当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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REACHにまつわる話~REACH委員会実施規則の公布~ -段階的導入物質の年間当たり算出方法の適用期限等について-

2019年10月25日更新


予備登録した段階的導入物質の登録期限は、昨年2018年5月31日で一旦終了していました。 しかし、段階的導入物質の年間製造・輸入量の算出方法の規定を、2019年12月31日までとするREACH規則を修正する委員会実施規則が、2019年10月10日のEU官報で公布されました(委員会実施規則(EU)2019/1692)1)。


今回は、この内容についてご紹介いたします。


1.段階的導入物質の年間製造・輸入量の算出方法の適用期限の明確化

REACH規則では、ご承知の通り、年間製造・輸入量が1トン以上の物質について、登録義務があります。 しかし、EUにおける既存化学物質である「段階的導入物質」の年間製造・輸入量はREACH規則第3条の定義では下記のように定義されています。


第3条30項

年間当たりとは、特記されない限り、一暦年当たりをいい、少なくとも連続する3年間に輸入又は製造された段階的導入物質については、年間量は前3 暦年間の平均の製造量又は輸入量に基づき計算される。


このように、REACH規則では、年間1トン以上の段階的導入物質を製造・輸入している企業者の円滑継続のために、継続して事業を継続している場合の年間当たりの量の算出方法を、過去3年間の平均とする特例規定を設けていました。 しかしながら、この定義によりますと、下記のようなことが起こる可能性がありました。


① 連続3年間の内、暦年で1トンを超えるが、その他の2年では1トン未満で、この3年間の平均では、1トン未満であれば、登録せずに製造・輸入を続けることが出来る。


② 登録済みの物質で、連続3年間の内、暦年で一段階上の情報要求の製造・輸入量であるが、3年間平均では、一段階上のトン数未満であり、登録情報の更新をしないで製造・輸入を続けることが出来る(例えば、3年間平均で1~100トン未満であったので100トン未満の登録をしていた。その後も、3年間の内、1年間だけ100トンを超えたが、3年間平均では100トン未満であったので、登録情報の更新をしないで、製造・輸入を続けることが出来る。)

予備登録された、1トン以上100トン未満のCMR物質以外の段階的導入物質については、2018年5月31日に物質の登録期限が終了しました。

しかし、2018年5月31日まで登録されたデータについては、2017年12月31日までの過去3年間の平均で1トン以上の段階的導入物質は含まれていますが、2018年12月31日までの登録については含まれていません。 また、過去3年の間では暦年で年間1トン以上の年があっても、3年間の平均量が1トン未満であれば、登録されていない可能性があります。 今回の委員会実施規則では、段階的導入物質の年間量の計算方法の適用を2019年12月31日で終了させるものです。


段階的導入物質については、前記しました①に該当すれば、予備登録の有無にかかわらず、登録をせずに製造・輸入が続けられてことになっていました。 しかし、今回の委員会実施規則により、段階的導入物質については、2020年以降、暦年で1トン以上になる前に登録をしておく必要があります。 他方、非段階導入物質、すなわち、EU域内で新規物質に該当する物質については、従来から年間1トン以上になる前に、登録する必要がありました。 この点で、段階的導入物質と非段階的導入物質は、2020年以降、同じ扱いになります。


すなわち、今回の実施規則の目的の一つには、段階的導入物質と非段階的導入物質の扱いを同じにすることにもあります。


また、今回の委員会実施規則では、注意喚起と明確でなかった条項についても、明確化する下記の項目があります。


2.危険有害性の低い10トン未満(低生産量)のデータ要求条項の確認

段階的導入物質の内、年間1トン以上10トン未満の下記のREACH規則附属書Ⅲの基準に該当しない場合には、物理化学的情報のみで登録できることになっています。


 附属書Ⅲの基準

(a) 発がん性、変異原性又は生殖毒性に関する区分1A 又は区分1B の分類基準又は附属書XIII の基準に適合することが見込まれる( (Q)SARs の適用又は他の証拠による)物質

(b) 下記の物質

(ⅰ) 特に分散的又は拡散的な用途で、消費者用の混合物に使用されるか又は消費者用の成形品に組み込まれるものであって

(ⅱ) CLP規則 に基づいて人の健康又は環境影響のエンドポイントに関する分類基準に適合することが見込まれる((Q)SARs の適用又は他の証拠による)もの


ここで、注意しておかなければならないことは、段階的導入物質の年間計算方法の適用が2019年12月31日で終了することにより、前記②の特典がなくなることです。


3年間平均が10トン未満の段階的導入物質を物理化学的情報だけで登録していても、2020年以降は暦年で10トン以上になれば、毒性学的情報および生態毒性学的情報等の登録情報の更新が必要となります。


3.データ共有の義務、SIEF終了後の情報交換の要求について

REACH規則では、登録情報の共有を求めています。 今回の委員会実施規則で、段階的導入物質の年間当たりのトン数の算出法の適用期限は2019年12月31日までとなりますが、これまで通り、登録物質のデータ共有条項は、継続して適用されます。


REACH規則では段階的導入物質を予備登録した場合は、情報交換するためのSIEFが設けられていましたが、2018年5月31日でこの活動は終了していました。 しかし、今回公布の委員会実施規則では、データ共有のためのSIEFに似た情報交換を継続して行うことを求めています。


現在は、正式なSIEFの活動は終了していますが、段階的導入物質を予備登録したが未登録の場合は、SIEFのメンバーでありましたから、SIEFの代表者の連絡先の情報は取得済みです。 この情報を利用して、既存登録の情報の利用を交渉することになります。


他方、段階的導入物質を予備登録していない、あるいは、非段階的導入物質の場合は、これから登録しようとする物質が既に登録されているかどうかの確認をECHAに問い合わせることが、引き続き求められています。 また、登録情報の共有を行うことが、依然として求められます。


また、委員会実施規則では、REACH規則第30条のSIEF活動での情報交換の合意が不成立となった場合の規定を2019年12月31日までとしています。 この条項の意味するところの真意を測りかねていますが、登録12年後からは、登録済みの情報を自由に利用できることを踏まえての規定ではないかと憶測しています。


参考資料;

1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32019R1692&from=EN


(林  譲)

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