当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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EU POPs規則附属書Ⅰへの物質追加の動向について

2019年12月16日更新


「残留性有機汚染物質 (Persistent Organic Pollutants : POPs) の製造、上市、使用を禁止、制限するPOPs 条約1) と「長距離越境大気汚染条約議定書 (以降「議定書」)」2」の義務を履行するためEUにおいては欧州議会・理事会規則 (EU) No 850/2004が2004年5月に発効、施行されてきました。

今般、その後の改正規則を統合し、用語の統一、欧州化学品庁 (ECHA) の役割明確化、報告監視手続きの合理化、簡易化、自動化等を盛り込んで「残留性有機汚染物質に関する2019年6月20日付「欧州議会・理事会規則2019/1021 (以降「新法」と略称)」が2019年6月25日に公布・施行されました。(2019年6月25日付官報L169に掲載)

これに伴って規則(EU) No 850/2004は2019年7月15日に失効しています。


新法は以下の内容を含んでいます。

(1) 第3条

・附属書Ⅰに収載されている物質の製造、上市、使用を禁止する。

附属書Ⅰには、POPs条約と議定書の両方で指定されている物質および条約のみで指定されている物質 (パートA) と議定書のみで指定されている物質 (パートB) の2つのリストで構成されている。

・附属書Ⅱに収載されている物質の製造、上市、使用を制限する。 ただし、附属書Ⅱには現 在のところ物質は収載されておらず空白である。

附属書Ⅰと同様に、POPs条約と議定書の両方で指定されている物質および条約のみで指定されている物質 (パートA) と議定書のみで指定されている物質 (パートB) の2つのリストがある。

(2) 第6条

・附属書Ⅲに掲載されている物質を排出削減の対象とする。加盟国は長期的にこれらの物質 の排出ゼロを目指す。

(3) 第7条

・附属書Ⅳに掲載されている物質を含む廃棄物またはこれらの物質に汚染された廃棄物を管理対象とする。 これらの廃棄物の処分や再生利用の結果生じる物質が残留性有害汚染 物質の性質を示さないよう附属書Ⅴのパート1に従って処理を実施する。

・附属書Ⅴに掲載されている廃棄物管理を加盟国に義務づける。 同附属書パート1には廃 棄物の処理方法が記載されている。(第7条 (2) )

同パート2には、除染不可能であり、処理により環境への負荷が生じる特定の廃棄物管理方法要件が記載されている。 (第7条 (4) (b) )

第15条

・附属書の修正

欧州委員会は、POPs条約または議定書の附属書に収載されている物質のリストの変更に適応するために、本規則の附属書Ⅰ、ⅡおよびⅢを修正するため、第18条に従って委任された行為を採択する権限を有する。


欧州委員会は、新法の附属書ⅠパートAの修正に関し、委任法に従い以下の2つの委員会委任規則の草案を提出しています。


1. PFOAその塩およびPFOA関連化合物を規則 (EU) 2019/1021附属書Ⅰ収載に関する修正の委員会委任規則草案3)

(草案前文要約)

・POPs条約第8条(9)にしたがい、第9回締約国会議 (COP9) においてPOPs条約附属書AにPFOAその塩及びPFOA関連化合物を収載するための修正を決定した。

・附属書PFOAその塩およびPFOA関連化合物は、軽減条件に従いREACH規則附属書ⅩⅦに収載されている。 POPs検討委員会は、それらの軽減すべてをCOPに対し推奨するものではないと評価した。

その結果、COPにより採択された決定にはREACH規則でそれ以前に認められていたすべての軽減ではなく、その中の幾つかの軽減が含まれている。 更にPOPs検討委員会による評価は最近の情報に基づいていることおよび理事会決定 (EU) 2019/639 を考慮し、新法附属書ⅠにおいてPOPs条約で認められている共同体において必要とされる特定の除外のみを許可するのが妥当であるとしている。

・条約のCOP9は第9回の会合においてREACH規則附属書ⅩⅦに含まれていない特定の除外について決定を行った。

その決定は薬剤製造の目的でパーフルオロオクチル沃化物を含んだパーフルオロオクチル臭化物の使用に関係している。

本使用の情報は、REACH規則附属書ⅩⅦにおいてPFOAその塩およびPFOA関連化合物の収載当時に利用できなかったことおよびECHAによるその後の評価を考慮し、新法附属書Ⅰに収載することが妥当である。

