- tkk-lab
REF-6(混合物の分類、表示、SDS関連義務)の順守調査結果
2020年01月31日更新
欧州化学物質庁(ECHA)の「執行情報交換フォーラム(以下、フォーラム)の調査結果として、最近の本コラム(2019年11月28日付)でも、「成形品中のCL物質に関連する義務の順守調査結果」を取り挙げました。 これは個別のテーマに対して比較的小規模に実施されるパイロットプロジェクトでした。
一方、執行フォーラムでは毎年1つのテーマに基づき、多くの加盟国が参加して大規模な「REACH規則執行プロジェクト(REACH EN FORC:REF)」が行われています。 REFについては、2019年12月に2018年に実施された第6次REACH規則執行プロジェクト(REF-6)の報告書1)が公表2)されましたので、今回はこの内容を取り挙げます。
1.REF-6の調査概要
REF-6は、「混合物の混合物の分類および表示・SDS」がメインテーマとして掲げられました。 またこのメインテーマに加え、参加加盟国が自由に選択できるオプションテーマとして次の4つが設けられました。
・ラベルおよび容器の適用除外
・調和化された分類および表示(CLH)
・液体洗濯洗剤カプセル(LLDC)
・殺生物性製品規則(BPR)による承認および表示
これらのテーマに基づき、29の加盟国が参加し、1,620社の3,391の混合物に対して調査が実施され、その結果、調査対象の44%にあたる1,398の混合物で1つ以上の違反があったことが示されました。
2.メインテーマの調査結果
2.1 分類
SDSに記載された成分情報をもとに、分類結果を確認したところ、次のような不備が確認されました。
・分類結果が誤っている(539製品)
・SDSの「2.危険有害性の要約」に記載されている「GHS分類」と「ラベル要素」が一致していない(277件)
・調和化された分類・表示(CLH)対象物質にも関わらず、分類がCLHに基づいていいない(188件)
・分類・表示(C&L)インベントリーの届出が実施されていない(171件)
2.2 SDS
SDSの記載項目のうち、分類と関わりがある一部の項目を確認した結果、1,026製品(調査対象の33%)で次のような項目の不備が確認されました。 なお、SDSについては、過去に実施されたREF-2でも調査が実施されており、当時の調査結果である違反率52%に比べれば今回の結果はある程度改善が図られているといえます。
・2.危険有害性の要約(920件)
・3.組成および成分情報(467件)
・16.その他の情報(399件)
・9.物理的及び化学的性質(371件)
・11.有害性情報(319件)
・12.環境影響情報(204件)
また、521製品で、容器に貼付されているラベルとSDSに記載されたラベル要素の不整合が指摘されています。
2.3 ラベル
ラベルに関しては1,067製品でラベル記載項目について、情報の欠落や誤記載等による不備が確認され、中でも多くの不備が指摘されたのは次の項目でした。 これらの不備の多くは誤った分類結果が原因として挙げられています。
・危険有害性情報(468件)
・注意書き(336件)
・絵表示(310件)
・注意喚起語(265件)
3.オプションテーマの調査結果
3.1 ラベルおよび容器の適用除外
このオプションテーマでは、17の加盟国が参加し、355の混合物を対象に調査が実施されました。
その結果、172製品はCLP規則第29条(1)の形状・形態またはサイズによる除外要件に該当する製品であり、大半はサイズが小さいためにラベルの貼付が困難な製品でした。 一方、43製品はラベルに関する適用除外要件に該当しないことが指摘されました。
また、CLP規則第29条(1)の適用除外要件に該当し、ラベルの貼付が困難な場合には、内装への一般的なラベル貼付の代わりに、附属書Iの1.5.1項によって、折り込みラベルや紐づけタグ、外装表記での表示が認められています。 今回の調査対象では148製品でこれらの代替手段が使われており、最も多かったのは112製品で使われていた外装表記でした。 しかしながら、代替手段を使っている製品でも46製品で記載内容に不備がありました。
さらに、CLP規則第29条(2)では125ml以下の容器など上記代替手段でも全てのラベル項目を記載することができない場合には、附属書Iの1.5.2項によって一部の記載内容を省略することが認められています。 これらの条件に該当した108製品の大半は要件を順守していることが確認されましたが、一部製品では、本来省略できない内容が未記載である等の不備が指摘されています。
3.2 調和化された分類・表示(CLH)
このオプションテーマでは、CLHに基づく分類が実施されているかが調査され、調査対象のうち9%がCLHに準拠していない分類結果となっていることが指摘されています。
3.3 液体洗濯洗剤カプセル(LLDC)
このオプションテーマでは、2015年6月から適用が開始された「可溶性包装材で包装された液体消費者用洗濯洗剤の外装および可溶性包装」についてのCLP規則第35条(2)および附属書IIの3.3項の順守状況について、13加盟国が111製品を調査した結果、附属書IIの3.3項の各要件で次のような不備が指摘されています。
・外装箱等の開閉部に対する要件違反(24件)
・可溶性包装に関する要件への順守を示すことができなかった(3件)
3.4 殺生物性製品
このオプションテーマでは、殺生物性製品の上市前承認およびラベルの有無や、承認内容とラベル内容の整合性について、24加盟国が760の殺生物性製品について調査を実施しました。その結果、次のような不備が指摘されています。
・承認に関する要件違反(56件)
・承認内容とラベル内容の不整合(120件)
4.最後に
今回の調査では、調査対象となった混合物の44%で何らかの違反が指摘されました。 SDSについては、REF-2でのSDS全般、REF-5でのばく露シナリオおよびeSDS等、これまでもREFでテーマとして取り挙げられてきました。 今回の調査では、過去の調査からは違反率の改善が見受けられましたが、いまだに違反率は高い状況であると言え、産業界に対してラベルやSDSの改善が求められています。
分類・ラベル・SDSは、国連GHSをベースにしながらも、独自要件の存在や除外要件の有無や範囲等、各国で細かい部分は異なっているのが実態です。 そのため、特定国向けに作成したラベルやSDS等を新たな国で活用する場合には、そのまま流用するのではなく、新たな国で求められている要件を十分に確認した上で、要件を順守するための修正・対応を図る必要がある点に留意する必要があります。
(井上 晋一)
1)REF-6報告書
2)ECHA ニュースリリース