当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • tkk-lab

COVID-19による各国の化学物質法規制への影響

世界中の社会生活や経済に甚大な影響を及ぼしている新型コロナウィルス(COVID-19)ですが、本サイトで取り上げている化学物質法規制の運用においても、各国で影響が表れています。今回は、化学物質法規制に対するCOVID-19の影響として、「違反製品」と「期限延長」に関する動きを取り上げます。


1.違反製品の監視

いくつかの国々では消毒剤の需要増大に伴い、関連法規制に違反した製品や効果が認められない製品等の市場流通が拡大しており、当局が監視を注意喚起しています。


・EU

欧州化学品庁(ECHA)は6月5日に、消毒剤を規制する殺生物性製品規則(BPR)に基づく必要な承認を得ていない、または危険有害性の表示がない等の違反製品や、消毒剤と主張しているもののウィルスへの効果が期待できない製品の市場流通が拡大していることを発表(注1)し、注意を促しました。

このような状況を受けて、加盟国当局はオンライン販売を含む市場調査を継続して実施する意向を示されています。 また、欧州不正対策局(OLAF)も3月20日に、消毒剤などCOVID-19関連製品の違法取引に関する調査を開始することを発表(注2)しています。


・米国

米国環境保護庁(EPA)は6月11日に、インターネット販売大手のAmazonとeBayに対して、有害物質規制法(TSCA)や連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)に違反する製品の販売停止命令を行ったことを発表(注3)しました。

販売停止命令の対象となったのは、FIFRAに基づく登録の未実施や、ブランドの誤表示、TSCAに基づき禁止されている塗料剥離剤用途の塩化メチレン等の違反製品であり、この中には、COVID-19に対する有効性について虚偽または誤解を招くような表示がされていた製品も含まれています。

EPAによると、4月に両社を含むオンライン販売業者と、違反製品について協議していましたが、その後も改善が見られなかったことから、販売停止命令を講じたと述べています。


・韓国

韓国環境部は6月11日に、生活化学製品および殺生物剤安全管理法(K-BPR)の下位規定である「安全確認対象生活化学製品の指定および安全・表示基準」の対象となっている殺菌・消毒剤10製品について、安全・表示義務違反であり、販売停止等の措置を講じたことを発表(注4)しました。

「安全確認対象生活化学製品の指定および安全・表示基準」では、殺菌・消毒剤等の安全確認対象生活化学品に対して、販売前に製品種別に設定された安全基準について試験機関による適合確認を受けた上で、当局に申告しなければなりません。 しかしながら、違反が指摘された10製品はいずれも安全基準の適合確認が未実施である等安全基準に違反しており、またこのうちの一部製品は所定の表示基準にも違反していました。

韓国環境部は、COVID-19の流行によって殺菌・消毒剤の使用が多くなる中、「無毒」など禁止された表現を用いて宣伝するなどの事例が増加していると指摘し、消費者に注意喚起するとともに、市場監視を強化しています。


2.各種期限の延長

いくつかの国々では、COVID-19の影響を受け、当初予定していた報告期限や施行時期を延期する措置を講じています。


・EU

ECHAは2020年4月から、REACH規則に基づいて企業から提出された登録一式文書について各種チェックを行っていますが、そのうちの完全性チェックの対象を化学物質安全性報告書(CSR)まで拡大する予定でした。 しかしながら、COVID-19の流行による企業影響を考慮し、2020年10月まで延期しました(注5)。


・ユーラシア経済同盟(EAEU)

ロシアなどのユーラシア経済同盟(EAEU)は、「化学品の安全に関するユーラシア経済連合技術規則(第41/2017号)(EEU TR41)」の2021年6月の施行に向けた準備が進められています。 ロシアでは既存化学物質インベントリーの整備が進められており、5月1日を期限として企業からの追加申請を受け付けていました。しかしながら、COVID-19の拡大による経済影響を考慮し、受付期限を8月1日まで延期しています (注6)。 また6月には約54,000物質が収載された既存化学物質インベントリーの暫定版が公表(注7)されました。


