当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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EUでも応用できる~アメリカ CPSCは玩具用材料の測定義務免除~

2020年06月19日更新


社会的弱者保護は、世界各国で取り組んでいます。 化学物質に関するリスクの社会的弱者は、妊婦、胎児、乳幼児、子供や高齢者が対象になります。 特に、子供は、成長期という特異な時期であり、大人とは異なる保護が要求されています。


子供保護のためにカドミウム、鉛、水銀、六価クロムなどの重金属やフタル酸エステル類などが世界共通で制限されています。 玩具などの子供向け製品にこれらの有害物質を含有していないことを確実にするには、測定して確認することになります。


アメリカCPSC(United States Consumer Product Safety Commission:アメリカ 消費者製品安全委員会)は、玩具に認定された試験所による測定を要求しています。 一方、金属や特定樹脂以外にはフタル酸エステル類は含有することはあり得ないので、測定費用面から測定免除の要求もあります。


2020年6月1日にCPSCはCPSA(Consumer Product Safety Act:消費者製品安全法)を改正し、従来の木材や樹脂材に追加して、特定の未完成の製造繊維(unfinished manufactured fibers)について、8金属の移行量と特定フタル酸エステル類の含有濃度の測定免除をしました。

§1安全証明

CPSAは2008年にCPSIA(Consumer Product Safety Improvement Act:消費者製品安全改善法)により、鉛、フタル酸エステル、玩具の安全性、第三者機関の試験と認証などが盛り込まれました。(注1)(注2)

CPSC 第14条(US CODE(連邦法令)15 U.S.C. § 2063))(a) (1)で以下の要求があります。

(A) 各製品は試験または合理的な試験プログラムにより、対象製品が、本法または委員会が施行するその他の法律に適用されるすべての安全規則、禁止や基準、または規制を遵守していることを証明するものとする。

(B)製品に適用される各規則、禁止、基準または規則を明記するものとする。

基準は、Title 16( Commercial Practices:商慣行)の§1250(SAFETY STANDARD MANDATING ASTM F963 FOR TOYS:玩具の安全基準規定ASTM F963)により、ASTM F963が要求されています。(注3)


ASTM (America Society for Testing and Materials:アメリカ材料試験協会)F963 4.3.5項で以下の8重金属移行量限度が要求されています。

アンチモン(Sb)  60 mg/kg

ヒ素(As) 25

バリュウム(Ba) 1,000

カドミウム(Cd) 75

クロム(Cr) 60

鉛(Pb) 90

水銀(Hg) 60

セレン(Se) 500

フタル酸エステル類は、CPSIA 第108条(a)で、DEHP、DBP、BBPについて最大許容濃度を0.1.%としています。


DINP、DIDP、DnOPを子供の口に入れることができる、または育児用品には0.1%以上含有する場合は、暫定的に販売が制限されます。

CPSAでは、以下の定義をしています。

「子供向け製品」という用語は、主に12歳以下(EUは14歳以下)の子供向けに設計または意図された消費者製品を意味する。 消費者向け製品が主に12歳以下の子供を対象としているかどうかを判断する際には、以下の要因を考慮しなければならない。


(A)そのような製品の使用目的に関する製造業者による陳述。そのような陳述が妥当である場合は、そのような製品のラベルを含む。

(B)製品が、12歳以下の子供が使用するのに適切なように、パッケージ、ディスプレイ、プロモーション、または広告に表示されているかどうか。

(C)12歳以下の子供が使用することを意図したものとして消費者に一般的に認識されているかどうか。

(D)2002年9月に委員会発行の年齢決定ガイドライン

  (2002年版は2020年1月に改定され、2020年6月1日から2020年版の使用を開始) (注4)

例えば、人気アニメのキャラクタが着いたアクセサリ製品などがあります。生産者は大人を意図しているが、子供に人気のキャラクタをデザインすれば、ASTM F963の試験をしなければならないかと迷います。CPSC発行の年齢決定ガイドラインを参考にしますが、357ページあり、手軽に利用できません。


CPSCは、中小企業向けに消費者製品安全規則を自社製品に適用できるかを決定できる無料の規制ロボット(CPSC’s Regulatory Robot)を使用できるようにしています。(注5)

ロボットの名称ですが、画面の質問項目を選択するものです。人気アニメのキャラクタが着いたアクセサリでトレースしてみます。

Step1:レポートタイトルの入力(名称は任意)

