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韓国 産業安全衛生法におけるSDSに関する実施細則の改正の動き
2019年1月16日に公布されました韓国の 改正産業安全衛生法1)(以下;「産安法」)では、化学品の物質安全保健資料(SDS)にかかわる改正が行われています。 改正法の施行日は2021年1月16日です。 その中で、韓国へ化学品を輸出している企業の方に影響がある事項として、2020年1月24日付のコラムでご紹介しましたが、主な事項を再掲しますと、下記があります。
(ⅰ)SDSの雇用労働部長官への提出(法第110条)。
提出は、新たに設けられる「SDSシステム」を通して、電子的に提出することになります(産安法施行規則2)第157条)。 また、提出時に付与される番号をSDSに記載する必要があります(産安法施行規則第160条)。
本規定には下記の猶予期間が設けられています(産安法施行規則附則第9条)。
① 年間製造量が1,000トン以上:2022年1月16日
② 年間製造量が100トン以上:2023年1月16日
③ 年間製造量が10トン以上:2024年1月16日
④ 年間製造量が1トン以上:2025年1月16日
⑤ 年間製造量が1トン未満:2026年1月16日
(ⅱ)SDSの物質情報、含有率を企業秘密(CBI)にしたい場合は、雇用労働部長官へ申請し、承認を受けなければなりません。 承認の有効期間は、承認を受けた日から5年です。 延長の申請により、更に5年間のCBIにすることが出来ます。(法第112条)。
上記に関連する実施細則としては「化学物質の分類・表示および物質安全保健資料に関する基準」がありますが、その改正案が2020年6月8日に公表され、2020年6月29日迄意見募集が行われていました3)。
この改正案では、CBIに関連する条項が規定されています。今回のコラムでは、これらの概要をご紹介します。
1. SDSで物質情報をCBIにできない物質の範囲について
現行基準では、下記の物質に関する情報については、CBIにできないことになっています(第17条)。
ⅰ)製造禁止物質(産安法施行令3)第87条)
ⅱ)認可の対象となる物質(産安法施行令第88条)
ⅲ)管理対象となる有害物質
ⅳ)化学物質管理法での有毒物質
改正案では、ⅰ)~ⅲ)までは変わりませんが、ⅳ)以降の項目が下記のように改正されています。
ⅳ)作業環境測定対象有害因子(施行規則別表21)
ⅴ)特殊健康診断対象有害因子(施行規則別表22)
ⅵ)K-REACH施行規則4)第35条第2項ただし書きで定める物質
ⅳ)やⅴ)の「対象有害性因子」は物質と読み替えることができます。 具体的な対象は産安法施行規則別表21、22に掲載されています。日本国内の安衛法の有機則や特化則等の対象以外のものも含まれています。
ⅵ)のK-REACH施行規則第35条第2項のただし書きでは、「有害物質」が対象となります。現行法では、化学物質管理法での有毒物質(K-REACHでも同じですが)、改正案では有害物質となっています。 対象範囲が広がったようも思えますが、実務的には変更がないとも考えることが出来ると思います。
2. CBIとして申請するために必要な資料、判断基準等
改正案の第17条及び別表7に示されています。 内容は下記の通りです。
(1) CBIに該当することを証明する資料
① 非公開性について
申請するCBIが特定する関係者以外には知られていないこと、あるいは、他の法律で公開されていないこと。
② CBIの管理について
機密性を保護するための対策・措置。
③ CBIとする経済的な側面
申請する情報が競合他社に漏洩した場合の、他社の価値、申請者の経済的損失
(2) CBIを代替する場合の、化学物質の代替名称使用の適合性について
① 環境部告示環境部告示第2018-237号5)「資料保護申請書の作成方法及び保護資料の管理方法などに関する規定」の別表に従うこと(筆者注;K-REACHの新規物質登録では化学物質の総称名の命名法が規定されています)。
(3)混合物の含有組成を非開示にする方法
① 含有率が25%未満の成分については、±10%ポイントで記載。
② 含有率が25%以上の場合は、±20%ポイントで記載。
(筆者注;①の含有範囲の記載については、日本の安衛法では10%幅で記載することが許容されてことと同じと理解しています)。
(4)代替情報で作成するSDSの適合性の判断基準について
SDSの下記の項目について審査されます。
・第2項;危険・有害性について
・第3項;構成成分の名称、および、含有率
・第9項;物理化学的特性
・第11項;毒性に関する情報
・第12項;環境に及ぼす情報
・第15項;法的規制状況
3. その他の事項
(1) CBI申請が承認された場合は、代替情報によるSDSを提供することが出来ますが、提供するSDSには、承認番号、有効期間を記載することが必要です。
(2) CBIに非開示に申請の適用日は、上記「(ⅰ)SDSの雇用労働部長官への提出」に記載しました、製造輸入量の猶予期間が適用されます。
(3)日本からの輸出者が、産安法で設けられたSDSの提出やCBIの申請を行う場合、K-REACHの登録で新たに設けられました唯一の代理人(OR)で行えます。
参考情報
1)
http://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=206708&viewCls=lsRvsDocInfoR#
3)
https://www.moel.go.kr/info/lawinfo/lawmaking/view.do?bbs_seq=20200600379
(林 譲)