当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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プロポジション65 重大リスクを呈さないレベル設定の特定規則~セクション25705に対する規則修正提案の通知~

掲題に関し、カリフォルニア州環境健康有害ハザード評価局 (以降「 OEHHA」 ) は、2020年5月22日に、「ジクロロ酢酸 (CAS No 79-43-6) 3) 、ジブロモ酢酸 (CAS No 631-64-1) 4) およびトリクロロ酢酸 (CAS No 76-03-9) 5)」の3物質に対する「重大なリスクを呈さないセクション25705特定規制レベルに対する規則改正案」公開、通知しました。

この規則改正案における、上記3物質の重大なリスクを呈さないレベル( 以降「NSRL」)を以下のように提案しています。


ジクロロ酢酸 (CAS No 79-43-6) NSRL 17 μg / 日

ジブロモ酢酸 (CAS No 631-64-1) NSRI 2.8 μg / 日

トリクロロ酢酸 (CAS No 76-03-9) NSRL 9.9 μg / 日

カリフォルニア州法プロポジション65 1) は、事業者に対しカリフォルニア州で発がん性および生殖毒性を誘発する化学物質を飲料水源に流入させたり、その可能性がある場合にそれらの物質の排出を規制 (§25249.5) し、消費者および作業者にばく露する可能性がある場合には、事業者は事前に「明確で妥当な警告」3)をすることにより発がん性および生殖毒性物質へのばく露防止を警告することを規定しています。


対象となる化学物質は 「カリフォルニアプロポジション65リスト (以降: ”The List” 2) )」として告示され毎年見直しが行われており、現在約1,000物質が収載されています。

”The List” 収載化学物質は「物質名」の他に、「毒性の型」(発がん性/生殖毒性)、「リストメカニズム」(AB/SQE/FR/LC)、「CAS No」、「収載日」および「NSRL/MADL」の属性を持っています。

「NSRL (No Significant Risk Lebel) 」とは、発がん性物質について重大なリスクのないレベルを、また「MADL (Maximum Acceptable Dose Lebel)」は、生殖毒性物質の最大許容用量レベルを表し、どちらの場合もμg / 日の単位で表示されています。 それらは「セーフハーバーレベル (Safe Harbor Lebel)」とも呼ばれており、ばく露がNSRL (発がん性)または MADL (生殖毒性) を超えない場合は、事業者は警告表示を行う必要がありません。

「NSRL」や「MADL」は ”The List” 収載物質のすべてに対して設定されているわけではなく、設定されていない物質も多く含まれています。

OEHHAは、”The List” 収載化学物質中のNSRL / MADL未設定物質に対し科学的知見や研究成果等を考慮し、規則セクション25705(b) の修正を行うことにより、NSRL / MADLの追加設定等を行っています。


本規則改正案の通知には以下の情報もあります。

5月22日の修正提案の通知に伴い5月22日から7月7日までの期間パプリックコメントの募集が行われています。 郵送/FAXあるいはメールで受付けたパプリックコメントは受付終了後にOEHHAのウェブサイトに掲載されます。

OEHHAはCOVID – 19 緊急時でスタッフの数も限られることから、郵送ではなくウェブサイトから電子的なコメント送信を勧めています。(https://oehha.ca.gov/comments )

本提案規則修正に関する公聴会の開催は要求に基づきスケジュールされます。 公聴会参加を要請するコメンターに対しては、コメント締切の15日前の6月22日までにメールにてその旨送信することを要請しています。 OEHHAは、公聴会の10日前にウェブサイトに公聴会の日時、場所を掲載するとしています。

以下、改正提案の通知の内容の概略を紹介します。

プロポジション65は、州でがんまたは生殖毒性を引起すことが知られている” The List”リスト収載化学物質について、事業者が最初にその旨を人々に明確で妥当な警告を与えることなく承知のうえでまた意図的にばく露させることを禁止しています。 また、法律は “ The List” 収載化学物質を水中やすべての飲料水源を通過もしくは近くを通る場所に事業者がそれを知りながら放出することを禁じています。

事業者が責任を持ってばく露が重大なリスクを呈さないよう生産することを証明できる場合および事業者による放出が、いかなる飲料水源に入り込んでも重大な放出量またはリリース量を引起さないよう適切に法令要求に従った放出である場合にのみ、発がん性物質に対する警告要求は除外されます。

NSRLばく露レベルの決定は、OEHHAが採択する規則(セクション25701 - 25721)にしたがいます。

セクション25701は、そのような決定をなすための代替方法を記述しています。セクション25703は、プロポジション65の目的である「重大なリスクを呈さない「(NSRL)」レベルを決定するためのプロセスを明らかにしています。