・オーストラリア

オーストラリアでは、連邦の労働安全衛生法および同規則によって、化学品の分類やラベル・SDSについて、国連GHS第3版が採用されていますが、2020年1月に国連GHS第7版を採用することが決定しました。 これにより2年間の移行期間を設けて2020年7月1日から導入される予定でしたが、COVID-19の企業への影響を踏まえ、導入開始日時を2021年1月1日に延期することを発表(注8)しました。


・日本

化審法では、1kg以上の第2種特定化学物質を取り扱った場合の製造輸入実績数量の届出や、1トン以上の一般化学物質等(一般化学物質、優先評価化学物質、監視化学物質)を取り扱った場合の製造数量等の届出などの年次届出が求められています。

これらの届出は通常書面での提出は6月30日が期限となっていますが、COVID-19の影響を踏まえ、7月31日まで期限を延長することが発表(注9)(注10)されました。


以上は、一部の例ではありますが、世界の社会経済に大きな影響を与えているCOVID-19は、化学物質法規制の運用や執行においても影響が出ていることがわかります。


なお、COVID-19が影響しているわけではないのですが、米国のTSCAについても規則改正に伴い報告期限の延長が図られています。 TSCAの下位規則である学物質データ報告(CDR)規則では、一定量以上の化学物質を取り扱う企業に対して1回/4年の実績報告を求めています。 このCDR規則は4月に改正(注11)され、報告免除対象となっている小規模事業者の定義や、閉鎖系システム内で使用・リサイクルされる等の条件を満たす副産物に対する報告免除、委託元・委託先の両社による報告手続きの改善等、既存のCDR規則による企業の報告負担の軽減が図られました。 この改正を踏まえて2020年の実績報告が求められることになりますが、通常6月1日~9月30日までの報告期間が、改正による企業への影響を考慮して11月30日まで期限が延長(注12)されました。


(井上 晋一)


注1:ECHA ニュースリリース

https://echa.europa.eu/-/eu-member-states-report-illegal-and-ineffective-disinfectants

注2:OLAF ニュースリリース

https://ec.europa.eu/anti-fraud/media-corner/news/20-03-2020/olaf-launches-enquiry-fake-covid-19-related-products_en

注3:米EPA ニュースリリース

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-orders-amazon-and-ebay-stop-sale-certain-pesticide-products-0

注4:韓国環境部 ニュースリリース

http://me.go.kr/home/web/board/read.do?pagerOffset=0&maxPageItems=10&maxIndexPages=10&searchKey=&searchValue=&menuId=286&orgCd=&boardId=1377540&boardMasterId=1&boardCategoryId=&decorator=

注5:ECHA ニュースリリース

https://echa.europa.eu/-/completeness-check-of-chemical-safety-reports-postponed-until-october-2020

注6:ロシアCISセンター ニュースリリース

https://ciscenter.org/news/prodlenie_inventarizatsii_iz_za_covid_19/

注7:ロシア 既存化学物質インベントリー(暫定版)

https://gisp.gov.ru/cheminv/pub/app/search/

注8:オーストラリア労働安全局 ニュースリリース

https://www.safeworkaustralia.gov.au/media-centre/news/update-transition-ghs-revision-7

注9:経産省 第二種特定化学物質の届出

https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/todoke/class2specified.html

注10:経産省 一般化学物質、優先評価化学物質及び監視化学物質の製造数量等の届出

https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/general-chemical.html

注11:米国官報 CDR改正

https://www.federalregister.gov/documents/2020/04/09/2020-06076/tsca-chemical-data-reporting-revisions-under-tsca-section-8a

注12:米国官報 2020年の報告期限の延長

https://www.federalregister.gov/documents/2020/04/09/2020-06074/chemical-data-reporting-extension-of-the-2020-submission-period

0回の閲覧

© 2011-2019  一般社団法人東京環境経営研究所

  • Facebook - White Circle
  • YouTube - White Circle
  • アマゾン - ホワイト丸