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韓国のSDSの届出、企業秘密保護に関連する動きについて
韓国の産業安全衛生法(以下、「産安法」)が改正され、2019年1月16日に告示されました1)。また、施行規則が2019年12月26日に公布されました2)。 改正産安法ではSDSに関しては幾つかの変更点があります。 改正産安法の施行日は2020年1月16日ですが、SDSに関しする規定については2021年1月16日が施行日となっています。
他方、K-REACHにおける化学物質安全情報の伝達においても、改正産安法の規定に整合させるために、施行日を延期する施行規則が公布されました3)。
今回のコラムでは、これらの概要を整理して紹介します。
1.産安法におけるSDSに関する規定の改正の概要
今回の産安法におけるSDSに関する規定の改正では、下記のような追加の規定が設けられました。
ⅰ)SDSの雇用労働部長官への提出(法第110条)。
提出は、新たに設けられる「物質安全保健資料システム」を通して、電子的に提出することになります(産安法施行規則第157条)。 また、提出時に付与される番号をSDSに記載する必要があります(産安法施行規則第160条)。
本規定の施行日は下記のように猶予期間が設けられています(産安法施行規則附則第9条)。
① 年間製造量が1,000トン以上:2022年1月16日
② 年間製造量が100トン以上:2023年1月16日
③ 年間製造量が10トン以上:2024年1月16日
④ 年間製造量が1トン以上:2025年1月16日
⑤ 年間製造量が1トン未満:2026年1月16日
ⅱ)SDSの物質情報、含有率を企業秘密にしたい場合は、雇用労働部長官へ申請し、承認を受けなければなりません。 承認の有効期間は、承認を受けた日から5年です。 延長の申請により、更に5年間の営業秘密にすることが出来ます。(法第112条)。
申請に当たっては、下記の情報の提出が必要です(産安法施行規則第161条)。
① 化学物質の名称及び含有率が「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」第2条第2号による営業秘密に該当することを立証する資料(雇用労働部長官が定めて告示される)
② 営業秘密とする化学物質名称、含有率に替えて使用する資料(以下、「代替資料」)
③ 代替資料で記載しようとする化学物質の名称及び含有率による健康及び環境に対する有害性、物理的危険性情報
④ SDS
⑤ 分類基準に該当しない化学物質の名称及び含有率
⑥ その他、化学物質の名称及び含有率を代替資料で記載することを承認するために必要な情報として雇用労働部長官が定めて告示する書類
ただし、「化学物質の分類・表示および安全データシートに関する基準」4)では、下記の物質は、企業秘密にすることはできないことになっています(第17条)。
・製造禁止物質
・認可の対象となる物質
・管理対象となる有害物質
・化管法にて有害物質と分類される物質
具体的な製造禁止物質、許可の対象となる物質については、2019年12月24日に公布されました産安法施行令5)の第87条および第88条でそれぞれ特定されています。
また、管理対象となる有害物質については、2019年12月26日に公布されました「産業安全保健基準に関する規則」の別表12に特定されています6)。
化管法で有害物質と分類される物質は、国立環境科学院が提供する化学物質情報システム(NCIS) 7)で確認することができます。
ⅲ)国外の製造業者は、雇用労働部令で定める要件を備えた者を任命してSDS対象物質を輸入する者に替わって、上記の業務を代行させることが出来ます(法第113条)。
なお、代理人として任命できるのは韓国の企業、個人になりますが、選任の届けを提出する必要があります(施行規則第166条)。
2.K-REACHにおける化学物質安全情報に関する規定
K-REACH8)で登録または届出した物質について産安法規定のSDSを提供する場合は、K-REACH規定の「化学物質安全情報」の提供が必要です。「化学物質安全情報」に記載しなければならない情報は下記の通りです。
① 化学物質等安全情報提供者の氏名または名称、所在地、電話番号
② 商品名とその化学物質の名称または総称名
③ 化学物質の登録番号・届出番号と固有の番号。
④ 化学物質の分類・表示
⑤ 化学物質の使用可能な用途や使用上の制限用途
⑥ 化学物質の物理的・化学的特性と人間と環境有害性に関する情報
⑦ ばく露シナリオの概要と危害低減対策など危害に関する情報
⑧ 有害化学物質が含有された場合、含有率などの情報
⑨ 化学物質の取り扱い方法等安全に使用に関する情報
⑩ 化学物質に関する規制情報
(K-REACH施行規則第35条1項)
有害化学物質の場合は、物質名、含有率を企業秘密にできないことになっていますが、2018年12月28日に公布されました改正施行規則では、2020年1月1日から申請により企業秘密にできる規定が設けられていました(施行規則第35条の2)。 しかしながら、産安法における企業秘密の承認施行日と整合をさせて、2019年12月31日の改正施行規則(環境部令第840号)9)が公布され、この施行日を2021年1月16日に延期されました。
以上のように、現時点では韓国でのSDS等の記載内容の内、有害化学物質等の名称やその含有率を企業秘密に出来ない場合があります。 その対応については、注意をしていただきたいと考えます。
参考資料
1) http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=206708&viewCls=lsRvsDocInfoR#
7)
http://ncis.nier.go.kr/mttr/mttrList.do
8)
http://www.law.go.kr/lsEfInfoP.do?lsiSeq=202780#
9)
(林 譲)