案は、皮膚感作性 区分1、1A、1Bに分類される物質を、一般大衆向けの人の皮膚と接触する可能性のある繊維製品や皮革製品等の成形品に含有することを制限するものです。


制限の対象となる皮膚感作性 区分1、1A、1Bの物質は、CLP規則の附属書VIの調和分類には1,050物質がリストされており、また、提案ではまだ調和分類されていない分散染料24物質もが示されています。 さらに、これら1,074物質に限らず、皮膚感作性 区分1、1A、1Bに分類される他の物質にも適用されます。


制限提案では、成形品およびその構成部品について、販売時点での許容含有濃度を下記のように提案しています。


・CLP附属書VIの調和分類されている分散染料、および、提案書でリストされている調和分類されていな24の分散染料:含有されないこと(すなわち、検出されないこと)。

・6価Cr化合物:成形品を構成する個々の材料中の濃度1mg/kg未満

・ホルムアルデヒド:成形品を構成する個々の材料中の濃度75mg/kg未満

・p-フェニレンジアミン:繊維製品;250mg/kg、皮革製品;210mg/kg未満

・Ni化合物:繊維製品;130mg/kg、皮革製品;110mg/kg未満

・Co化合物:繊維製品;70mg/kg、皮革製品;60mg/kg未満

・上記以外の皮膚感作性区分1、1A、1Bに分類される物質:繊維製品;130mg/kg、皮革製品;110mg/kg未満

なお、殺生物製品規則(EU) 528/2012での殺生物製品中のへの使用が認可されている活性物質は除外されます。


本制限の対象となる人の皮膚と接触する製品は下記のように列挙されています。 後述するエントリー#72の対象製品と同じです。


・衣服および付属品

・衣服と同様の程度、通常または合理的に予見可能な使用条件下で人間の皮膚と接触する衣服以外の成形品

・履物

なお、2023年1月31日までに使用された中古製品には適用されません。 また、個人用保護具規則 (EU) 2016/425、医療機器規則 (EU) 2017/745の対象製品も除外されています。


既にREACH附属書XVIIには、下記のような人の皮膚と接触する可能性のある成形品に関しては、下記の制限があります。

エントリー#7:トリス(1-アジリジニル)ホスフィンオキシド(難燃剤)

       (日本国内でも、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」2)で、繊維製品のうち、寝衣、寝具、カーテン及び床敷物に使用することが禁止されています。)

エントリー#27:Ni

エントリー#43:アゾ着色剤、染料(附属書XVIIの付録9、10にリストされている物質)(「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」でも、同様の規制があります。)

エントリー#47:6価Cr化合物

エントリー#72:附属書XVIIの付録12にリストされたCMR物質

今回の制限提案は、上記のエントリー#43、47、72の制限とは重複する部分があり、整合を取るために、これらエントリーの修正を行う必要があることもあわせて提案されています。


REACHでは人の健康や環境への悪影響を及ぼすことが懸念される物質は、認可や制限の対象として規制されています。 このコラムでも、度々、取り上げていますが、今回改めて、どのような有害性の物質が規制の対象とされるかを整理して紹介したいと思います。


REACHでは、認可や制限の対象物質としては、下記の有害性を有する物質が提案され、規制の対象となります(REACH規則57条、附属書XV)。

(a) CLP規則で発がん性区分1A 又は区分1Bに分類される物質

(b) CLP規則で変異原性区分1A 又は区分1Bに分類される物質

(c) CLP規則で生殖毒性区分1A 又は区分1Bに分類される物質

(d) REACH規則附属書XIIIに基準に該当する難分解性、生体蓄積性で毒性のある物質(PBT物質)

(e) REACH規則附属書XIIIに基準に該当する極めて難分解性で高い生体蓄積性の物質(vPvB物質)

(f) 内分泌かく乱性を有するか、REACH規則附属書XIIIに基準には当てはまらないがPBT、vPvBであり、(a)から(e)等の有害性物質と同等レベルの懸念を生じさせる、人又は環境に対する深刻な影響をもたらすおそれがあるとの科学的証拠があり、かつ第59 条に定める手続きに従って個別に特定される物質


これまで、認可や制限として特定された物質の多くは、上記の(a)から(e)の有害性の物質でした。

前述の制限のエントリー#7は(c)、#43は(a)、#27は(f)で皮膚感作性、#47は(a)から(c)および(f)、#72は(a)から(c)に該当する物質です。 このほかに、(f)の有害性を有する物質として、エントリー#46、46aのノニルフェノール、および、エトキシ化ノニルフェノールが、環境有害性を有する物質として制限されている例があります。


一方、認可の関係では、認可対象候補にリストされた物質(CLS)の多くは(a)から(e)に該当する物質ですが、 (f)に該当する物質としては、次の有害性を有する物質がリストされています。


・内分泌かく乱性の物質

・反復暴露により特定臓器への障害を起こす物質

・呼吸器感作性のある物質


内分泌かく乱性物質の多くは、CMRにも分類されるものですが、アルキルフェノール類の化合物、1,7,7-トリメチル-3-(フェニルメチレン)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-オン(3-ベンジリデンカンファー)が環境への影響があるとしてリストされています。 ノニルフェノールやそのエトキシ化化合物はすでに制限の対象にもなっています。 認可の対象とする場合には、どのような条件が付けられるか気になります。


反復暴露による特定臓器への障害を起こす物質としては、カドミウム及びカドミウム化合物が9件リストされています。 これらの物質は発がん性でもあり、すでに制限の対象にもなっています。


呼吸器感作性物質としては、無水有機カルボン酸等の5件リストされています。 これらの物質は、他の(a)から(e)には該当しないとしてリストされています。


なお、制限は、物質のリスクを考えて、製造、上市、使用、あるいは、含有する成形品の上市に関して規定されますが、認可はEU域内での上市、使用に関して規定されるもので、認可対象となる物質を含有する成形品のリスクがある場合に、制限の対象になります。


CLSの中には、既に制限の対象になっている物質もあります。 これらの物質がどのような条件を付けて、附属書XIVに収載されるかは気になるところです。


1) https://echa.europa.eu/restrictions-under-consideration

2) http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/katei/kijyun.html


(林  譲)

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