Step2:利用規約の同意

Step3:製品カテゴリ選択 9つの製品群がある。ここでは「ジュエリー、バッグ、アクセサリ」を選択

Step4:製品選択(ジュエリー、バックパックとハンドバッグ、ヘアアクセサリー、おむつ袋)で、ジュエリーを選択

Step5:製品に適用される製品特性を選択(複数選択)

□子供が楽しむための大人が着用することを意図したジュエリー製品

□主に3歳未満の子供が着用することを意図したジュエリー製品

□主に12歳以下の子供が着用することを意図したジュエリー製品

□主に12歳以下の子供を対象としていない大人が着用することを意図したジュエリー製品

ここでは、大人が着用することを意図したジュエリー製品を選択

以下の目次の最終レポートが表示されます。

・子供向けおよび大人向けジュエリー

・一般適合証明書(GCC)

・必須のレポート要件

・リソース

・お問い合わせ先

・ 規制ロボットに関するフィードバック

上記の事例では、「子供向け&大人向けジュエリー」と判定されて、「ジュエリーに関する連邦要件は特にありません。 ただし、業界のベストプラクティスを表す子供用および大人向けジュエリーには、以下の自主的な基準があります。」となりました。


ASTM F2999-19 大人向けジュエリーの標準消費者安全仕様

ASTM F2923-20 子向け用ジュエリーの消費者製品安全規格

アメリカらしい仕組みです。

§2 免除規定

 子供向け製品、玩具となれば重金属の移行量やフタル酸エステル類の含有量の測定が必要となります。 例えば、ステンレスにはフタル酸エステル類の含有はあり得ません。

材料により、測定するまでもなく、特定有害物質が使用されていないことが宣言できる場合があります。


連邦法15章§2063(Product certification and labeling:製品認証とラベリング)(d)Bで、「第三者試験負担の軽減を目的に、第三者試験をすることなく、適用される消費者製品安全規則、禁止、基準または規制に適合する十分な保証を提供することができる」規定があります。(注6)

この規定により、測定免除がされた製品があります。

(1)木材製品

2020年6月1日に、連邦規則集タイトル16(商慣行)§1252.3(子供向け製品、子供向け玩具および子供向けのケア用品:木を原材料に工場で二次加工した特定木質材料(Engineered wood)製品)には鉛、ASTM F963移行量、およびフタル酸エステル類は制限を超えないとされています。(注7)


特定木質材料は、パーティクルボードや合板などですが、未使用の木材または使用前の木材廃棄物(木材加工工場の木くず)から作られた未処理で未完成の要件があり、§1252.2に詳細条件が定義されています。


フタル酸エステル類はポリ酢酸ビニル接着剤を使用していないなどの要件もあります

(2)繊維製品

§1253(未完成の製造繊維に関するASTM F963要素とフタル酸エステル類に関する決定)が出されました。(注8)


以下の素材には、ASTM F963要素の移行限界は超えないとしています。

(1) ナイロン

(2) ポリウレタン(スパンデックス)

(3) ヴィスコース・レーヨン

(4) アクリルとモダクリル

(5)天然ゴムラテックス

以下の素材には、フタル酸エステルは含有量制限を超えないとしています。

(1)ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET);

(2) ナイロン

(3) ポリウレタン(スパンデックス)

(4) ヴィスコース・レーヨン

(5) アクリルとモダクリル

(6) 天然ゴムラテックス

(3)プラスチック製品

§1308.2 (指定プラスチックの判定)で、以下のプラスチックへのフタル酸エステル類の含有量制限を超えないとしています。 素材により安定剤、添加剤や着色剤などの使用を含めています。(注9)

(1) ポリプロピレン(PP)

(2) ポリエチレン(PE)

(3) 汎用ポリスチレン(GPPS)、中衝撃ポリスチレン(MIPS)、インパクト高ポリスチレン(HIPS)、超高インパクトポリスチレン(SHIPS)

(4) アクリロニトリル ブタジエン スチレン (ABS)

(4)用語説明

(i)未完成の製造繊維(unfinished manufactured fibers)とは、繊維の製造に必要な添加物を超える化学添加物を持たない繊維です。 この規則で定義されている未完成の製造繊維の場合、色や難燃性などの望ましい性能特性を付与するために添加される化学添加物を含まない生地で、生成りといわれる生地などが相当します。

