当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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~化学物質の規制管理の手順~  -台湾の実績報告制度の施行を機に、EU,米国の進め方の整理と比較―

2019年11月22日更新

化学物質の生産や使用が人の健康や環境にもたらす悪影響を2020年までに最小化するヨハネスブルグ・サミット(WSSD)で設定された目標に向けて、各国・地域では化学物質管理の法整備が進められています。 各国・地域のアプローチはそれぞれ特徴があり、相違していますが、基本的には「リスクベース」の規制・管理を行うことでWSSDの目標の達成を目指しています。


その先頭を走っているのがEUのREACH規則といえます。 REACHでは、リスクベースの規制・管理を行うために、既存化学物質と新規化学物質を区別せずに、年間1トン以上の登録を義務化しています。 トン数が増えれば、登録情報の更新が必要です。 登録情報から、化学物質の有害性情報、EU域内での使用量や用途等の情報を収集し、規制・管理が必要な物質を優先して抽出するために、CoRAPで評価を行っています1)。 CoRAPの最新の動きについては11月15日付けのコラムをご参照ください。


その対照的なアプローチをしているのが、米国のTSCA2)です。 米国では既存化学物質リスト(TSCAインベントリー)に収載されていない物質を新規化学物質として、量にかかわらず、R&D以外については何らかの届出が求められています。 一方、既存化学物質については、、企業が2006年から2016年の間に製造・輸入、あるいは使用していたとして届出された物質は、「active substance」、それ以外の物質は「inactive substance」として分類され、TSCAインベントリーに記載されています。 (なお、「inactive substance」の化学物質を今後輸出する場合は、「active substance」にするための届出が必要です。)


更に「active substance」は、「優先度が高い(High- priority)物質」と「優先度が低い(Low-priority)物質」に分類され、「優先度が高い(High- priority)物質」から、順序をつけてリスク評価されることになっています。 優先付けに際しては、米国で蓄積されている情報が利用されますが、TSCAの報告制度(CDR)のデータも活用されます。CDRは、4年間隔で報告を求めています。 前回は2016年が報告の年でした。 次回は、2020年です。 CDRでは、前年の製造・輸入量の実績を報告しますが、通常の既存化学物質の場合は年間25,000ポンド(約11t)以上、SNURや規制されている既存化学物質については年間2,500ポンド(約1.1トン)以上の場合が対象です。


EUと米国の両方を取り入れているのが、台湾です。台湾では、新規化学物質と既存化学化学物質の双方について、登録制度と報告制度を設けています。


台湾の化学物質の登録制度は、毒性懸念物質管理法3)における「新規化学物質および既存化学物質登録弁法」4)と職業安全衛生法5)における「新化学物質登記弁法」の2つの法律がありました。


新規化学物質の登録については、2つの法律で異なる規定がありましたが、2019年3月11日に両法を整合するための修正が行われ、職業安全衛生法にかかわる新規化学物質の登録は「新規化学物質および既存化学物質登録弁法」に移管されました6)。 これにより、新規化学物質は一回の登録申請手続きで、両法の手続きが行えることになりました。


既存化学物質については、2段階の登録をすることを求めています。 2016年3月1日までに年間100㎏以上製造・輸入していれば、第1段階登録を行わなければなりませんでした。 その後に100㎏以上になってからの規定はありませんでしたが、修正弁法で、100㎏以上になった場合は、6ヵ月以内に第一段階の登録を行わなければならないことが明確に規定されました。 また、100㎏未満の場合でも、第1段階登録を行うことが出来ることになりました。


第1段階登録での提出情報は、登録者情報、CAS番号等の化学物質特定情報、製造・輸入年間量、用途情報です。 第1段階登録書類を提出しますと、審査手続き後、第1段階登録番号が付与されます。


修正「新規化学物質および既存化学物質登録弁法」では、第2段階登録の対象とする既存化学物質として、106物質を指定しています。 第2段階登録(弁法では「標準登録」と呼ばれています)では、REACHと同じく製造・輸入量が多くなると、提出しなければならない情報が多くなります。 これらの物質については、第1段階の製造・輸入量および登録時期によって下記の登録期限を設けています。


1)第1段階登録を2019年12月31日までに行っている場合

・年間量:1~100t;2022年12月31日までに

・年間量:100t以上;2021年12月31日までに

2)第1段階登録を2020年1月1日以降に行った場合

・年間量;1~100t:翌年1月1日から3年以内

・年間量;100t以上:翌年1月1日から2年以内

3)第1段階登録を、2019年12月31日以前に1トン未満で行い、

・2019年12月31日までに年間1t以上になった場合:2022年12月31日

・2020年1月1日以降に年間1t以上になった場合:その翌年1月1日から3年以内


なお、100トン以上の場合に、必要な試験情報が間に合わない場合は、登録期限の6ヵ月前までに申請することによって、その試験情報の提出期限を延長することが可能になっています。


修正「新規化学物質および既存化学物質登録弁法」では、登録物質の年間製造・輸入量の報告制度が、新たに設けられ、2020年4月1日から施行されます。 この制度では、登録した新規化学物質および既存化学物質(第1段階登録、第2段階登録にかかわらず)の前年度の製造・輸入量を、4月1日から9月30日までの間に、登録者、登録番号および製造輸入量を毎年報告する必要があります。


既存化学物質の規制に利用する情報は、第2段階登録で収集することを考えながらも、その期限がかなり先であることを考えますと、第1段階登録の報告の実績量を利用することを考えているように思います。


これらの登録や報告の情報は、毒性懸念化学物質法だけではなく、職業安全衛生法での化学物質の規制の検討にも用いられることになります。


韓国の改正K-REACH7)では、それまで設けていました報告制度を廃止しました。 今後の規制は、年間1トン以上の既存化学物質および新規化学物質の登録での情報を用いて検討されることになります。


中国では、現在は、登録された新規化学物質についての前年度の実績報告を求めていますが、既存化学物質の報告制度はありません。 2019年9月2日にWTOに通報されていました「化学物质环境风险评估与管控条例(環境リスク評価と化学物質の規制に関する条例)」案8)では、3年間の既存化学物質の生産、加工、使用に関する基本情報を3年ごとに所管官庁に報告する義務を課す条項があります。既存化学物質の報告制度を新たに制定するものです。


参考資料;

1) https://echa.europa.eu/regulations/reach/evaluation/substance-evaluation/community-rolling-action-plan

2) https://www.epa.gov/laws-regulations/summary-toxic-substances-control-act

3) https://oaout.epa.gov.tw/law/LawContent.aspx?id=FL015852

4) https://oaout.epa.gov.tw/law/LawContent.aspx?id=GL005417

5) https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=N0060001

6) https://csnn.osha.gov.tw/content/home/index.aspx

7) http://www.law.go.kr/%EB%B2%95%EB%A0%B9/%ED%99%94%ED%95%99%EB%AC%BC%EC%A7%88%EC%9D%98%20%EB%93%B1%EB%A1%9D%20%EB%B0%8F%20%ED%8F%89%EA%B0%80%20%EB%93%B1%EC%97%90%20%EA%B4%80%ED%95%9C%20%EB%B2%95%EB%A5%A0

8) https://members.wto.org/crnattachments/2019/TBT/CHN/19_4789_00_x.pdf


(林  譲)

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