当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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マイクロプラスチック規制の動向(REACH規則の制限案を中心に)

日本では今年7月からコンビニ等小売業でポリ袋の有料化が始まり、マイバッグを持参する消費者が増えてプラスチック規制に対する関心が高まっています。 ちなみにこのポリ袋有料化の根拠は、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)」の施行省令である「平成十八年財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省令第一号」で定められています。1)

EUのプラスチック規制の動向全般に関しては、本コラム2019年6月「REACHにまつわる話~プラスチック規制動向について~」2)にて紹介をしていますので、今回はマイクロプラスチック規制の動向に絞って解説したいと思います。

最初にマイクロプラスチックの定義ですが、直径が1mm以下、5mm以下、5~10mm以下など諸説有ります。 現在検討が進められているREACH規則の制限案では、固体ポリマー粒子で、0.1μm≦X≦5mmと定義されていますが、寸法の下限に関しては今後変更の可能性もあります。

マイクロプラスチックの分類ですが、その成り立ちから

(i) 一次的マイクロプラスチック(primary microplastics)

製造段階から人工的に微細片または微粒子として作られたもの

洗顔剤や歯磨き粉等に含まれるスクラブ材、化粧品等に含まれるマイクロプラスチックビーズ、紙オムツなどの高吸水ポリマービーズ、工業用研磨材、塗料添加物、医療用検査剤、土壌保水剤、農業用肥料、プラスチック製品材料(再生材料)としてのペレット材など

(ii) 二次的マイクロプラスチック(secondary microplastics)

大きなサイズで製造されたものが、自然環境下で破砕または細分化されたもの

ポリ袋、ペットボトル、包装用材料、建材など、いわゆるプラスチック製品

に分類されます。

REACH規則制限案の対象は(i) 一次的マイクロプラスチックです。そのなかでも意図的に添加されたマイクロプラスチックの使用を制限する提案であり、(ii) 二次的マイクロプラスチックはREACH規制対象外で、「特定プラスチック製品の環境影響削減指令」(DIRECTIVE (EU) 2019/904)3)で規制されます。

EU加盟諸国では、既にマイクロプラスチックの使用制限や禁止を行っている国があります。例えば、オランダは2016年末から、フランスでは2018年からマイクロプラスチックを含む化粧品等の販売を禁止しています。 デンマーク、アイルランド、イタリア、スエーデンでも同様の販売禁止を実施しています。現在はEU外であるイギリスも2018年1月から製造禁止、同年6月からは販売禁止となっています。

今回のREACH規則による制限案はこのような各国の規制をEU域内で統一的に行うことを目的として、欧州委員会からの依嘱を受けてECHAが2018年1月から検討を始めたものです。 その後2018年5月に関係者ワークショップが開催され規制に対する主要課題を収集し、2019年1月に原案4)が提出されました。原案は同年3月から9月まで意見募集を行いトータル477件のコメントを得ています。(詳細はECHAのウェブサイトで参照できます。)5)

原案に対して、2020年6月10日にECHAリスク評価委員会(RAC:Committee for Risk Assessment)のコメント6)が出されました。

内容は、「ECHAの原案はマイクロプラスチックの環境への排出を抑制するのに適切である。」というものですが、以下の意見が付け加えられています。

・生分解性ポリマーについて:ECHAは制限除外の対象となる生分解性ポリマーの判定試験方法と判定基準を設定しているが、RACはさらに多様な環境での証拠(例えば土壌、海中、淡水中など)を確認する必要があると考える。

・人工芝ピッチの隙間充填材としてのマイクロプラスチック使用について:リスク管理対策の有効性が完全には担保できないので、6年間の猶予期間後には全面禁止にすべきである。

・マイクロプラスチックの定義について:ECHAは製品中の100nm以下のマイクロプラスチックを分析する手段がまだ開発中であることから下限を100nmとしているが、たとえばサプライチェーンのなかで原材料を確認することにより制限は可能であるので下限を設ける必要はないとRACは考える。

これに対してECHA社会経済分析委員会(SEAC:Committee for Socio-economic Analysis)は、この堤案をコストと社会に対する恩恵の観点から評価して同意をしています。

同意理由として、金銭的な恩恵の評価は難しいがコスト評価は妥当であり、マイクロプラスチック汚染が不可逆的なものであるので早急に制限をすることに社会的な意義があるからとしています。

マイクロプラスチックの定義の下限値100nmについては、現実的な対応として分析手段が確立するまでは存続させることを提言しています。

人工芝の充填材に関しては、コスト的にはリスク管理対策の方が禁止より優れているが、長期的な環境負荷に関しては禁止が有効であるとして、委員会としてはどちらか一方を支持することはしないとしています。

これを受けてSEACは2020年6月11日にRACと連名で意見案7)を作成し、2020年7月1日から9月1日まで意見募集を行っています。

附属書XVIIに新規エントリーする意見案の概要(抜粋)を以下に説明します。(著者の意訳につき原典を確認ください。)

1.マイクロプラスチックを単体または混合物として≧0.01 w/w%含有する物質は、本法発効日(EiF:Entry into Force)より上市を禁止する。

2.定義:(For the purposes of the entry)

a マイクロプラスチックの定義:添加剤または他の物質を含む固体ポリマー粒子で、次の粒子を≧1 w/w%含む物質

(i) すべての寸法が1nm~5mmの範囲

(ii) 繊維状物質では長さが3nm~15mmでアスペクト比が3以上

b マイクロビーズの定義:マイクロプラスチックの混合物で研磨剤に使われるもの

d 固体ポリマー粒子:

