当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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ユーラシア経済同盟REACH規則の動き

2020年04月03日更新

ユーラシア経済同盟(経済連合とも訳されますが、本稿では以下同盟と略記します)は、2017年3月3日に技術規則「化学品安全」(EAEU TR 041/2017)を同盟条約第52条により採択しました。 (注1)

技術規則「化学品安全」は、EU REACH規則に類似している部分があり、同盟REACH規則とも言われています。 

同盟REACH規則は2021年6月2日に施行されますが、このためロシアでは既存物質のインベントリ登録が行われています。

同盟REACH規則の動向を整理してみます。

1.同盟の概要

 同盟は、アルメニア共和国、ベラルーシ共和国、カザフスタン共和国、キルギス共和国、ロシア連邦で構成されています。同盟の人口は170百万人で、タジギスタンが加盟候補国になっています。

同盟は、大統領や首相級で構成される最高意思決定機関の最高ユーラシア経済評議会、副大統領や副首相級の大臣によって構成されるユーラシア経済委員会とユーラシア裁判所があります。 EU理事会、EU委員会とEU裁判所に相当します。

同盟REACH規則は、EUの「欧州連合の機能に関する条約(TFEU)」第192条と同等のユーラシア経済同盟条約第52条により制定されています。 (注2)

同盟条約第52条(同盟の技術規制と基準)の要点は次です。

・ 人の生命と健康、財産、環境、動物や植物の生活や(または)健康を保護し、消費者に誤解をまねく行動を防ぐため、エネルギー効率と省資源を確保するために同盟技術規則を定める。

・他の目的のための連合の技術規制の採用は許可しない。

・同盟技術規則の策定および採用の手順、ならびにそれらを修正および廃止する手順は、委員会によって決定する。

・同盟技術規則または国の必須要件は、委員会によって承認された単一のリストに含まれる製品にのみ適用され、同盟域内に直接影響を及ぼす。

・同盟技術規則は、同盟国に直接影響を及ぼす。

・同盟技術規則の要件の遵守に関する国家の管理は同盟国の法律で規定されている方法で実施する。

同盟REACH規則では、第71条の「化学物質に関するこの技術規則を遵守する国家監督は、加盟国の法律に従って実施するとし、この加盟国国内法は2018年12月1日までに制定しなくてはならないとしています。

2.同盟REACH規則の概要

同盟REACH規則は、14章71条7附属書の構成で、A4で16ページほどのEU REACH規則と比較してコンパクトな内容になっています。


 第1章 範囲 第1条~第3条

 第2章 基本的な概念 第4条

 第3章 化学物質識別ルール 第5条~第9条

 第4章 同盟市場での化学品の流通に関する規則 第10条~第13条

 第5章 化学品の分類に関する要件 第14条~第27条

 第6章 化学品の安全に関する要件 第28条

 第7章 表示の要件に関する要件 第29条~第34条

 第8章 予防表示に関する要件 第35条

 第9章 SDSに関する要件 第36条~第43条

 第10章 化学品が技術規則の要件に準拠していることの確認 第44条~第45条

 第11章 新規化学物質の通知 第46条~第48条

 第12章 技術規則の要件に対する化学品の適合性評価 第49条~第66条

 第13章 同盟市場での製品流通のための単一符号による化学品表示 第67条~第70

 第14条 技術規制の遵守に関する管理監督 第71条

 附属書1 技術規制が適用されない化学製品リスト

 附属書2 化学品における有害化学物質の含有量の許容範囲

 附属書3 化学品安全性報告書の構成

 附属書4 化学品での使用に制限された化学物質の最大含有量

 附属書5 化学品の登録の申請

 附属書6 化学品の加盟国届出登録

 附属書7 化学品の使用許可

 主要条項を紹介します。

(1)目的

第1条

この技術的規制は、人間の生命と健康、財産、環境、動植物の生命と健康を保護し、消費者(購入者)を誤解させる行為を防ぐために採用された。

第2条

この技術規則は、同盟関税地域での化学品の使用に関する統一的な適用と実行に必須である。 同盟関税地域で流通し、その適合性を評価するための規則とフォーム、識別ルール、用語の要件、ラベル表示、およびその適用ルールを確立する。