・新法第3条の共同体内で適用と執行強化のため、物質、混合物、成形品中に非意図的な汚染物質として生ずるPFOAその塩およびPFOA関連化合物の制限値を設定すべきである。 その制限値は、PFOAとその塩に対しては、0.025mg/Kg、個々のPFOA関連化合物またはそれ等の組み合わせに対しては、1mg/Kgに設定さるべきである。

現在、それらの許容濃度が適用できない場合のアプリケーションに対しては、制限値を厳しくするため委員会によるレビューに従い、3年以内により厳しい許容制限値が確立されるべきである。

・委員会が、現在削徐を計画中のREACH規則附属書ⅩⅦのPFOA関連化合物に関する制限は、2020年7月4日に適用が開始される。

・これとの一貫性と新法の実施促進のため、本規則は同日から適用されるべきである。


(草案本文)

第1条 新法附属書Ⅰは本規則の附属書のように修正される。

第2条

本規則は、EU官報の発行日の20日後に発効し、2020年7月4日から適用される。


(草案附属書)要旨

規則 (EU) 2019/1021附属書ⅠパートAに以下のエントリーが追加される。

(表形式にて左欄から物質、CAS No 、EC No および中間使用またはその他仕様に関する特定の除外が記載されている。)


物質欄記載内容は以下である。

パーフルオロオクタン酸 (PFOA) 、その塩およびPFOA関連化合物は以下を意味する。

(ⅰ) すべての分岐異性体を含むパーフルオロオクタン酸

(ⅱ) その塩 

(ⅲ) PFOAに分解する、構造要素の一つとして (C7F15) C を持ち直線または分岐のパーフルオロヘプチルグループを有するすべての物質 (塩およびポリマーを含む。) を包含するすべてのPFOA関連化合物


以下の化合物はPFOA関連化合物としては含まれない。

(ⅰ) C8F17 - X (ここにおいて X= F、Cl、Br)

(ⅱ) CF3[CF2]n-R’ によりカバーされるフルオロポリマー (ここにおいてR’ = n > 16 のすべてのグループ )

(ⅲ) 炭素数8以上のパーフルオロカーボンを持つパーフルオロアルキルカルボン酸 (それ等の塩、エステル、ハロゲン化合物及び無水物を含む。)

(ⅳ) 炭素数9以上のパーフルオロカーボンを持つハーフルオロアルカンスルホン酸およびパーフルオロリン酸 (それらの塩、エステル、ハロゲン化合物および無水物を含む。)

(ⅴ) 附属書Ⅰに収載されているパーフルオロオクタンスルホン酸とその誘導体


中間使用またはその他仕様に関する特定の除外の内容は以下である。

1. 第4条 (1) ポイント(b) はPFOAまたはすべての塩が物質、混合物、成形品中に存在する場合、0.025mg/kg (重量比 0.0000025% ) 以下の許容濃度が適用される。

2. 第4条(1) ポイント(b) はPFOA関連化合物またはPFOA関連化合物の組合せが物質、混合物、成形品に存在する場合、1mg/kg (重量比 0.0001%) 以下の許容濃度が適用される。

3. 第4条 (1) ポイント(b) は、それらの物質がREACH規則第3条15項(c) で使用され、炭素数6以下でフルオロケミカル製造のためにRRACH規則第18条 (4) (a) に設定されている制御された条件を厳密に実施しているならば、PRFOA関連化合物は20mg/kg (重量比.0002%) 以下の許容濃度が適用される。

