当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Safety Gateの2019年通知概要

2020年09月11日更新

EUでは市場から危険な製品を排除することを目的に、EU委員会を通じた参加国内での迅速な情報交換を行うための「RAPEX」が運用されており、RAPEXの外部公表用ウェブサイトの名称が「Safety Gate」1)にです。


Safety Gateの2019年の年次報告書2)を公表したことを欧州委員会が2020年7月に発表3)しましたので、2019年の通知状況についてご紹介します。


1. Safety Gateの2019年通知概要

2019年の年次報告書によると、2019年の通知件数は2,243件であり、2018年の2,257件から若干減少した結果となりました。

この通知の内訳を違反製品の「製品カテゴリー」、違反原因となった「リスク」、違反製品の「原産国」別に上位5位を見てみます。


1)製品カテゴリー

製品カテゴリー別に見ると、玩具が最も多く通知されており、次いで自動車の順となっています。この結果は2018年と同様でした。

第1位:玩具(29%)

第2位:自動車(23%)

第3位:衣類・繊維製品(8%)

第4位:電気製品(8%)

第5位:化粧品(6%)


2)リスク

リスク別に見ると、2018年は「化学物質」が最も多くなっていましたが、2019年は「けが」に起因する違反製品が最も多く、次いで「化学物質」の順となりました。 なお、RoHS指令違反等が含まれる「環境」は6%を占め、2018年の2%から大きく増加しています。

第1位:けが(27%)

第2位:化学物質(23%)

第3位:絞扼(13%)

第4位:感電(10%)

第5位:火災(7%)


3)原産国

原産国別に見ると、例年同様2018年と同様に「中国・香港」が半数以上を占め、次いで「EU/EEA」の順となっています。 ちなみに日本はトルコに次ぐ6番目(2%)に位置する結果となっています。

第1位:中国・香港(52%)

第2位:EU/EEA(28%)

第3位:不明(6%)

第4位:米国(4%)

第5位:トルコ(2%)


なお、年次報告では触れられていませんが、ECのプレスリリースでは、COVID-19の感染拡大以降、マスクや防護服、消毒剤等で多くの通知がSafety Gateで公開されたことが示されています。


また、ECはSafety Gateの2019年年次報告書の公表とあわせて、「製品安全に関する調和化した活動(CASP)」によって、玩具や電池、充電器、自転車用チャイルドシート、個人移動器具等の652製品を対象とした2019年の調査結果もあわせて公表しました。 結果として、調査対象製品の38%が製品安全に関するEU法に違反しており、11%が消費者への深刻なリスクを及ぼす可能性があったことが示されています。 なお、CASPでは2020年の活動も開始されており、家庭用屋外遊具やケーブル類、宝飾品等が調査対象として挙げられています。


2. 化学物質および環境リスクに関する通知

Safety Gateの年次報告書では詳細は示されていませんが、REACH規則やRoHS指令等、含有化学物質に関連する通知を見てみます。

まず、化学物質リスクに起因する2019年の通知を見ると、例年どおり、REACH規則附属書XVIIによる制限違反が大半を占め、その他に玩具指令や化粧品規則、CLP規則の違反などが挙げられています。

REACH規則附属書XVIIに収載された物質のうち、最も多くの件数が挙げられているのは「No.51 玩具および育児用品中のフタル酸エステル類」であり、その他には次のような制限項目に対する違反事例が挙げられていました。


・ No.23 プラスチック材料や宝飾品中のカドミウムおよびその化合物

・ No.27 ファスナーや宝飾品等の直接かつ長時間皮膚に接触する部品中のニッケルおよびその化合物

・ No.28~20:一般消費者向け混合物中の発がん性・生殖毒性・変異原性(CMR)の区分1Aおよび1Bに該当する物質

・ No.32 一般消費者向け混合物中のクロロホルム

・ No.43 直接かつ長時間皮膚や口腔に接触する繊維製品や皮革製品中のアゾ色素およびアゾ染料

・ No.47 皮革製品中の六価クロム

・ No.50 直接皮膚や口腔に長期または短期反復接触するゴムまたはプラスチック部品中の多環芳香族炭化水素(PAH)

・ No.63 宝飾品や幼児が口に含む可能性がある製品中の鉛およびその化合物


一方、含有化学物質に関する法規制は、使用時における消費者への健康影響以外にも環境を経由した人への影響を防止することを目的にしているものもあり、これらの法規制違反については、「環境」リスクに分類されています。 環境リスクに起因する131件の通知を見ると、POPs規則やRoHS指令違反が大半を占め、次のような違反事例が挙げられていました。


・ POPs規則が制限する短鎖塩化パラフィン(SCCP)を含有する各種製品

・ RoHS指令が制限する鉛、カドミウムを含有する照明、玩具、ヘッドセット、充電器ケーブル等

・ 電池指令が制限するカドミウムを含有した自転車のバックライト中の電池


中でも、RoHS指令の違反事例が約90件と、例年の10件程度に比べると大幅に増加する結果となっています。


また、化学物質に関するRAPEXの通知内容に関しては、欧州化学工業連盟(Cefic)が2月に分析結果を公表4)しています。 この分析結果では、REACH規則の制限違反として通知された消費者向け製品の90%以上がEU/EEA域外からの輸入品であることが示されており、輸入品に対する執行強化が重要であることが指摘されています。


毎年公表されるSafety Gateの年次報告ですが、化学物質に起因する通知は毎年550~650件程度と全件数から見ても多くの割合を占めています。 2019年3月に公表されたRAPEXガイドライン((EU) 2019/417)5)では、通常は加盟国が製品の詳細なリスク評価を実施することになっています。 しかしながら、化学物質に起因するリスクに関しては、REACH規則等の法規制が定める閾値を超過して規制対象の化学物質が含有している場合には、詳細なリスク評価を行わずに通知することができる旨が示されています。 また多くの製品について分析等の市場調査を実施していることを見ても、当局が市場監視において、化学物質規制の順守を重要視していることがうかがえます


3. 最後に

今回ご紹介したSafety Gateで多く報告されているREACH規則の制限やPOPs規則をはじめとする含有制限については、2022年に実施される予定の第10次REACH規則執行プロジェクト(REF-10)で、消費者向けの混合物や成形品を対象とした大規模な市場調査を実施することが7月に公表6)されました。


含有化学物質規制については、その執行監視が重要であることが指摘されており、今後ますます、消費者向け製品やEU/EEA域外からの輸入品といった当局が課題認識を持っている製品を中心に執行監視が強化されていくものと想定されます。


(井上 晋一)


1)Safety Gate

https://ec.europa.eu/consumers/consumers_safety/safety_products/rapex/alerts/repository/content/pages/rapex/index_en.htm

2)Safety Gate 2019年年次報告書

https://ec.europa.eu/consumers/consumers_safety/safety_products/rapex/alerts/repository/content/pages/rapex/reports/docs/RAPEX.2019.report.EN.pdf

3)欧州委員会のプレスリリース

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/IP_20_1270

4)Ceficニュースリリース

https://cefic.org/media-corner/newsroom/more-than-90-of-all-non-compliant-chemicals-in-consumer-products-come-from-outside-of-the-eu/

5)RAPEXガイドライン((EU) 2019/417)

https://eur-lex.europa.eu/eli/dec/2019/417/oj

6)ECHAニュースリリース

https://echa.europa.eu/-/eu-inspectors-to-check-consumer-products-for-hazardous-substances




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