(2)対象

化学製品の製造、保管、輸送、販売、および廃棄(処理)のプロセスの要件は、同盟(税関連合)の技術規則で確立されており、その影響は特定の種類の化学製品に適用される。(第2条)

この技術規則は、附属書 1(技術規制が適用されない化学製品のリスト)の製品を除いて、同盟関税地域で流通するすべての化学製品に適用する。(第3条)

附属書1で次の適用徐外が示されています。


(i) 研究作業を目的とした化学品、および(または)研究および(または)開発作業から生じた化学品

(ii) 天然状態の鉱物、および化学的に改変されていない場合の以下の製品、:

(iii) 鉱物、鉱石、鉱石濃縮物、セメントクリンカー、天然ガス、液化ガス、ガスコンデンセート、プロセスガスとその成分、脱水、脱塩、安定化された石油ガス、石炭、コークス

(iv) 医薬品および動物用医薬品

(v) 香水および化粧品

(vi) 電離放射線の発生源である化学製品(このような製品からの廃棄物を含む)

(vii)生物活性食品添加物および食品添加物を含む食品、ならびに準備された動物飼料

(viii)同盟関税地域での流通中に、化学組成や凝集状態を変化させず、分解や酸化プロセスの影響を受けず、粉塵、蒸気、化学物質を含むエアロゾルを形成しない人と動物と植物の生命と健康、環境、財産に生命と健康に危険な化学品を含有する製品

(ix)化学品の生産および消費による廃棄物(それらが利用(処理)の対象となる場合)。

(x) 同盟関税地域を通じて通関手続きの対象となる化学品

これらの種類の化学製品の特定の要件を確立する他の同盟技術規制の規制の対象となる化学品に関しては、その技術規則に当技術規則の要件が確立されていない場合は、当技術規則の分類、警告ラベル、およびSDSの要件を適用する。(第3条)

(3)化学物質の識別

化学物質の識別は、製造者、製造者に認定された者(代理人)または輸入者が行います。

(第5条)


 識別情報は第6条で次を指定しています。


a)化学製品の名称の確立;

b)化学品の化学物質または混合物への割当て。

c)IUPACの命名法に準拠した化学物質の名前の確立、およびCAS番号(利用可能な場合)

d)IUPACの命名法およびCAS番号(存在する場合)に従って、名前に含まれる識別可能な混合物の化学組成の決定

e)化学品の組成で0.1%を超える濃度での新化学物質の存在

f)化学品中の化学物質の特定

 新化学物質

同盟地域での使用が禁止されている化学物質

同盟地域での使用が制限された化学物質

g)化学製品の用途の決定

h)その他の必要な情報

混合物の化学組成の決定は次から特定します。(第8条)

a)10%以上の濃度で存在する化学物質

b)危険物質リストに収載されている規定濃度を超える物質

(4)新化学物質の義務

化学物質および混合物の同盟登録簿にその化学物質に関する情報がない場合、化学物質は新化学物質として識別されなければならず、その一部である新しい化学物質は第46条~第48条に従って通知されなければならない。

同盟地域に上市する前に規制する。(第11条)

新化学物質の通知は、その化学物質に関する情報を化学物質及び混合物の同盟登録簿に入力することで行う。(第46条)


この技術規則の発効後、同盟地域に上市される新化学物質について、加盟国の認定機関によって通知される。(第47条)

認定機関によって通知される内容は次項とする。(第48条)


a)附属書3による化学品安全性報告書

b)IUPACの命名法による化学物質名(英語を含む)

c)化学物質の構造式

d) 化学物質の機器分析データ

e)化学物質の純度

g)化学物質の使用目的;

h)化学物質の処分(処理)方法の提案

i)化学物質の輸送方法および緊急事態の防止と解消のための対策

j)分析制御方法

k)化学物質の物理化学的データ

l)化学物質の毒性データ

m)化学物質の生態毒性に関するデータ

n)実験室(センター)で実施された、生物蓄積性、発がん性、変異原性、生殖毒性のデータ(プロトコル)のコピー

同盟REACH規則では、「1トン未満の化学物質の登録が求められる」「混合物の登録が要求され、トン数制限がない 」「少量登録に関する免除要件がない」などのEU REACH規則との差異があります。

