当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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WFDに基づくSCIPデータベースの概要

2019年10月3日更新


9月4日公開の本コラム「成形品中のCLS情報に関する「AskREACHプロジェクト」」[1]では、REACH規則第33条による消費者の知る権利を確保するための自主的な取り組みである「AskREACHプロジェクト」を取り挙げました。

その際に、別の動きとして、2018年6月に改正された廃棄物枠組み指令(WFD)に基づき、次の3点を目的とした「成形品中の認可対象候補リストに収載された物質(CLS)情報に関するデータベース」をECHAが構築中であることにも触れていました。


・成形品中のCLSの代替促進によって有害廃棄物を削減する

・成形品中のCLSを追跡管理できる情報を有することで、当局が成形品のライフサイクル全般で適切な措置を講ずることを可能とする

・廃棄物処理業務の改善に必要な情報を提供する


9月になり、ECHAがこのデータベース(製品含有懸念物質(SCIP)データベース)の詳細情報要件等の関連情報を公表しましたので、今回はその概要をご紹介します。


1.WFDの要求事項

2018年6月の改正[2]によって、無害な物質循環を図るためには、製品および材料中のCLSの含有有無について全ライフサイクルを通じた情報伝達が必要であることが示されました。その対応として、成形品供給者およびECHAに対する次の義務が課されました。


・成形品供給者:REACH規則第33条で定められている成形品中のCLSの情報伝達内容を2021年1月5日以降、ECHAに提出すること(第9条1項(i))

・ECHA:2020年1月までに成形品供給者が提出するデータを格納し、廃棄物処理者に公開するとともに、要求があれば消費者にも公開するデータベースを構築すること(第9条2項)


この新たな義務を受けて、ECHAはSCIPデータベースの開発を進めています。


2.SCIPデータベースの詳細情報要件[3]

今回公表されたSCIPデータベースの詳細情報要件では、2018年10月に公表された「CLS含有成形品のデータベースに関するシナリオ案の技術支援文書」で記載されていた情報要件を概ね踏襲した内容となっており、情報要件として、次の12の必須項目と10の任意項目で構成される20項目が示されました。


【成形品特定情報】

・製品名(必須):提供する成形品の名称

・その他の名称(任意):ブランドやモデル名等、名称を補足する情報

・成形品識別子(必須):欧州商品コード(EAN)、国際取引商品コード(GTIN)、グローバル商品分類(GPC)等の各種商品コード、カタログ番号、ECHAが付与するID等

・その他の成形品識別子(任意):上記を補足する識別子

・商品分類(必須):合同関税品目分類表(CN)コード等を選択

・EU域内製造の有無(必須):はい/いいえ/非開示のいずれかを選択

・写真(任意):供給する成形品の写真

・成形品特性の種別・任意):高さ、長さ、幅、直径、密度、重量、容積、色等、他製品と区別するための情報

・成形品特性の値(任意):上記の値

・成形品特性の単位(任意):上記値の単位


【複合成形品の場合】 ※複合成形品の場合は必須

・複合成形品中のCLS含有成形品の情報(必須):複合成形品中のSVHC含有成形品の情報(上記成形品特定情報の各項目)

・成形品の数(必須):上記CLS含有成形品の数


【安全な使用に関する情報】

・安全な使用方法(必須):安全な使用に関する情報。特別な情報がない場合は、「CLS情報の開示以外に安全な使用に関する情報はない」旨を記載

・分解手順(任意):分解説明書(PDFファイル等)と使用言語


【CLS物質情報】

・CLSリストのバージョン(必須):確認したCLSリストのバージョン(〇年〇月版)

・含有するCLS(必須):CLSリストから物質または物質群を選択

・CLS物質群中の個別物質名(任意):CLSが物質群として指定されている場合に成形品に含まれる個別物質の名称

・CLS物質群中の個別物質のEC番号(任意):上記個別物質のEC番号

・CLS物質群中の個別物質のCAS番号(任意):上記個別物質のCAS番号

・含有濃度幅(必須):0.1~0.3wt%、0.3~1.0wt%、1.0~10.0wt%、10.0~  20.0wt%、20.0~100wt%、0.1~100wt%の濃度幅から選択


【CLSの含有箇所に関する情報】※材料分類か混合物分類のいずれか必須

・材料分類(必須):CLSが材料に含有している場合は、ECHAの材料リストから選択

・ 混合物分類(必須):CLSが成形品の加工・組立時に用いられる混合物(接着剤、はんだ、コーディング材等)に含有している場合は、「欧州製品分類システム(EuPCS)」から選択


REACH規則第33条では、安全な使用のための十分な情報として最低限「物質名」を提供することが定められています。 しかしながら、SCIPデータベースの情報要件では、使用者による安全な使用のみならず、廃棄段階での安全な使用の観点から、どのような種類の成形品の、どの部分に、どのCLSが、どの程度の濃度で含有しているかを明確にするよう求めていると言えます。


3.SCIPデータベースに関する義務対象者

SCIPデータベースの詳細情報要件の公表とあわせて、15種のQ&A[4]も公表されました。その中には、ECHAにSCIP情報を提出する義務対象者に関する内容として、次のような内容が説明されています。


・ 義務対象者はEU域内の製造者や加工者、輸入者、流通者等の成形品供給者である。   ただし、商品を直接消費者に提供する小売業者等は対象外であること

・ EU域外成形品については、EU域内輸入者が義務を負う。   ただし、EU域外の成形品供給者は、EU域内輸入者がSCIP情報提供の義務を果たすために必要な情報を提供することでEU輸入者を支援しなければならないこと


4.今後の予定

今回SCIPデータベースの詳細情報要件が公表されましたが、まだSCIPデータベースそのものは公開されていません。ECHAは、EU域内の成形品供給者の義務が開始される2021年1月5日に向けて、次のようなスケジュールで作業を進めていく予定となっています。


・2019年秋:テストユーザーグループを立ち上げるとともに、利害関係者とのワークショップを開催(11月12日予定)

・2020年初:プロトタイプ版データベースの立ち上げ

・2020年7月:EU加盟国がWFDの国内法に反映する期限

・2021年1月5日:成形品供給者によるECHAへの情報提出義務が開始


5.最後に

世界で例を見ない規制当局によるSCIPデータベースの構築は注目されるところです。 また、成形品中のCLSに対する新たな義務によって、成形品中のCLSの管理や代替がこれまで以上の求められることになります。 日本企業としては、SCIPデータベースについては、直接的な義務はないものの、サプライチェーンを通じた情報伝達ツール等の活用によるCLS含有情報の管理がこれまで以上に求められることになります。


(井上 晋一)

[1] 本コラム(2019年9月4日付)

https://www.tkk-lab.jp/post/reach20190904


[2] WFDの改正(2018年6月)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX%3A32018L0851


[3] SCIPデータベースの詳細情報要件

https://echa.europa.eu/documents/10162/28213971/scip_information_requirements_en.pdf/9715c4b1-d5fb-b2de-bfb0-c216ee6a785d


[4] SCIPデータベースに関するQ&A

https://echa.europa.eu/support/qas-support/browse/-/qa/70Qx/view/topic/Waste+Framework+Directive+-+SCIP+database

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