そして、セクション25705は、特定収載化学物質に対するレベルを確定しています。

ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸およびトリクロロ酢酸3物質に対し提案されているNSRLの根拠については本規則修正に対する「初期の理由声明書」6) 7) 8) に記載されています。

上記3物質に対するNSRLを開発提案するためOEHHAはIARC、NTPをはじめ多数の関連機関や研究所等の研究成果やレポートを参照し、依拠しています。

本開発提案に関連し、掲載されている見解、コメント等の概要を紹介します。

予想される提案規則の便益

本提案規則はNSRLを提供することによって、事業者は自らのNSRL算出費用を軽減し、訴訟費用を回避できる可能性があります。 更に、NSRLによって事業者に重大なばく露を生じないレベルに彼らの製品中のリスト収載化学物質量の低減を促進できます。 それによりジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸およびトリクロロ酢酸へのばく露が削減され、住民、作業者および環境へのがんを引起す化学物質へのばく露を低減することができます。

既存規則との不一致または両立性のないこと

OEHHAは、本提案規則は既存の州規則との不一致はなくまた両立もしないことを確認しています。 本提案規則は事業者、州または地方機関に対しいかなる強制要求もしていませんし、他の法律や規則へのコンプライアンスも要求していません。

経済要求分析の結果

本規則提案は、カリフォルニア州内で事業の創出または退出に影響を与えません。プロポジション65の適用事業者は10人以上を雇用する事業者です。

ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸およびトリクロロ酢酸は、” The List ” に収載されていますので、カリフォルニア州において上記化学物質を有する製品を製造、流通または販売する事業者は、もし彼らの製品または活動により”The List”収載化学物質が住民、作業者および環境にばく露するならば警告を提供しなければなりません。 事業者はまた飲料水源への当該化学物質の重大な量の放出を禁止されています。 本提案要求は追加的なコンプライアンス要求をしていませんが、ばく露に対し警告が要求されている、あるいは放出が禁止されているかどうかの決定のために事業者を援助すべく「セーフハーバーバリュー ( safe harbor value )」を提供しています。 NSRLは、事業者に法に従うよう遵法支援を提供し、事業者に対してはいかなる強制要求も課していません。 OEHHAは提案規則法によりカリフォルニア州内で現在実施中の事業所による新事業創出あるいは既存事業の退出または事業拡大等へのいかなる影響も与えていないことを確認しています。

ピーアレビュー

本通知および初期理由声明書は、レビューおよびコメントのためにOEHHA科学諮問評議会のがん特定委員会に提出中です。

小企業に対する効果

OEHHAは、提案規則は小企業に関していかなる強制要求も課さないことを決定しています。 何故なら、小企業がばく露に対してプロポジション65の警告要求や放出禁止に従う責任があるかどうかの決定を支援していますので、むしろ、提案NSRLはプロポジション65に従う小企業に遵法支援を提供していることになります。

最終の理由声明書

本規則法に対する最終の理由声明書 (the Final Statement of Reasons ) の写しは、それが利用可能となった時点でOEHHAへの電話による問合せあるいはウェブサイトから入手できます。

参考

因みに、我国においては上記3物質については労働安全衛生法、毒物劇物取締法あるいは化管法 (PRTR法) 等では次のようになっています。

労働安全衛生法第57条、同施行令第18条関係では、ジクロロ酢酸およびトリクロロ酢酸は混合物中に表示、通知のカットオフ値以上含有している場合、当該混合物に対し、ラベル表示およびSDS交付対象となっており、製品取扱工程においてリスクアセスメントの実施対象となっています。 また、この2物質は毒劇法において劇物に指定されています。

更に、化管法ではジクロロ酢酸は第2種指定化学物質、トリクロロ酢酸は第1種指定化学物質に指定されています。

ジブロモ酢酸は上記の国内法の適用対象となっていません。 ただし、3物質はいずれも健康有害性区分で発がん性区分2となっています。

更に、厚生労働省は「水道基準項目と基準値 (51項目)」、「水質管理目標設定項目目標値 (27項目)」および「要検討項目と目標値 (45項目)」等を公表しています。9)

本コラムで対象としています3物質に対して以下のように厳しい基準値および目標値が設定されています。

ジクロロ酸およびトリクロロ酢酸に対しては、何れの場合も水道基準項目として、基準値が0.03mg / L以下、ジブロモ酢酸は「要検討項目と目標値 (45項目)」の対象となっていますが、現在のところ目標値は未設定の状況です。

(瀧 山 森雄)

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