この除外は、委員会により [この修正規則施行後3年目]までにレビューと評価がされなければならない。

4. 第4条(1) ポイント (b) は、PFOA とその塩が400キログレイズまでのガンマー

線により製造されるPTFE マイクロパウダー中に存在している場合の許容濃度は

1mg/kg (重量比 0.0001%) 以下が適用される。

PTFEマイクロパウダーの製造、使用中PFOAの放出は避けるべきで、もし不

可能であれば可能な限り減少させねばならない。

この除外は、委員会により[本修正規則の施行後3年目]までにレビューと評価が

なされねばならない。

5. 上記にかかわらず、PFOAとその塩およびPFOA関連化合物の製造、上市および使用は以下の目的においては許可されねばならない。

(a) 半導体の製造におけるフォトリソグラフィーまたはエッチングプロセスは、2025年7月4日まで。

(b) フィルムに適用されるフォトグラフィックコーテイングは、2025年7月4日まで。

(c) 作業者の健康と安全に対するリスクを及ぼす危険な液体から作業者を保護するための撥油、撥水繊維は、2023年7月4日まで。

(d) 侵襲性および埋込型の医療装置は、2025年7月4日まで。

(e) 以下の生産のためのPTFEとPVDFの製造。

(ⅰ) 高性能耐食性ガスフィルター膜・水フィルター膜、医療用繊維フィルター膜

(ⅱ) 産業廃棄物用熱交換装置

(ⅲ) 揮発性有機化合物およびPM2.5 粒子の漏れを防止可能な産業用シーラント

6. 上記にかかわらず、PFOAその塩およびPFOA関連化合物の使用は、移動および固定両システムを含む液体燃料蒸気抑制用消化泡および液体燃料火災 (クラスB火災) には以下の条件で、2025年7月4日まで使用が認められる。

(a) PFOAその塩およびPFOA関連化合物を含むまたは可能性のある泡消火剤は訓練用に使用してはならない。

(b) PFOAその塩およびPFOA関連化合物を含むまたは可能性のある泡消火剤はリリースが阻止されていなければ、テストに使用してはならない。

(c) 2022年末までにPFOAその塩およびPFOA関連化合物を含むまたは含む可能性のある泡消火剤の使用はすべてのリリースが含まれている場合、当該サイトにおいては制限されるべきである。

(d) PFOAその塩およびPFOA関連化合物を含むまたは含む可能性のある泡消火剤の貯蔵および廃棄は第5条および第7条に従いそれぞれ管理されるべきである。

7. 上記にかかわらず、パーフルオロオクチル沃化物を含んでいるパーフルオロオクチル臭化物の製薬の目的のための使用は遅くても2036年12月31日までに委員会によるレビューと評価に従い認められるべきである。

8. 2020年7月4日以前に共同体において使用されているPFOAその塩およびPFOA関連化合物を含んでいる成形品の使用は、許可されるべきである。

第4条 (2) 第3、第4文節はそのような成形品と関連して適用しなければならない。


2. Dicofol のリスト収載に関する規則 (EU) 2019/1021の附属書Ⅰを修正する委員会委任規則 4)

(草案前文)

条約の附属書A (削減) には、締約国に禁止することを要求および/または製造、使用および輸出入を削減するために必要な法的措置を採用するための物質リストを含んでいる。条約の締約国は、第9回会合において、条約第9条(8)により例外なしに附属書にコホル(dicofol)を収載するために附属書Aの修正を決定した。

規則 (EU) 2019/1021は、附属書ⅠパートAは、ジコホル (dicofol) を収載するために修正さるべきである。

(草案本文)

第1条 規則 (EU) 2109/1021の附属書Ⅰは本規則附属書に従い修正される。

第2条 本規則は、EU官報発行20日後に発効し、その全体が拘束力を持ち、直接すべての加盟国に適用される。

附属書  以下のとおり。 物質名: ジコホル (dicofol)

CAS No : 115-32-2

中間使用またはその他の仕様に対する特定の免除 : なし


因みに我が国においては、条約の締約国会議 (COP) において物質か附属書Aに収載され.ることが決定された場合、一定の手続きを踏んで当該物質は化審法の特定第一種化学物質 に収載されることになっています。5)


(瀧 山 森雄)


(引用)


1) https://www.env.go.jp/chemi/pops/treaty/treaty_en2009.pdf#search=%27Sytockholm+Convention%27


2) https://www.unece.org/fileadmin/DAM/env/lrtap/full%20text/1998.POPs.e.pdf#search=%27the+Protocol+to+the+1979+Convention+on+LongRange+Tranceboundary+Air+Pollution+on+Persistent+Organic+Pollutions%27


3)

-1.

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiative/12057/publication/6059574/attachment/090166e5c90faac1_en

-2.

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiative/12057/publication/6059574/attachment/090166e5c90faac2_en


4)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=PI_COM:Ares(2019)7227996&qid=1575762676034&from=EN


5)

https://www.tkk-lab.jp/post/reach20190919

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