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中国 新規化学物質環境管理弁法(環境保護部令第7号)が修正され、公布されました。
2020年05月22日更新
中国の新規化学物質環境管理弁法(環境保護部令第7号)2019年7月9日付で修正案が公表され、意見募集が行われていました1)。 2020年4月29日付けで、「新規化学物質環境管理登記弁法(生態環境保部令第12号)」として、公布されました2)。 公布された修正弁法は2021年1月1日から施行され、現行弁法は廃止されます。
今回の主な修正点としては下記の5項目があると説明されています(筆者抄訳)3)。
① 環境と人の健康にリスクのある、難分解性(P)、生態蓄積性(B)、毒性(T)の新規化学物質の規制管理の改善。
② 登記申請の要件を簡素化し、企業負担を軽減。
③ 登記基準を精緻化し承認要件を改善。登記と非登記の基準の明確化。
④ 追跡管理の強化と管理効率の向上。
⑤ 新規の危害性情報の取得と環境リスク管理の持続的な継続。
公布された修正弁法は、米国TSCAの規制システムに類似したシステムになったといえます。
以下に、修正内容の概要をご紹介します。
1. 適用対象物質
現行弁法と同じく「中国現有化学物質名録」に収載されていない物質が、新規化学物質であり、修正弁法が適用されます。未収載の新規化学物質を製造・輸入する場合には、登記・届出が必要です。
ただし、下記については適用されません。
(1)医薬品、農薬、動物用医薬品、化粧品、食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、肥料。 ただし、他の産業用途に使用される、上記の製品の原料および中間体として使用される場合は除かれます。
(2)放射性物質。
また、含有する新規化学物質を日常の使用中に意図的に放出するように設計された成形品に使用された新規化学物質は適用されます。
2. 登記・届出について
現行弁法と同じく、通常登記、簡易登記および届出の3種類があります。ただし、年間製造・輸入量等により、下記の様に区分されます。
(1)通常登記
現行弁法では、年間1トン以上の場合に通常登記が求められていますが、修正弁法では、年間10トン以上の場合に通常登記となり、下記の情報の提出が求められています。
・通常登記申請書。
・新規化学物質の物理化学的特性、毒性および生態毒性試験の報告書またはデータ。
・新規化学物質の環境リスク評価報告書(登記申請の対象となる新規化学物質に起因する可能性のある環境リスクの評価、提案された環境リスク管理措置とその妥当性分析、不合理な環境リスクの有無の評価を含む)。
・環境リスク管理措置および環境管理要件の実施または提供するための誓約書。
なお、現行弁法と同じく、生態毒性試験は、中国の基準に従って、中国のテスト生物を使用して試験を行うことが必要です。
有害性の高い新規化学物質の環境リスク評価報告書については、EU REACHの認可申請の場合と同じく、その使用による効用と環境へのリスクの面から、社会的および経済的利益の分析を行い、新規化学物質の使用が明白な利点を持っていることを示す資料の提出が求めてられています。
(2)簡易登記
年間1以上~10トン未満の場合は、簡易登記となり、下記の情報の提出が求められています。
・簡易登記申請書。
・新規化学物質の物理化学的特性、および生態毒性試験報告書またはデータ(分解性、生物蓄積性、水生環境毒性など)。
・環境リスク管理措置および環境管理要件の実施または提供するための誓約書。
通常登記の場合と同じく、生態毒性試験は、中国の基準に従って、中国のテスト生物を使用した試験をする必要があります。
(3)届出(筆者注:原文では「备案」ですが、本稿では「届出」と訳します。)
下記の場合は、「届出」の書類を提出することで製造・輸入をすることが出来ます。
(a) 年間1トン未満
(b) 新規モノマー2%未満のポリマー、および、低懸念ポリマー
「届出」では下記の情報の提出が必要です。
・上記(a),(b)に合わせた申告書
・上記(a),(b)に関連する資料
なお、意見募集が実施された修正案段階では、100㎏未満の新規化学物質は適用されないとされていましたが、公布された修正弁法ではこの条項は削除され現行法と同じく100㎏未満でも届出が必要です。
3. 登記証の発行、「中国現有化学物質名録」への収載について
現行弁法と同じく、通常登記と簡易登記については、申請資料の審査後、登記証が発行されます。
登記証には下記の項目が記載されます。
・登記証の種類(通常登記、簡易登記)。
・申請者およびその代理人の名前。
・新規化学物質の中国語名および英語名、または、総称名等物質特定の情報。
・用途。
・製造・輸入量。
・活動の種類(製造または輸入)。
・環境リスク管理措置。
また、危険有害性の高い物質や、難分解性(P)、生態蓄積性(B)や毒性(T)のある物質については、下記の項目の内、少なくとも一項目が特定されます。
・新規化学物質の排出量または排出濃度の限定。
・「中国現有化学物質名録」に収載する場合、新用途の環境管理措置の実施要件。
・年次報告書の提出。
・その他の環境管理要件。
通常登記された新規化学物質は、登記5年後に「中国現有化学物質名録」に収載されます。簡易登記および届出された物質は「中国現有化学物質名録」に収載されません。
危険有害性の高い物質、難分解性(P)、生態蓄積性(B)や毒性(T)等の物質の「中国現有化学物質名録」への収載時には、用途、リスク管理措置等の使用の条件が付されることになっています。 使用の条件が付された物質を、登記者が他の用途で使用する、また、登記者以外の事業者が工業目的で使用する場合等では、製造・輸入・加工の前に、新たな使用の申請が必要になります。 TSCAのSNURの要求に類似しています。
4. 追跡管理について
さらに登記者・届出者は下記の情報を川下ユーザーに提供することが求められています。
・登記証明書番号または届出受領番号。
・新規化学物質の申請用途。
・新規化学物質の環境および健康への危険有害性と環境リスク管理対策。
・新規化学物質の環境管理要件。
また、通常・簡易登記については、新規化学物質の製造・輸入・使用の時期、量、使用状況等の活動記録を10年間、届出については3年間保存することが必要です。
5. 企業秘密について
新規化学物質名等の企業秘密情報の保護期限は、登記・届出の日から5年を超えないとされています。
既に「中国現有化学物質名録」に収載されている企業秘密として登記されている物質名等情報の保護期限は最長2025年12月31日迄とする規定が設けられています。
参考資料
1) http://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk06/201907/t20190711_709145.html
2) http://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk02/202005/t20200507_777913.html
3) http://www.mee.gov.cn/xxgk2018/xxgk/xxgk15/202005/t20200506_777861.html
(林 譲)