(i) 表面に固体ポリマーがコーティングされた粒子 または

(ii) 固体ポリマーが≧1 w/w%含まれる粒子

3.上記2aおよび2bに含まれない物質

a 自然界にあるポリマーで科学的な加工がされていない物質

b (生)分解性ポリマーで附属書に定義された物質

c >2g/Lの溶解性を持つポリマーで附属書に定義された物質

4.上市禁止の除外用途:

a 産業分野で使われるマイクロプラスチックおよびその混合物

b EU Directives 2001/83/EC および 2001/82/ECに定義された医学および獣医学用途

c EU Regulation (EC) No 2019/1009に定義された肥料としての用途

d EU Regulation (EC) No. 1333/2008に定義された食品添加物

e 体外検査装置

f 下水の汚泥(他の指令で定義)および堆肥

g 食品および飼料

h Option A:競技場の粒子状人工芝充填材で、年間7g/㎡以上流出しないように管理されたもの

5.上市禁止が適用されない使途

aマイクロプラスチックおよび混合物で、技術的に処分に至るまで環境に放出されない構造のもの

b 物質および混合物で、その物理的性質が永久的に処分に至るまで2 (a)の定義に戻らないもの

c 物質および混合物で、マイクロプラスチックが永久的に処分に至るまで固体に包含されたもの

6.上市禁止の発効日:

a 化粧品および他のマイクロビーズを含む物質および混合物:本法発効日(EiF)

b 医療機器:EiF+6年後

c a以外の洗顔化粧品:EiF+4年後

d 洗浄剤/化粧品および他の混合物中のカプセル封入された香料:EiF+【5年/8年後】

e aまたはdに含まれない洗浄剤、ワックス、研磨剤、芳香剤:EiF+5年後

f Regulation (EC) No 2019/1009に含まれず生分解性でない肥料:EiF+5年後

g Regulation (EC) No 1107/2009に記載された植物保護製品とRegulation (EU) 528/2012に記載された殺虫剤製品:EiF+8年後

h その他の農園芸用製品(種子処理剤を含む):EiF+5年後

i Regulation (EC) No 1223/2009に記載されたリーブオン化粧品:EiF+6年後

j Option A:競技場の粒子状人工芝充填材で4(h)を満足する製品:EiF+3年後

Option B:競技場の粒子状人工芝充填材で4(h)を満足しない製品:EiF+6年後

7.EiFから24カ月後には、上記4(a) 4(b) 4(d) 4(e)および5に記載された上市禁止除外製品の供給者は、製品のラベル、SDS、使用説明書(IFU:Instructions for Use)、添付文書に、他の法律的な制限事項と共に、マイクロプラスチックを製品のライフサイクルを通じて環境に流出させないための取扱説明を記載する。

取扱説明ははっきりと見え、読みやすく、消えないものとする。

取扱説明は絵表示(ピクトグラム)でもよい。

説明文は使用される加盟各国の公用語で記述する。

4(a)の産業分野の用途では上記項目に加えて以下を記述する。

(i) この物質または混合物はこの規則の条件が適用される。

(ii) 物質または混合物に含まれるマイクロプラスチックの量(または濃度)

(iii) 物質または混合物に含まれるポリマーに関して、川下ユーザーや次の8項に掲げる供給者に必要な十分な情報

8.EiFから36カ月後には、

4(a)の産業分野の川下ユーザーは、REACH規則Article 111の書式を用いて毎年1月31日までにECHAに以下の項目を申告することが必要です。

a) 前年度のマイクロプラスチックの用途

b) 用途ごとに、使用したポリマーの属性に関する一般的な情報

c) 用途ごとに、前年度に環境に排出したマイクロプラスチックの排出量の見積り

供給者は、4(b) 4(d) 4(e)および5に記載された上市禁止除外製品を産業向けまたは最終消費者向けに最初に上市したときには、REACH規則Article 111の書式を用いて毎年1月31日までにECHAに以下の項目を申告する。

a) 前年度のマイクロプラスチックの目的とする最終用途

b) 目的とする最終用途ごとに、使用したポリマーの属性に関する一般的な情報

c) 目的とする最終用途ごとに、前年度に環境に排出したマイクロプラスチックの排出量の見積り

ECHAは、毎年6月30日までに受け取った情報を要約したレポートを発行します。

意見募集終了後に、両方の委員会の統合意見は2020年末までに準備ができると予想されます。その後REACH規則附属書XVIIの改正に向けて、欧州委員会でEU加盟国によって行われ、理事会と欧州議会によって精査承認される予定です。

(杉浦 順)

引用

1) https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail? lawId= 418M60000740001

2) https://www.tkk-lab.jp/post/reach20190628

3) https://eur-lex.europa.eu/legal- content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32019L0904 &from=EN

4) https://echa.europa.eu/restrictions-under-consideration/-/substance-rev/22921/term

5) https://echa.europa.eu/search?p_p_id=echasearch_WAR_echaportlet&p_p_lifecycle=0&p_p_state=normal&p_p_mode=view&p_p_col_id=column-1&p_p_col_count=1&_echasearch_WAR_echaportlet_doSearch=true&_echasearch_WAR_echaportlet_themeSearch=true

6) https://echa.europa.eu/-/rac-backs-restricting-intentional-uses-of-microplastics

7) https://echa.europa.eu/documents/10162/28a04d6e-3c6c-3416-44ef-1b40240d8534

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