当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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ベトナム 既存化学物質インベントリー増補と化学品法について

ベトナムでは既存化学物質のリスト(国家化学物質インベントリー:NCI)の作成が進められています。 その増補のための申請を受け付ける旨の通知が2020年4月8日に出されました1)。締め切りは、2020年5月30日です。

NCIについては、2012年から整備作業が進められていましたが、2016年9月にNCI草案が公開されました。 この草案には3,023物質が収載されていましたが、未収載の物質についての意見募集が2016年10月30日迄行われていました。


これらの結果を踏まえ、2018年8月にNCI草案(第3版として)が公開され2)、併せて、商工省(MOIT)ベトナム化学品庁(Vinachemia)3)で「ベトナム化学物質データベース」の運用が開始されました。 NCI草案第3版には、31,745物質が収載されており、NCI草案第3版未収載の物質の追加申請も受け付けていました。 また、ベトナム化学物質データベース」には、後述します化学品法で規制される化学物質も整理・統合されています。


また、今回の増補申請受付の通知によりますと、2020年3月1日時点で国家化学物質データベースには、36,777物質が収載されているとのことです。 このデータベースには、NCI草案第3版のリストにその後追加申請のあった物質が追加されていることになります。

今回の増補申請に当たっては、化学物質名、CAS番号、SDSおよびベトナムで使用されていることを証明する書類等の提出が必要です。

ベトナムの国家化学物質データベースの作成は、他の国と同じくベトナムの化学物質管理のためのものです。


その基本となるのは2007年に公布された「化学品法」4)です。 「化学品法」の第63条で、国家化学物質データベースの作成が規定されています。


「化学品法」では、NCIに収載されていない物質は新規化学物質として、登録をする制度の条項(第44条)が設けられています。 しかし、上記の通りNCIは整備途中のこともあり、新規物質登録等の詳細は策定中で、新規化学物質の登録制度は未だ施行されていません。

日本から化学品を輸出する場合に注意すべきことは、規制されている物質については、その許可の取得、届出や実績報告、また、危険有害性物質の分類、ラベルおよびSDSに関わることです。 これらについても、「化学品法」にそれらの規定の条項があります。


分類・表示・SDSについては第27~29条で、その詳細は、政令 No. 113/2017/ND CP5) 及び通達 No.32/2017/TT BCT6) で規定されています。 GHSが採用され、危険有害性の物質、混合物はこの規定に従う必要があります。


政令 No. 113/2017/ND CPは「化学品法の多くの条項の実施の詳細とガイダンスに関する政令」で、日本の施行令に相当するものといえます。


この政令では「化学品法」の下記の事項に関わる実施詳細を規定されています。


1.化学物質の⽣産と取引における安全を確保するための⼀般要件。

2.⼯業地域の条件に従う⽣産および事業⽤の化学物質; 「⼯業分野における条件付き⽣産

または取引の対象となる化学物質」の⽣産または取引の適格性証明書の付与に関する条件、書類、手順および⼿続。

3.⼯業⽤前駆物質の製造および取引の条件;⼯業⽤前駆物質の輸出⼊の許可書を発行するための書類、⼿順および手続。

4.産業分野における⽣産または事業が制限される化学物質;「産業分野における⽣産または取引の許可を与えるための条件、書類、手順および⼿続。

5.禁⽌化学物質、有毒化学物質。

6.化学物質の事故を防⽌し対応するための計画と措置。

7.危険な施設からの安全な距離。

8.化学物質の分類、化学物質安全性データシート。

9.化学物質の登録、申告、化学物質に関する情報。

10.化学品の安全性を訓練。

政令 No. 113/2017/ND CPの附属書には、下記の物質がリストされています。


・附属書I:

条件付化学物質 819 物質( GHS 分類で物理的危険性、急性毒性(区分 2 、 3 )、刺激性等(区分 1 、 2 )、発がん性等(区分 2 )、環境有害性(区分 1 )に該当する物質(制限化学品に該当する物質を除く))

・附属書II:

制限化学物質 217 物質(ロッテルダム条約、ストックホルム条約で規制されている物質から選定及び GHS 分類で急性毒性、発がん性、生殖毒性、生殖細胞変異原性の区分 1 に該当する物質)

・附属書III:

禁止化学物質 18 物質(化学兵器禁止条約の附属書 1 の物質等)

・附属書IV:

化学品事故防止・対応計画を作成しなければならない危険化学物質 271 物質(セベソ III 指令で規制されている物質から選定)

・附属書V:

申告を要する化学物質 1,156物質

また、通達No.32/2017/TT BCTは「化学品法の多くの条項と政令No. 113⁄2017⁄NĐ-CPの実施の規定とガイダンスに関する通達」で、施行規則に相当するものといえます。

参考資料

1)

http://vinachemia.gov.vn/default.aspx?page=news&do=detail&category_id=43&id=4419

2)

http://vinachemia.gov.vn/default.aspx?page=news&do=detail&category_id=43&id=4386

3)

http://chemicaldata.gov.vn/cms.xc

4)

http://khaibaohoachat.cuchoachat.gov.vn///Documents/otc_6092916.pdf

5)

http://www.cuchoachat.gov.vn/default.aspx?page=legal&do=detail&category_id=2&id=64

6)

http://www.cuchoachat.gov.vn/default.aspx?page=legal&do=detail&category_id=2&id=68

(林  譲)

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