3.ロシアの動き

同盟加盟国のロシアでは、すでに国内法として2016年10月7日、ロシアの「化学品の安全性に関する技術規則」を制定しており、2021年の7月1日から実施する予定です。

同盟REACH規則の発効により、ロシアの「化学品の安全性に関する技術規則」を同盟REACH規則に整合すると思われます。

新化学物質は既存化学物質でない化学物質と定義されますが、既存物質データベース(EUではEINECS)が明確でなく、インベントリ登録が行われています。

ロシアは2019年11月11日から登録サイトの運用が開始されました。 (注3)

登録できるのは、ロシア連邦の領土に登録されている法人または個人であり、製造者、製造者によって認可された者(代理人)、化学物質の輸入業者です。登録期限は延長されて2020年5月1日です。

登録情報は次などです。

・化学物質識別情報 名称、CAS番号

・用途

・過去3年間の平均製造量、輸入量または今後の予定

・危険有害性分類

 関連した情報も公開されています。

・登録ガイド (注4)

・FAQ (注5)

・登録データ (公開されますが、現時点ではデータはありません。)(注6)

4.参考 同盟のその他の動き

同盟経済委員会のニュースをご紹介します。

(1)同盟RoHS規則の施行 (注7)

2020年3月1日に同盟RoHS規則が施行されました。

IT機器、通信、照明およびオフィス機器、電気および楽器、レジャーおよびスポーツ機器、自動販売機、ゲーム機、現金決済機器、ケーブル製品、残留電流回路ブレーカー、火災およびセキュリティ検出器に適用されます。

これらの製品は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ジフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルが0.1重量%、カドミウム0.01重量%を超えて含まないように設計および製造する必要があります。

(2) 加盟国の監督機関間での情報を交換するためのメカニズム (注8)

2018年7月、同盟の政府首脳は、認可された機関に対して、同盟技術規則の要件を満たさない商品について通知するシステムを形成するパイロットプロジェクトの実施を確実にするよう指示しました。目標は、同盟市場における危険な製品の存在に関する情報を迅速に交換するための適切なツールを作成する可能性を探ることです。

2019年7月から11月にかけて、同盟加盟国の国家統制(監督)機関は、同盟市場で同盟技術規則の要件を満たさない製品を見つけるための情報を交換するための電子メカニズムをテストしました。

6つの技術規則のパイロットモードでテストし、低電圧機器、自動車、子供および青年向け製品、玩具、肉、乳製品の統一要件を確立したことを確認しました。

この結果を受けて、情報を交換するためのメカニズムを2020年6月15日から運用を開始します。

同盟版のEU RAPEX(Safety Gate)です。

(3) 同盟とCEN/CENELECの協力 (注9)

同盟とEUとの間で技術的な規制と標準化の分野での協力は、その加盟国間貿易の技術的障壁の除去に貢献するとして、同盟経済委員会とEU CEN/CENELECとの対話をしています。

(4) 同盟とIECの協力関係を発展 (注10)

同盟の枠組みの中で、電気、電子および関連技術の分野における国際電気標準会議(IEC)の認証システムの適用に対する一般的なアプローチを同盟経済委員会およびIEC によって検討されています。

ユーラシア経済同盟は、規制を強化してきていますが、EUの規制との類似性が見えてきています。

(松浦 徹也)

参照

注1 本文

http://docs.cntd.ru/document/456065181

告示文付

https://docs.eaeunion.org/docs/ru-ru/01413938/cncd_18052017_19

注2

http://docs.cntd.ru/document/420205962

注3

https://gisp.gov.ru/news/10719253/

注4

https://gisp.gov.ru/cheminv/i/

注5

https://ciscenter.org/tabstest/faq.php

注6

https://gisp.gov.ru/cheminv/pub/app/search/

注7

http://eec.eaeunion.org/ru/nae/news/Pages/25-02-2020-5.aspx

注8

http://eec.eaeunion.org/ru/nae/news/Pages/04-12-2019-1.aspx

注9

http://eec.eaeunion.org/ru/nae/news/Pages/10-06-2019-5.aspx

注10

http://eec.eaeunion.org/ru/nae/news/Pages/5-06-2018-1.aspx

当説明内容は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。説明内容は

ロシア語の機械翻訳による意訳を含んでいますので、法規制の解釈は必ず原文を参照してください。

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