(ii)未処理木材は防腐処理などをしていない樹幹部材(untreated trunk wood)で、未処理の集積材(untreated and unfinished engineered wood products)は、バージン材や使用前の廃材(木材工場の廃材)などから製造された集積材です。

§3免除の決定の背景

免除決定は、パブリックコメントによりますが、CPSCは調査を行って、ASTM F963の必要性を確認します。


2016年10月に「染色されていない繊維とその着色剤に関する調査」が報告されました。(注10)


2016年8月に「0.1%を超える濃度で特定の物質にフタル酸エステルが存在する可能性調査」の報告書が出されました。(注11)


これら報告書から測定免除になりましたが、調査報告の進め方が、アメリカらしいものです。紙数の関係で、内容の紹介は割愛しますが、両報告書とも調査は次のステップで行っています。


 第1段階は、参考書、百科事典、ハンドブック、論文などで情報収集

 第2段階は、連邦機関報告書、各国機関報告書、国際機関報告書などの権威ある情報収集

 第3段階は、生産関連の文献調査

 第4段階は、草案作成でのギャップ調査

「染色されていない繊維とその着色剤に関する調査報告書」は122ページ、「0.1%を超える濃度で特定の物質にフタル酸エステルが存在する可能性調査報告書」は、160ページの膨大なものです。


含有の可能性の調査方法として、参考になります。

§4 まとめ

子供向け玩具である場合は、F963 4.3.5項で以下の8重金属移行量やフタル酸エステル類の第三者試験機関で測定が必要です。


スクリーニングとして、8金属は、RoHS指令でお馴染みの蛍光X線装置で、含有量を測定します。 含有が確認された元素について対応し、含有していなければ移行量測定は実施しないで済みます。(認定試験場の承諾が必要です)


フタル酸エステル類は、感度は低いのですがFT-IRでのスクリーングができます。 FT-IR法は、IEC62321-3-4として2021年6月に国際標準化予定になっています。

製品含有化学物質調査では、多くの企業が対応に苦慮しています。


リスクはゼロにはならないのですが、経済的な面も考慮した許容レベルを考えることも必要です。

REACH規則のCLSの含有情報提供は、「利用可能な情報」で許容されます。 含有試験データでなく、CPSAのフタル酸エステル類の含有の可能性が低い情報が利用できます。

RoHS指令の整合規格のEN IEC 63000:2018では、特定有害物質の含有可能性の技術的判断を認めており、CPSAの情報が利用できます。

CPSA情報、スクリーニング測定、公定法での測定で、リスクとコストを踏まえた順法確認を推奨したいと思います。

(松浦 徹也)

引用文書

注1:

https://www.cpsc.gov/s3fs-public/pdfs/blk_media_cpsa.pdf?epslanguage=en

注2:

https://www.cpsc.gov/s3fs-public/pdfs/blk_pdf_cpsia.pdf

注3:

https://gov.ecfr.io/cgi-bin/text-idx?SID=f00b4384055912891067de2b72e3f0b1&mc=true&node=se16.2.1250_12&rgn=div8

注4:

https://www.cpsc.gov/s3fs-public/pdfs/blk_media_adg.pdf

注5:

https://www.cpsc.gov/Business--Manufacturing/Regulatory-Robot/Safer-Products-Start-Here

注6:

https://uscode.house.gov/view.xhtml?req=granuleid:USC-prelim-title15-section2063&num=0&edition=prelim

注7:

https://gov.ecfr.io/cgi-bin/text-idx?SID=0f22235b2efeff7f7edee2b253635d8c&mc=true&node=se16.2.1252_13&rgn=div8

注8:

https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=43fad358e5d28c6e9425d5c09fc69414&mc=true&node=20200601y1.9

注9:

https://gov.ecfr.io/cgi-bin/text-idx?SID=07af24c3b553a66c7b87cbba06374e4b&mc=true&node=se16.2.1308_12&rgn=div8

注10:

https://www.cpsc.gov/s3fs-public/TERA%20Task17%20Report%20Phthalates%20and%20ASTM%20Elements%20in%20Manufactured%20Fibers.pdf

注11:

https://www.cpsc.gov/s3fs-public/ThePotentialforPhthalatesinSelectedPlastics.pdf

この資料は、2020年6月7日までに入手した情報から作成しました。また、説明を分かりやすくするために、意訳用語を使っています。正確な情報は、必ず、原文をあたってください。


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